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西和賀町のキャッチコピーをフェアネスの観点から考える

バーニーズ・ニューヨークの記事を書きました。

【対談】「経済合理性」を突き抜けた先に、強いブランドが生まれる
https://newspicks.com/news/4797847

「年間通じて便所サンダルで過ごしているおまえがバーニーズかよ」というツッコミは当然のご指摘として受け止めるとして(上の写真も足元はきっちり便所サンダル)。

記事に登場しているインサイトフォースの山口義宏さんとは、以前別の仕事でご一緒させてもらいました。

デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール(MarkeZine BOOKS)
https://www.amazon.co.jp/dp/4798155438/

ライター専業時代に書いたもののなかでもかなりコスパのいい書籍で、「ブランドって贅沢品のことでしょ。私にゃ関係ないね」と考えている方全員に読んでもらいたい、ブランド論の入り口に最適のものとなっております。

冒頭の記事中から山口さんの発言を引用すると、

ブランドとは「識別記号」と「知覚価値」の2つが頭のなかで結びついて、初めて成立します。

例えば、バーニーズの空気感や接客の良さは、ブランディングにおける「知覚価値」にあたります。ほかにも、その店で買った商品に関する体験や、記憶に残っている品質などが含まれます。

一方の「識別記号」は、商品やサービスをそのブランドと結びつけるもの。ブランドロゴは識別記号の代表格ですし、長い期間同じタレントを起用していれば、そのタレント自体が識別記号にもなりうる。

例えばファッションブランドのロゴを見て、「おしゃれな人がいつも着ている○○なやつだ」と思ってもらえれば、それは識別記号と知覚価値においてブランド像がユーザーの中で結びついたというわけです。

というのがブランド。

「こういうとき行くなら西和賀だ」「西和賀に行けばこういう体験ができる」、あるいは「西和賀といえば○○でしょ」「○○といえば西和賀でしょ」と想起してもらえるようになれば、西和賀がブランドとして成立しているということですね。

翻って町の現状を眺めるに、私はやっぱり「どこにもない四季と湯の里」がキャッチコピーだと、どうにも違うんじゃないかな〜と思ったりするわけです。

西和賀の自然が美しいか美しくないかでいえば、そりゃ自然に無頓着な私でも心が動くときがあるくらいには美しいと思うけれども、果たして「どこにもない」と言えるレベルなのかというと、そりゃ違うんじゃないかと。

温泉があるのは事実。ただ、実際に温泉が西和賀を規定しているものかというと、やっぱそれも違うだろうと。みんなが温泉の近くに寄せ集まって生きているというくらいなら「湯の里」を自称していいと思うけど。

みんな知らないのかもしれないけど、温泉はどこにでも湧くから。穴を掘る金さえあれば。

正直、今のキャッチコピーは上澄みでしかないし、「売り手」の意図しか感じないのですよ。

お客さんとして初めて町を訪れた2012年から、「買い手」として「どこにもない四季と湯の里」というキャッチコピーには違和感を覚えていて。

だからなおさら、瞬間最大風速的に、私でさえ「どこにもない四季」と言えてしまうような美しさがあるとしても、「どこにもない四季と湯の里」と言いながら自信を持って商品を売れるかというと、私には後ろめたさがあるわけです。

今現在の西和賀を規定しているのは、間違いなく自然条件としての雪と社会状況としての過疎でしょう。そこを真正面からアピールして、初めて「西和賀」が頭のなかにスッと入ってくるのではないか、と。というか、フェアなんじゃないかと。

だから、以前からずーっと考えているのは「豪雪と過疎と挑戦の町」

「行政は挑戦してねえじゃん」というお叱りの声もあるだろうけど、町で生まれた人がヘンテコな挑戦をしてたり、ヘンテコな人が引っ越してきてはヘンテコなことをしていたりするわけで。

この場合のヘンテコは褒め言葉ですよ。西和賀においては、どんなことをするにしても、「もっといい条件のとこあるだろ」と私は思っているので、西和賀で何かやる、という時点で、もう既にヘンテコなのです。

そういう意味では「豪雪と過疎とヘンテコの町」でもいいわけで。

「挑戦の町」とか「ヘンテコの町」を掲げていれば、引っ越してきた人が思い通りにいかない現実に直面したとしても、文句こそ言えども、呪うほどに恨みを持つようなことはないだろうと。

今般のCOVID-19によって、西和賀のような郡部は、受け入れる体制さえあればフィーバーするはずで。

ただ、人と土地は相性があるから、定着率100%なんて目指すだけアホらしいので、とにかく試行回数を増やすべきで。

そのためには、来てくれた人がすぐに出てっちゃっても、「相性があるから当たり前だよね。よし、次いこう」という強靭さと、卑屈になるんじゃなく、西和賀の現状をきちんと打ち出していく正直さが何より必要とされてるんじゃないかな。

私の考える正直さってのは、端的に言うとこういうことですよ。

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これは令和2年度の西和賀町地域おこし協力隊募集時に使ったものですが、万全の体制じゃないこと自体は恥でもなんでもないし、むしろ「制度自体に口出しできるほうがおもしろそうじゃん」ってわざわざ乗り込んでくる人だっているかもしれないわけで。

世の中には「ゴディバが最高!」という人もいれば、「チョコボールがいい」「5円チョコがいい」という人もいるので、最終的に買い手を裏切ることになるんだから、無理してゴディバぶる必要はないんじゃねーの、って話ですね。

唐仁原 俊博 a.k.a. 西和賀町のやべーやつ / とうじんばら としひろ
岩手県西和賀町 地域おこし協力隊 / 演出家 / エンハンサー / エンチャンター

大学生・怠惰な生活・演劇の三足のわらじで、京都大学を10年かけて中退した、元フリーランスライター。ほんとは大してやばくないけど、最長3年の任期をフル活用するためにも、やべーやつを名乗ることにした。
ほんとに大してやばくない。

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