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【投機の流儀 セレクション】日本は、ドル建てのGDPはドイツと並んで世界4位になってしまった

30年ぶりにドル建てで言えば4兆ドル(560兆円)を割った。日経新聞の9月19日版の第一面のトップ記事の大見出しは「止まらぬ円安 縮む日本」と ある。そしてOECD(経済協力開発機構)によると、日本の今年のGDPは553兆円の見通しだという(140円で換算)。西ドイツと並んで4位になった。2010年までは2位だった。1990年には日本のGDPは世界の18%を占めた。今は5%である。これを「縮む日本」と日経では言っているのであろう。しかし、筆者には少々の異論がある

国の栄枯盛衰は戦争によるよりも経済の盛衰による。これが古代ローマ以来、中世近世のスペイン王朝も中国王朝も英国王朝も共通の趨勢であった。したがって、経済の盛衰は世界機軸通貨のドルで言うのが当然ではあろう。だが、国内で見れば円安は決して「縮む日本」ではない。国内の豊かさは日本の場合は円で示される。円で考えれば円安はトクになる。強力な輸出力となる。資源がなくて資源を輸入して工業で付加価値を付けてきた輸出立国の日本は、資源の輸入にとっては円安は際めて不利である。しかし、その不利を補って工業で付加価値を付ける力の方が大きい。そして輸出は有利となる。
今年の始めには110円だった。そこから30円以上も上がっているとなれば、1円違えば売上利益が100億円違ってくるトヨタは3000億円以上の売り上げ利益が「自動的に増える」ことになる。トヨタを例に出しただけであって、工業力で付加価値を付ける日本が輸出をする場合に円安ほどトクになるものはない。したがって、ここで日本は大いに経済力をつけるべきだ。

平成初年頃、 日本が爛熟期を終えて「失われた20年」が始まる頃からGNPをGDPで計算することになった。GDPとは文字通り一国の国内での1年間の付加価値の合計である。ところが、平成初年より前は長年GNPで計算されてきた。GNPのNはNationality、つまり国籍である。アメリカでもベトナムでもタイでも日本人が出かけていって工場を作ってそこで作った付加価値は全部Nが日本国籍だから日本の付加価値合計に算入される。よって、今GNPで計れば日本の成長率はアメリカ並みにはあるであろう。1%台ではなくて3%ぐらいあるかもしれない。計量経済学的に筆者は計測したわけではないが、円高時代に海外へ工場を移転して海外で作ることが流行った。海外で付加価値を作ることが流行った。GNPで計算すればそれは全部日本の経済力に算入される。そして、これから円安時代には海外へ出していた工場が日本に戻る傾向が急速に進むだろう。そうなれば日本の雇用も増える。生産力も増える。付加価値も増える。GDPは必然的に増える。 「止まらぬ円安 縮む日本」いう日本経済新聞のトップ記事の見出しは以上述べたようなことを考えていない。皮相的である。

【今週の目次】
第1部 当面の市況

(1)買い場探し――週明けは安く始まろう
(2)財務省・日銀は単独で市場介入
(3)株式市場では年初来安値が3ヶ月ぶりに多く出た→超目先的な相場の反転は近い
(4)40年ぶりの円安
(5)7月の貿易赤字は1.4兆円に膨らみ、月次ペースとしては歴代7番目の大幅赤字
(6)岸田内閣の支持率凋落が加速している
(7)岸田内閣支持、発足後最低支持率43%
(8)インフレファイターを名乗って出たパウエル議長
(9)中ロの首脳会談は成功しなかった
(10)短期的な流れの「CPIショック」と長期的な流れ――循環的な流れの必然性の法則を見ると同時に歴史的な流れの地政学や通貨の国際性という原理の必然性も見ていかなければならない
第2部 中長期の見方
(1)日本の「クリーピンインフレ(忍び寄るインフレ)」とアメリカの「劇的インフレ」
(2)日中関係は我が国の経済・株価動向に極めて重要だ
(3)日本は、ドル建てのGDPはドイツと並んで世界4位になってしまった
(4)「新しい資本主義」について
(5)景気の長期波動について
(6)中長期の見方:「アナリスト予想の落とし穴」
(7)成長と循環との結合について
(8)今流行の「パーパス経営」、今後も流行るであろう
第3部 読者との交信蘭
読者H様との交信


【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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