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【投機の流儀 セレクション】トルコリラ最安値続いて危機に見えるが実は……

【御礼とコメント】
お陰様で、拙稿メルマガが2021年「資産運用の部(株式)」で第1位を受賞しました。アンケートで決めるのだそうです。
多くの読者の皆様のお蔭さまでありました。ここに、改めてご報告いたし御礼申し上げます。
以下は、選者から依頼された「受賞のことば」です。

私とパートナー石原は、恐れるべきことは正しく恐れ、且つ正しく挑戦するという、正統派投資法を世間に広めたいと願うばかりです。
2月と9月の3万600円は、年内でもダブルトップですが、89年大納会の平成バブル大天井の史上最高値3万8,915円をドル換算すれば、同じ位置です。
3万8,915円×(114円/145円)≒3万600円。
即ち、実に「31年ぶりの壮大なダブルトップ」の位置です。しかも、その3万600円は今年2月と9月にダブルトップを付けています。
「この因縁場」を抜けば大相場が示現しましょう。大きく抜けなければ大きなダブルトップを示現しましょう。
一体、どっちなんだ!と直ぐ決めつけたがるのは、甲か乙かを直ぐ決めたがる禅語で言う「二見に堕す(にけんにだす)」という拙い状態です。思惟放棄状態でもあります。酒田のコメ相場の極意に「三位の伝(さんみのでん)」というのがあって、「迷うて迷うて迷い抜くべし。迷い抜きたるところ、それ三位の伝なり」とあります。読者の皆様と私とは市場という戦場で苦楽を共にする戦友です。共に迷い、共に考え抜き、賢く行動し良い年に致しましょう。
今年は9月19日号、3万600円のダブルトップの翌日、「治に居て乱を忘れず」と「易経」の言葉を引用して、「順調な時ほど用心深くありたい」「失敗は万事好調な時に生ずる」と利食い売りを薦めました。直後から3000円下がりました。3000円安を読めていたわけではなく、株式投資の原則論を強調したのです。思えば、あれが最近の、著者会心のクダリでした。
株式市場で為してきたことには人柄が出ます。本稿では「株式投資の成果は、その人の人柄の集積体だ」と説いています。偉そうなことを述べましたが、これが、本稿の眼目です。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況

(1)米市場は好調、日本出遅れ
(2)コールもプットも共に縮小した
(3)当面の市況:
(4)2021年を振り返れば
(5)所謂「適温相場」か
(6)ダブルトップか上進かの気迷い
(7)岸田首相はアンチ株式市場に見える
(8)市場を敵に回すつもりか、岸田首相
第2部 中長期の見方
(1)どうなるか、来年の日本経済
(2)来年の相場について
(3)個別銘柄の選別に対して重要な見方
(4)「米利上げ→普通ならばドル高円安」
(5)トルコリラ最安値続いて危機に見えるが実は…
(6)米の金融正常化で円安進むか
(7)来春は3万3,000円があり得る、その先は2万4千円も在り得る
(8)自民党内に大きな派閥の地殻変動が起きている
(9)「安易にバブルと言うな」――武者陵司氏の言い分(12月9日、武者リサーチ)
第3部 読者との交信欄
京都のI様との交信

「危機という文字は日本語では危険の(危)と好機の(機)の2文字から成る」と筆者がウォール街に行った72年にNY支店の連中がシタリ顔で言っていた。65年から続いていた「株は死んだDeth of Equyties」の最中であった。
時も場合も違うが、トルコリラ建て債券を保有の投資家(筆者含む)には名言であろうと思う。

トルコリラは9月始めには13円台だった。10月には12円台だった。12月17日に6円台前半に落ち込んだ。2年前の8月に約20円が半日で約15円位になったことがあった。その時は直後に大幅反発した。急落したものは急騰する可能性がある。暴落した、そのとき割引債券をリラ建てで買っておけば、3週間でリラは5割上昇、債券価格は3割上昇、その掛け算を享受できた。筆者は敢行した。当時の本稿で開示したと思う。今回もやった。6.3円で買った割引債券〈AAA格債〉を9.8円で3日後に利食った。(3日で60%も急騰する時は債券価格も同様に急騰するから掛け算で利益になる)。8円台で先々週買った分は20円までは保有するつもりである。しかし、元来は短期でやる仕事ではない。

中長期で見れば、エルドアン大統領が在任している限りは大国トルコの運命は悲惨である。高インフレに対して中央銀行は当然に金融引き締めを図ったが、エルドアン大統領は高インフレに対して利下げを強要している。そして利下げに反対した財務副大臣2名をクビにした。こういう大統領がいる限りはダメだ。それでもトルコの経済力は活況を呈しているし対外資産は潤沢にある。

元々トルコは半分は西洋だと本稿では言い続けた。NATOの一員であることがそれを示しているし、人種の面でも中東人よりも西洋人に近いし(イランとトルコは中東人と顔つきが違う)、トルコはイスラム教国でありながらキリスト教の教会がたくさんあるし、中世から近代にかけてオスマントルコは大国だった。エルドアン大統領たった一人のためにトルコリラは最安値を続けている。①エルドアン大統領は2023年に退任する。②また、2023年には、第1次世界大戦の敗戦処理として締結された「ローザンヌ条約」でトルコ国内の地下資源が凍結されたが、これが100年を経たので解除される。ここで投資家として考えられる道は一つしかないような気がする。

ここまで草稿した時点でリラは6.2円だった、翌々日21日に10.2円まで急騰した。筆者は先週8.5円で買ったのだから言動一致を旨とする者として6.3円は当然にナンピンしたが翌々日急騰したので売ったら9.8円で売れた。直後10.2円まであった。買値からすれば60%高だから一旦は利食った。

23年にエルドアンが退任して(★註)、ローザンヌ条約解除で資源が発掘可能になれば、トルコは、古代からの大国の貫録を示して、大西洋条約の重要な一員として欧州先進国並みになると筆者は思っている。
東ローマ帝国、ビザンチン帝国を、オスマントルコは併合して世界覇権を握ったこともある大国だったのだ。
(★註)トルコの著名ジャーナリスト達がエルドアン大統領を「21世紀のヒットラー」と言って批判すると逮捕されるから米国へ移住して言論の自由を盾にしてトルコ内にエルドアン批判を送り続けている。エルドアンは23年選挙では退任する。筆者はそれを「週刊Newsweek」で読んでいる。また、98年前のことだから今は誰も話題にしないが第1次大戦の敗戦賠償金の代わりに「ローザンヌ条約」でトルコ国内の鉱山資源の発掘を100年間禁止された、これが23年に万100年が来て解除されるからトルコは資源国として復活する大国になる。
トルコリラ債権は、本来は、短期で売買する仕事ではない。3日間で6割急騰したから利食っただけだ。19年8月に20円と15円の間で似たことが生じた。20年前のイスタンプール旅行時はリラは60円~70円だったように記憶している。


【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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