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【投機の流儀 セレクション】「コツンと来た感じ」は全くない

月曜日に大幅安を演じたが出来高は2兆円未満、火曜日に戻ったがその半値戻り未満、しかも売買代金は1.8兆円だった。大量の売買代金を伴って大幅な下げがあった場合にコツンと来た感じが生じて反発も出来高が多く、反発幅も大きいものだ。しかし、今回は超目先的にも市場用語で言うところの「コツンと来た感じ」は全くなかった。
パウエルFRB議長のジャクソンホール会議での23日講演を金融市場は好感したが、直後にトランプが中国の報復関税に対抗措置を打ち出すとツイッターで表明するとNYダウは一時700ドル安まで急落した。
これで一部にあった「NYダウの三尊天井は回避し得た」という見方(植草一秀・リポート7月25日号)は完全に打ち消され、むしろ、本稿はかねがね気にしていた上値抵抗線の形成を確認した形になってしまった。ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演は「世界景気にさらなる減速の証拠がある。故に盛況の持続へて適切に行動する」と言った。これは追加緩和に前向きな姿勢ととられた。俗に言う「ハト派」からは0.5%からの大幅利下げ論も浮上する。一方10年ぶりの利下げに警戒する「タカ派」もFRB内部にも残っている。しかし、トランプの圧力は「1.0%利下げ」である。FRBは早期利下げへ傾き始めている。本来は「利下げ=景気悪化の対策=株は先行して売り」が普通の姿であるが、現今の市場は「利下げ=株買い」となる。裏の裏は表になってしてまっているわけだ。
「利下げ=カネ余り=株買い」となっているわけである。
FOMC内においては緩和慎重論と利下げ追加緩和論があるが、前者はトランプの圧力で瞬時に消されてしまう。
アメリカの市場で史上初めての露骨な利下げ介入をする大統領である。そのホワイトハウス圧力は強まる一方だ。23日にパウエル議長が講演直後に、トランプは不満を表明し「FRB議長と中国の国家主席とどちらが大きな敵なのか」とパウエル議長を露骨に非難した。今のNY市場はこういう状態で成り立っている。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況
(1)先週の市況と中国が対米報復措置をしないという話
(2)「コツンと来た感じ」は全くない
(3)一応、気にしておくのは60ヶ月移動平均
(4)日本株は配当利回りから見て歴史的な高利回り水準
(5)9月は相場が荒れやすいというアノマリー
(6)歴史上最大規模のIPOサウジアラムコの東京上場の話
(7)プット(将来売る権利)が活況
(8)当面の市況と米トランプ政権によるドル安促進(円高促進)の動き
(9)円は昨年3月以来の高値、人民元は11年半ぶりの安値
(10)日銀は今後の舵取りが正念場を迎え、財政出動の出番
(11)10月は消費増税とBRXIT混乱
第2部 今後のトランプ
(1)来年トランプは再選されるか
(2)トランプ発言が市場を揺るがす
(3)抜刀してしまったトランプは納刀できない窮地に陥っている
第3部 中長期の問題
(1)G7は創設後44年目で初めて協調が完全に崩れた 
(2)過熱する日韓対立と同盟国たる米国の役割
(3)「長短金利逆転は必ずしも将来の景気減速を示唆しない」
(4)ドイツに景気後退の予兆
(5)トルコリラが弱含み
(6)中長期の見方:銀行株下落は中長期的に大勢下方指向の前兆
(7)ふたたび「逆イールド現象」
(8)持ち合い解消の売りは出るか出ないか
(9)FRB利下げに焦点が集まっていた市場に、実は横たわっている二つの大問題
(10)「異常」が「常態化」――異常気象の経済的損失
(11)日韓の関係悪化は日本経済に直接影響し始めた
第4部 読者との交信
(1)長野県Kさんとの交信(Kさんは米英で長期に活躍され、投資の道でもそれなりに成功してこられた方であったが・・)
(2)大学時代のゼミの仲間の読者Hさんとの交信(8月25日
(3)筆者の友人の国際ジャーナリスト嶌信彦氏(嶌信彦通信8月 26日 vol.163)
第5部 蛇足
偶然と運について少しだけ考える

【来週以降の予定項目】
〇何らかの理由で資金循環が止まったらどうなるか
〇「平成の期間は敗北の時代だった」か?日米中の動向も併せて考える
 ①日本の経済力の相対的弱体化。
 ②平成時代は政治不作為時代が長かった。30年間で18人の首相交代
 ③中国を国際社会の仲間に入れ、アメリカを追尾する国にのし上がらせたのは平成初期の日本の仕業によるところが大きい。
〇「かんぽの闇、金融商品の罠」
〇説明責任という厄介なもの――個人投資家にはこれがないからシタカで居られる

【お知らせ】
「投機の流儀 セレクション」のアーカイブは、電子書籍の紹介サイト「デンショバ」にてご覧になれます。
デンショバ
http://denshoba.com/writer/ya/yamazakikazukuni/touki/

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。

ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
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