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探し物

荒れ果てたこの土地で、男は今日もせっせと土を掘っている。
「きっと、きっとあるはずだ」
掘れども掘れども、探し物は見つからない。



広い広いこの宇宙。
地球人は、母性である地球だけには飽き足らず、他の星にも住むようになった。
科学技術が発達し、他の星へ行くのも住むのも自由自在。
皆、次々と他の星に移住していった。
一方地球は、今まで酷使されてきたために緑や動物は減った。
更には人がいなくなると、いよいよ活気を失い錆びれていった。


そんな中、未だに地球に住み続ける男がいた。
「大切なものを、ここに落としてしまったんだ。一体どこに行ってしまったんだろう」
男は困った顔をしながら、一心不乱に土を掘る。
やがてそんな男に愛想が尽きて、妻も子供も出て行った。



それから何年、何十年と経っても、男は変わらず探し続けた。
「大切なものだったはずなんだ」
男にとっても、それが何だったのかもう思い出せないほどに記憶は遥か彼方先。
それでも男は探し続けた。



そんなある日、宇宙人が地球観光にやってきた。
宇宙人は地面を掘り続ける男を見ると、手を叩いて喜んだ。
「いやぁ、珍しい生き物がいるもんだ。こんなに面白い場所は初めてだ」
宇宙人は、友達を沢山連れて度々遊びに来るようになった。

その光景をみた地球人達は、少しずつ地球に足を運ぶようになった。
「まだ、探しているんだね」
「頑張って」
男に声をかける者も増え、やがて手伝う者まで現れた。
皆の力で掘られた地面から水が湧き出て植物が生え、地球には緑が戻り始めていた。



さらに数十年が経った。
男はすっかり年老いた。
けれども、男はまだ地面を掘り続けていた。

そこへ年老いた老婆がやってきた。
それは別れた男の妻だった。

「あなた、探し物は見つかりましたか」
妻が声をかけると、男は
「いいや、まだみつかっていないよ。すまないな」
と首を横に振る。

すると妻は辺りを指差した。

「あなたが掘り続けたこの星は、すっかり豊かになりました。みてください、とっても賑やかですよ」

男が何十年ぶりかに顔を上げると、そこには沢山の緑と、店と家、人々がいた。
皆楽しそうに笑っている。
男が幼い頃にみた、地球人の暮らしがそこにはあった。


「あぁ、やっとみつかった」

男はほっとしたように息をつくと、妻に寄りかかって目を閉じる。



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