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【投機の流儀 セレクション】米地銀破綻前日の日経高値ツラ合わせか、2年3カ月続いたボックスを抜ける気か?

先週末はメジャーSQ日ではないが、SQ日であった。極めてわずかの差でSQ値(28519円43銭)をクリアできなかった。所謂「幻のSQ」である。こういう時は近日中に波乱があるとされているが、必ずしも実証的根拠はない。但し、SQ日に向かって買い上げる、売り叩くという現象は時々あった。

日経平均で言えば、週末の高値は3月9日のザラ場高値(米の地銀破綻の前日)28734円に迫った。ここで止まればダブルトップを形成するが、騰落レシオ(25日)は週末現在104%、25日線との乖離率は2.89%(週末現在の25日線は27690円)であり、「買われ過ぎ」「過熱」の領域ではない。

前日比で言えば、日経平均は6日連騰であったが、日足で言えば必ずしも陽線が6日続いたわけではなく、6日連騰の中で陰線が2回あった。6連騰と言っても、売買代金は「活況のレベル」とされる3兆円にとどいたことは一日もなかった。

市場の現象を観察して色々と推理することが自然科学のスタンスである。そこでひとこと言えば、外食産業株の高値が相次いでいるという事実だ。値上げに成功したか否かで、選別する動きが見られる。近年稀な賃上げ[その動機(★註)は必ずしも満足するところではないが]に応じて値上げに成功している外食産業がいくつも出始めているということは、賃上げによって消費者に力が付いて、一定の値上げを受け入れる体制ができた結果と言えよう。

適度なインフレが続いてそれを上回る賃上げが続き、一人当たり生産性が増加して、また緩やかなインフレが続く。こういう状態が経済成長の姿である。株式市場はそれを嗅ぎ取ったのか、成長株に買いが回った。

NISAの期間延長と改良が、本稿で言ってきたところの「個人金融資産の地殻変動」につながる若年投資家の動きになる可能性、及び東証が企業内に貯め込んだ利益剰余金を活かせという催促、これらのことが長期目線の買い手の動きとなる可能性があり、その可能性を先読みして海外投資家が買ってきているのかもしれない。

そうなると、将来起こる可能性のある地殻変動と企業体質の改善が「先取り」の形で現在現れているのかもしれない。もしそうならば、2年3ヶ月半続いたボックス相場の中にとどまる恐れもある。

(★註)「『分配と成長の好循環』のための『始めに賃上げありき』」では全くなく、「物価高を背景としている賃上げ」と連合会長が述べているようでは経済成長に資する賃上げではない。

【今週号の目次】
第1部;当面の市況
(1)市況コメント
(2)当面の市況──米地銀破綻前日の日経高値ツラ合わせか、2年3カ月続いたボックスを抜ける気か?
(3)米著名投資家のバフェット氏に日経新聞の単独インタビュー
(4)バフェット氏は市場変調を見て、積極投資に転換
(5)一見好調に見える今年の春の賃上げは、実は弱い。
(6)G20の財務省・中央銀行総裁会議の争点
(7)米銀破綻は、3月で終わったとは必ずしも言い切れない。
(8)欧米の金融市場に地銀の含み損の時限爆弾
(9)IMFの試算によれば、米中堅企業の1割が実質資本不足という状態に陥っている。
(10)欧米金融不安の影に「平和ボケ」ならぬ「緩和ボケ」

第2部;中長期の見方
(1)長期で見たTOPIX上値抵抗線は、極めてわずかながら右肩上がりになっている。その後は如何?
(2)『武者リサーチ 329号』より
(3)中国はウクライナ侵攻から、台湾問題に関する様々な学習をしているはずだ。
(4)岸田内閣で日中関係は10年前に遡って悪化
(5)日中関係の前向きな打開
(6)日本は「静かなる有事」の最中にあり
(7)NATO全体がより強く、安全になる。
(8)終わりなき戦い、ウクライナの終着駅はどこか?
(9)トランプを有罪には持って行けないだろう。
(10)日本の最高成長産業は農業である─「保護農政」が農業の成長を阻害している
(11)トルコ事情

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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