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砂漠の音楽隊

白い太陽と薄い空。
汗と砂が舞うこの世界で
今日も列車に乗って彼らはやってくる。



昔々、人間は争いばかりだったので
神さまが怒って世界を全て砂漠にしてしまった。
それからずっと、僕たちは砂漠で暮らしている。
でも不幸じゃない。むしろ限りなく幸福だ。
こんなに暑くて口の中も常にザラザラしているけれど、不思議と世界は美しい。


真っ白い空と砂漠の中には、黒光りする重厚な線路が走っている。
これが世界を1つに繋いでいるというのだから驚いてしまう。
線路を走る列車が届けるのは、水でも食べ物でも家畜でもない。
音楽隊だ。

今日はこの村に音楽隊がやってくる日だ。
日没と共に、皆が線路に集まりだす。
月が完全に登ったころに、真っ黒い汽車がやってきた。
「やぁ、皆さんお集まり。
さぁ、さぁ、早速踊ろうか」
音楽隊は一息着くなり、
楽器を取りだし歌って踊る。

くるくるくるくる。
踊る彼らの服は、色とりどり。
世界中から集めた布を様々に組み合わせているのだもの。
中には金物や人形、
フォークをぶら下げている者もいる。
白い砂漠のキャンバスに、
彼らは鮮やかに浮かびあがる。

音楽隊も村人たちも、思い思いにたくさん踊る。
子供も大人も年寄りも、好き勝手に歌い舞う。
そうして皆の熱気がピークになった時
ピカッと空が光った。

「スコールだ!」


村に雨が降り出した。
皆はより一層踊って歌う。
嬉しさと楽しさと気持ち良さが入り混じって、
もう何が何だか分からない。

散々踊って疲れた頃に
音楽隊は帰っていく。
「今宵も素敵な夜をありがとう。良い雨を!」
そうして彼らは次の村へと旅立った。
この世界は最高だ。
僕は大きく手を振った。



所変わってここは遥か空の上、雲の上。

先ほどまでの光景をみていた神さまは肘をつきながらぽつんと言った。


「なんだ、音楽で良かったのか」



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