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【投機の流儀 セレクション】「This is Japan銘柄」の代表格たる日本製鉄(5401)の稼ぐ力は世界で突出

日本製鉄の稼ぐ力はアメリカの象徴たるUSスチールの3倍になり、欧州・韓国製鉄大手の2倍になる。24年4月〜6月期の粗鋼生産1トン当たりの利益を世界の鉄鋼大手と比べると、そういうことが言える。

第二次世界大戦が始まる前、山本五十六が反戦論として盛んに言っていた「八幡製鉄の煙突の数とピッツバーグの煙突の数を数えてみろ。かの国は何十倍もある」と。

日本製鉄がこの「アメリカの象徴」の3倍の稼ぐ力を持つようになった原因は、徹底した構造改革のおかげであろう。この構造改革の先行は世界的な今の鉄鋼不況の中で、他社が苦戦する中でも底堅さを見せている。構造改革は、鉄鋼の需要が減少してから後追いになって行われるのが普通だったが、日鉄の改革は先行的先だったと証券アナリストは評価する。

粗鋼生産1トン当たりの利益は世界の高炉大手の中ではダントツだ。20年3月期に過去最大の赤字を計上した日鉄は以降、構造改革にメスを入れた。高炉閉鎖で固定費を圧縮して、トヨタ自動車への大口顧客への販売価格を引き上げた。損益分岐点は24年3月期までの4年間で4割も下がり、少ない鋼材支出でも利益が出る体質になった。

日鉄の稼ぐ力が際立つが、時価総額で言えば欧米の鉄鋼大手を下回り、これからは人口が増えるインド地盤の市場での成長期待が高い。日鉄は今回、中国の大手宝山鋼鉄との合弁事業から撤退すると発表している。そして、米・インド・東南アジアに経営資源を集中し、三局それぞれで一貫生産に取り組む。

また、日本製鉄は欧州鉄鋼大手アルセロール・ミッタル、アラバマ州の鉄鋼会社との保有持ち分を1ドルで譲渡すると発表した。このアラバマ州の鉄鋼大手カルバート社は、日鉄が買収を目指すUSスチールとの競合に当たる。したがって、USスチールの買収に向けての米国の競争法上の懸念を払拭するための譲渡を決めた。そして、11月にミッタルと譲渡契約を結んだ。万が一、USスチールとの譲渡契約が頓挫する場合、譲渡契約は実行されないという停止条件付きである。

1株当たりの配当が160円だとしている2025年3月期の配当予想はもちろん維持する。USスチールの買収計画を巡っては、経済安全保障と競争法に関する当局の審査が残っている。

【今週号の目次】
第1部;当面の市況
(1)8日連続の陰線=5年ぶりのことだ(2019年12月以来)
(2)政権交代は在り得るか?
(3)総選挙終了後、直ちに「石破降ろし」が始まるであろう。
(4)石破総理は保守本流同志として、岸田政策を誠実に引き継ぐが、まずは家庭内不和を治めることを片手でやって行かねばならない。
(5)石破内閣の布陣を見れば分かること
(6)7月下旬〜8月5日に経験した大暴落と米市場
(7)マスメディアの言い分は、どこまで信用できるか?
(8)マスメディアが日本弱体化の根源にもなっている─「何が権力か。マスコミはリンチもする」(秦野章)
(9)今は、内外ともに問題を抱えている─イランによる原油暴騰・アメリカ大統領選・石破内閣の安定性

第2部;中長期の見
(1)強気意見─25年1月に44000円説
(2)武者陵司氏は次のように言っている(武者ストラテジーブレティン366号、10月15日)
(3)「逆オイルショック」は、日本株にはさしたることではない。
(4)「地方創生」は、吉田茂をルーツとする保守本命の底辺である。
(5)転換した金融政策、緩やかな利下げを目論むFRBの難路
(6)FRBと日銀の逆方向の金融政策で、未知の領域に入ったが・・・
(7)日本株は米S&P500に比べると出遅れているが、米国の楽観姿勢は今後の日本株に波及するか否かには疑問がある。
(8)首相は「原発の活用は当然考えていかねばならない」と言明した。
(9)原子力発電について
(10)金融所得課税の強化によって、財源を確保して、中間層の底上げに充当するというのは中長期に見た場合、消費を増やす効果として正しい方法ではある。
(11)石破持論の「アジア版NATOの創設」
(12)「低空経済圏」が始まった─日本の出番ではなかろうか?
(13)市場に勝った神田財務官の為替介入について
(14)「This is Japan銘柄」の代表格たる日本製鉄(5401)の稼ぐ力は世界で突出

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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