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【投機の流儀 セレクション】日本株のクラッシュはあるか?

ないと思う。2年4ヶ月保ち合った大保合の中心点(概ね27500円)から一挙に6000円上がったのだから、それが3000円下がっても、黄金分割比で62%下がっても、たいした問題ではない。よく「半値押しは全値押し」などと言われるが、これも迷信のようなものだ。 
個々の銘柄で見ても、日経平均で試してみても、過去を見れば判る。「半値押しは全値押し」は当てにならない。

最も端的なのは1965年4月に1020円から始まって、2.5倍になった「いざなぎ景気」の前半の相場の時にも66年10月のポンドショックがあって、半値どころか3分の2も下がった。旧経済企画庁はその時も弱気を云わなかった。
市場も「半値押しは全値押し」とは言わなかった。とにかく、この30年間の低迷で、日本人は弱き意識を注入されてデフレマインドになってしまった。これが、ようやく「メガトレンドの変化」として変わりつつあるように見える。ここのところをしっかり見極めないと、大勢を見誤るであろう。

1929年の大暴落を事前に予測して売り抜け、その後の長期上昇で大儲けした人で歴史上、著名な人が3人いる。一人はジョセフ・ケネディ(★註1)。もう一人は前述のロジャー・バブソン(★註2)。最後の一人はジェラルド・ローブ(★註3)であった。

(★註1)ジョセフ・ケネディ:J.F.ケネディ大統領の父親で、アイルランドの移民三世で相当なワルで知られていた大成金である。彼はウォール街の靴磨きが「旦那、儲かる株を教えて下さい」と言ったので、ここまで熱狂的になったならば株は売りだと言って売り始めたという話しがあるが、これは伝説か作り話しであろう。ルーズベルト大統領は、このワルを証券取引監視委員会(今のSEC)の初代会長にした。
皆は驚いたが、大統領はこういった。「泥棒のベテランを主任刑事にするのさ」と。または「蛇(じゃ)の道は蛇だよ」と訳されている本もある。彼は禁酒法下の酒密造密売と株式不法取引で大成金になった。その彼はカネよりも「法律の番人」「正義の使途」としての名誉を選んで、名SEC会長になった。彼の言葉として、相場格言集に残っているのはこうだ。「株で儲けようと思ったら、法律で禁止されそうなことを法律が成立する前にやってのけることだ」

(★註2)ロジャー・バブソン:罫線家とか占い師とか言われているが、マイナーながらも立派な経済学者であった。彼はウォール街が湧いている最中に「株価は10分の1になる、エリートビジネスマンも失業する、アメリカは深い不況に陥る」などと主張して、みんなの笑い者になった。
彼の講演会は一種の漫談と見なされた。ところが、彼の言った通りになった。彼はどのようにして予測したかというと、彼の見せる罫線には五角形や三角形がたくさん並んでいて意味不明のチャートであったが、もっぱらチャートから見たと言った。おそらく黄金分割比であろう。五角形の確度は、正確に黄金分割比で蜘蛛の巣と同じである。おそらく、単純なものから連想し切ったに違いない。

(★註3)ジェラルド・ローブ:これは著名なファンドマネージャーである。「ウォール街の魔術師」という本が「いざなぎ景気」の最中、1969年に出た。ラルフ・G・マーチン著、山下竹二訳、日本経済新聞社。広く読まれた。

【 今週号の目次 】
第1部;当面の市況
(1) 市況コメント
(2)「二日シンポは荒れた」
(3)8月25日以来、1ヶ月ぶりの値幅
(4)「黒三兵(くろさんぺい)」が出ると、次は禍々しいことが起こると縁起を担ぐようなことを述べたが・・・
(5)日銀は金利上昇を抑え込む姿勢を強めているが、市場ではそれに対する動揺の兆しも見える
(6)中間反騰で上がる銘柄は、以前の銘柄と同じだ。
(7)海外勢が2兆円の売り越し
(8)9月はこのような月だった。
(9)「下値の目途はいくらか?」ということが話題
(10)企業の景況感が改善、賃上げに期待
(11)「2%インフレ目標」
(12)設備投資が堅調の気配 
(13)個人所得、東北地方に目立つバブル越えが3割
(14)7月〜9月、世界の株と債券が一年ぶりに同時下落
(15)「最初の利下げの時期はFRBが考えるよりも、もっと早く来るかもしれないという見方がウォール街にはある」
(16)米では年内にあと1回の利上げが予想されているが、これは利上げが最終局面に入っているということで間違いない。

第2部;中長期の見方
(1)無気力に見えるマニュアル的経済政策5項目の並列
(2)日本株のクラッシュはあるか?
(3)植田総裁の主目的は、長期間のデフレとの戦いの総仕上げ
(4)米のソフトランディングを阻む要因はいくつかあるが・・・
(5)「米金利が臨界点に達して資産価格が急落したら、米国経済はソフトランディングどころか、再度バランスシート不況に陥りかねない」
(6)バランスシート不況の下で、構造改革では景気は回復しない。
(7)企業価値の一段の向上につながるTOBが14年ぶりの多さになった。
(8)アメリカは建国以来の「特別国主義」を堅持できるのか?
(9)植田総裁、マイナス金利政策の解除に言及
(10)日銀は、長期金利への関与を完全にはやめないはずだ。
(11)トルコ格付け見通し「安定的」に引き上げ─政策転換で、S&Pはトルコの格付け見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げた。

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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