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幸福なお姫様

あるところに、皆からたいそう愛されているお姫様がいました。
お姫様の朝は、執事とメイドの笑顔から始まります。
「おはようございます、姫。本日もなんて麗しいのでしょう。」
朝ごはんはとても量が多かったので、おやつに持っていくことにしました。

お庭にでると、綺麗な薔薇たちがお出迎えをしてくれました。
「いっぱい咲いたよ。ぼくたちの花びらを持っていってよ」
お姫様は花びらを受け取ってカバンの中にしまいました。

町に出ると、人々が次々にお姫様に声をかけます。
「姫、焼きたてパンを持っておいき」
「姫さま、チーズが美味しくできたのでどうぞ」
お姫様の鞄はパンパンになりました。

町の外の広場では、子供たちが歌の練習をしていました。
「姫さまのために歌うから、聴いていって」
子供たちは、風にのせて歌をうたいます。
歌声はお姫様の周りを回って町の外や中まで飛んでいきました。

「ありがとう。お腹が空いたでしょう?さっきもらったパンとチーズをあげる」
お姫様は子供たちにパンとチーズを差し出しました。

森の中に入っていくと、狐の親子が泣いています。
「どうしたの?」
「足を怪我してしまって狩りが出来ないのです。もう3日食べていなくて…」
「可哀想。朝ごはんをあげるわ。残り物でごめんなさいね」
狐の親子はとっても喜びました。

小川のそばに行くと、アリが行列を作っています。
向こう岸に渡れず困っていたのです。
お姫様は薔薇の花びらをあげて、船の代わりにしてあげました。
向こう岸に着いたアリ達は、声を張り上げて言いました。
「お姫様、ありがとう」

夕方になり、お姫様が夕日を浴びて帰っていると、道の端に佇む少女に出会いました。
「どうしたの?」
「舞踏会に誘われたんだけど、着ていく服が無くて途方にくれていたの」
あら、とお姫様は微笑みました。
「それは絶対行かなくちゃ。私の服をあげましょう。」
お姫様は少女と服を交換しました。

街灯が照らす路地裏の陰、今度は男性が座り込んでいます。
奥さんの誕生日にプレゼントを買いたいのですが、お金がなくて困っているのです。
「私の髪を売りなさい」
お姫様は金色に輝く長い髪を切って男性にあげました。

最後に靴を無くした男の子に靴をあげて、お姫様はやっとお城に帰ってきました。
「ああ、身軽になった」
お姫様はぴょんとベッドに飛び込み、笑顔で眠りました。

おやすみなさい、お姫様。


#ショートショート
#小説
#りんぬちゃんへ
#あなたに捧ぐ物語

※このお話は、オスカー・ワイルド「幸福の王子」の2次創作です

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