森の理
深く青い空に無数の流れ星。
彼は流星に願った。
「どうか森の理を教えておくれ」
彼はいつも考えていた。
森に生きる動物達のこと、雨のこと、木々のこと、あらゆる自然のことを。
考えることか好きだった。
森の理を知りたいと、彼はたくさん森を歩いて知識を増やしていった。
知れば知るほど、もっと知りたくなる。
ある日の夜、彼は神が宿るという湖にやってきた。
今日は流星群がやってくる日。
やがて、空に星がきらきらと溢れ出した。
湖は月と星の光を浴びて、ぼんやりと霞がかかっている。
空は深い青で、星達が銀色の光を纏って走る。
あぁ、森は本当に美しい。
走り去る星の1つを目で捕まえて、彼は願った。
「どうか森の理を教えておくれ」
星は頷くように光って消えた。
夢のような夜だった。
翌日から、不思議ともっと森のことを考えられるようになった。
頭は冴え、体力も続き今まで以上に調査も進んだ。
やがて彼は、森に住む動物達にも森の理を教えるようになった。森に住むなら、知っていた方がいい。知っていた方が楽しい。
「ありがとう。君は森の賢者さまだ」
動物達は皆、彼をそう呼び慕った。
それから何年も経った。
彼はさらに知識が増え思慮深く、人望も厚くなったが、ふと不安に感じた。
「この力は、いつか神様にお返ししなくてはいけないのだろうか」
ちょうど季節は流星群。
彼はまた湖に向かった。
夜から天気は崩れ、どんよりと暗い雲が覆っている。
星たちの代わりに雨が降り、湖に注がれた。
ぼんやりと雨で濁った湖を見ながら、彼は言った。
「この力は、いつかお返ししなくてはいけないでしょうか?」
雨は何も答えず、ただただ湖に降り落ちる。
うな垂れて帰ろうとすると、湖から魚の子が顔を出した。
「賢者さま、どうしたの?」
「何でもないよ。ごめん、起こしてしまったかな」
「大丈夫だよ。ねぇ賢者さま、また明日森のことを教えてね」
魚の子は笑ってまた水の中に帰っていった。
ちゃぽん。
水の音が彼の頭を揺らす。
例え私に力がなくなってもー。
彼は安堵の表情で、
ホウホウと湖から飛び去った。
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