【投機の流儀 セレクション】電力業界に吹いた「神風」の正体

「神風」という表現は、週刊ダイヤモンド誌５月２０日号の電力１０社の決算に関する記事の見出しの文言である。

東京電力ホールディング（ＨＤ）は最終赤字だったものの、２３年１月時点で予想していた赤字額から６１％も赤字を圧縮する結果になった。関西電力は通期予想で１４５０億円の巨額赤字を見込んでいたが、１７６億円になった。中部電力は通期１３００億円の赤字を見通していたが、３８２億円の最終黒字になった。

通期決算を見れば、半年前の懸念が嘘のような驚くべき結果になった。これは電力業界が燃料価格の高騰や円安という大逆風を受け続けてきたのに対して、「神風」が吹いてきて風向きが変わったということである。

大手電力会社の２３年３月期の第４四半期の純利益を見ると、次のようになっている。
東京電力５２７３億円、関西電力１４２１億円、東北電力１０２８億円、中部電力７５６億円、九州電力３３０億円という具合である。東電はもちろん柏崎原発の稼働は見込んでいない。柏崎原発が稼働すれば、そこに純粋に２０００億円が上乗せすることになる。筆頭株主は事実上の経産省が４８％だ。経産省は、何としてでも柏崎原発の再稼働を急ぎたい。
また、エネルギー中期計画によれば、現在６％前後の原発は６年後には２０％に持って行くということになっている。

来年３月期の関連と中部電力は過去最高益を予想している。

【今週号の目次】

第１部；当面の市況
（１）市況コメント─万人が強気というわけではない。
（２）週末の状況─テレビが言いたがる「３３年ぶりの高値」
（３）日経平均３万円台回復の背景─その陰に用心すべき要素も・・・
（４）バリュー株指数とグロース株指数が並行して上昇した。
（５）米機関投資家調査によれば、昨年８月以来の「グロース株優位」
（６）「ＰＢＲ１倍」の意味
（７）「人気株　勝者敗者　メッタ斬り」
（８）当面の市況は決して、強気一辺倒ではない。
（９）バフェット氏が日本株への追加投資検討という安心感から、海外投資家の買いが入りやすい状況となっているようだ。
（１０）４月〜５月の市場の様子
（１１）解散は秒読み段階
（１２）今年の賃金動向「３１年ぶりの高水準」
（１３）トルコリラが最安値
（１４）クレムリンに対するドローンでのプーチン暗殺説に疑念続々
（１５）電力業界に吹いた「神風」の正体

第２部；中長期の見方
（１）広島サミットのメインテーマ
（２）「外交の岸田」
（３）Ｇ７議長国として─トランプのおかげで、日本の国際的地位はＴＰＰ取りまとめで大いに高まった。
（４）世界経済の不透明感、景気後退懸念
（５）ＦＲＢ、５月利上げは当面打ち止めか？
（６）植田新総裁の言う「レビュー」の真意
（７）中国の反スパイ法が外国投資を遠ざける。
（８）金融市場の利下げ観測とＦＲＢの年内利下げ否定的見解との乖離
（９）「米市場、先走る利下げ期待」
（１０）米欧金融不安は続く。
（１１）トルコ、２８日のエルドアン大統領決選投票─リラ建て高利回り割引債券の処置
（１２）トルコ決選投票、エルドアン大統領が有利か？
（１３）トルコ事情─「民主主義の罠」「民主主義は“最良のもの”ではなく“次善のもの”だ（プラトン）」

第３部；読者との交信蘭
Ｔ様よりの「一流債権を三流通貨で買って、株式投資では得られない高利回りを生む方法、これのリスク」についての御質問

【プロフィール】
山崎和邦（やまざき・かずくに）
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟（長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3～5頭）、ゴルフ（オフィシャルHDCP12）、居合（古流4段、全日本剣道連盟3段）。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』（講談社）など多数。
ツイッター　https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
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