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憂国考察記事#12-14 The Man with the Golden Army

【関連作品】

「シャーロック・ホームズシリーズ」:『空き家の冒険』(The Adventure of the Empty House)

「憂国のモリアーティ」4巻:#12-14 The Man with the Golden Army

「007シリーズ」:『黄金の銃を持つ男』(The Man with the Golden Gun)


「憂国のモリアーティ」の第12~14話はモランをメインに据えた物語だが、タイトルや登場人物は007シリーズを彷彿とさせるものばかり。世界中で最も有名な探偵の宿敵モリアーティ教授最も有名なスパイジェームズ・ボンドのコラボレーションがここから本格化する。

触れ始めたら切りがないが、まずは登場人物から。アルバートはMI6の中で“M”と名乗っているが、「007シリーズ」におけるMはMI6の部長である。ミス・マネーペニーも同シリーズの主要キャラクターで、Mの秘書を務めている。さらにヘルダーが名乗る“Q”はMI6の研究開発であるQ課の課長とされる。つまり、この回でジェームズ・ボンド以外のキャラクターをモチーフにした人物が続々と現れているわけだ。ボンドが誰なのかは後々の物語で明かされるので、ここでは置いておこう。

さらにこの題名『黄金の軍隊を持つ男』(The Man with the Golden Army)は007の『黄金の銃を持つ男』(The Man with the Golden Gun)とよく似ている。この作品には当然ながらM、マネーペニー、Qの3人とも登場する。ちなみにそもそもの『黄金の銃を持つ男』も『黄金の腕』(The Man with the Golden Arm)のパロディだったりする。ArmとArmyのほうが類似性が高いため、タイトルは元ネタのほうから取ったのではないだろうか。

007の『黄金の銃を持つ男』では、Mの名前が明かされる。「憂国のモリアーティ」の本作ではアルバートをMに任命した男が「ミスター・ホームズ」であることが判明する。彼がマイクロフト・ホームズであることは#4で既に触れた通り。モリアーティ教授の兄とシャーロック・ホームズの兄が手を組んでスパイ活動とは、なんとも心憎い仕掛けである。

さて、「007シリーズ」ではなく「シャーロック・ホームズシリーズ」の角度からこの物語を見てみよう。モランの消音銃をつくったのは“Q”と呼ばれたヘルダーで、かなりの武器マニア。連発して消音銃を壊したモランを嘆き、空気銃を応用した消音銃の開発を目指す発言をしていた。その空気銃は原作の『空き家の冒険』に登場し、モラン大佐が使っている。そして開発したのはフォン・ヘルダーであるとホームズが説明している。

“音もなくすさまじい威力だ。僕はフォン・ヘルダーを知っていた。盲目のドイツ人技師だ。彼は故モリアーティ教授の依頼でこれを作った。”

モランと言えば空気銃というのは、この『空き家の冒険』から生まれたイメージである。「憂国のモリアーティ」で、音の出ない空気銃がモランのトレードマークとなっているのもうなずける。原作で明確にモリアーティの部下として名前が出ていたのは、セバスチャン・モラン大佐とフォン・ヘルダー、フレッド・ポーロックだけ。ヘルダーの登場で、原作でのモリアーティ一味は全員出尽くしたことになる。

※Peter WolfによるPixabayからの画像

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