最後の一言は聞き逃さないこと


朝長先輩は私の前に
私の箸を置きながら
不思議そうに首を傾げる。


「明日香ちゃんは
この家に住んでんのか??」

「いや、違うはず。

でもあき兄のクローゼットに
服も下着もあるよ。

この間、洗濯してたら
母さんのじゃない下着出てきて
かなり戸惑った。

因みに色は紫で、めっちゃセクシーで
更に戸惑った。」


私は慌てて泰睦くんの口を塞ぐが

時既に遅しで
朝長先輩の顔はかなり赤くなっている。


「あ、先輩!!
私の下着、今想像したでしょ?!」

「パンツは腰の部分が紐になってて
レースがついてるやつ。

ブラのサイズは、」

「ちょ、チェックしすぎ!!」

「明日香さんこそ、
我が家に馴染みすぎです。」


そんな私達のやり取りを見て

朝長先輩は無言でキッチンに戻る。


「泰睦くん、ひどいっ!!」

「え、俺がひどいんですか??

この間、お風呂にバスタオル
用意してあげたのも俺なのに。

俺がどんだけ理性保ってるか
明日香さんちゃんと分かってるの??」


お母さんはキッチンで
もれなく朝長先輩イジリ中だし

お父さんはソファで酔い潰れてるし


泰睦くんから私を救ってくれるのは
もう義旭くんしかいないと思い


さっさとおせちを食べている
義旭くんのもとに逃げる。


「義旭くん!!
泰睦くんがいじめる!!」

「朝からうるさい。
さっさと飯食え。」


冷たい発言に大興奮の私に

泰睦くんは一歩距離を置く。


「うわー、明日香さんキモ。」

「泰睦くんのがキモいし。
なに先輩の下着に興奮してんの。」

「俺、興奮してないよ。引いてるんだよ。」

「義旭くんは大興ふ-」


ガン、と

私と泰睦くんの頭を

まさかのグーで殴る義旭くん。


「いってぇ!!」
「いたいっ!!」


ハモった私達をまた

一瞥して、席に着く。


「よくこんな可愛い弟殴れるね!!」

「お前のどこが可愛い。」


「次殴ったら、
今度明日香さんの風呂のぞくよ。」


すると義旭くんは

泰睦くんを見つめて言う。


「勝手に覗けば良い。」


えぇ?!

さすがにそこは焦ってよ!!


と、思った直後。



「ただし覗くなら
命懸けで覗けよ。


俺は背後からでも

容赦なく殴るぞ。」



因みに今年の目標は

泰睦くんに
お姉さんと言わせることです。



最後の一言は
聞き逃さないこと







**


去年は明日香と離れて
一年目だったせいか、

少し甘やかしたというか、
優しすぎた気がする。


今年はもう少しお互い

自立し、依存しない関係にしたい。



…ただ、心配はするだろうな。

一応。






2012.01.01 

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