情報は、知ると眺めるとでは大違い[20240206]
今週は、弊社の経営コンサルティングの基本的な姿勢、考え方である「情報経営」について話したい。
「情報経営」の考え方を導入して経営改革を実施することは「整体」にも似ている。
神経の上を情報が流れて身体を動かしているので、
情報は、人間の身体で例えるならば「神経系」と言えるのかもしれない。
神経が切れてしまっては、例えば右手が沸騰した湯の中に浸かっているのに「熱い」と感じなかったらオオゴトになる。
企業・組織でこういうことが起きていないのか!?
少々小さい話になるかもしれないが、プロジェクトが遅延する原因の一つがこれだ。
根源的な理由はともかく「リリース1ヶ月前までオンスケ」だったプロジェクトが、「リリース2週間前に3ヶ月遅れ」と報告が入る。
2週間前に見た進捗表は何だったのか!?となる。
これは、どこかで情報流通不全が起きているからなのだ。
会社組織で言えば、お客さまからの声が経営に届かない状態に似ていると思う。
そこそこの大組織になると、お客さまからの苦言が耳に入ることが少ない。
更に言うと、大組織の上層部になればなるほど「(耳に)気持ち良い情報」しか聞こえない。
「我が社は上手く言っている」と勝手に思い込んでしまう。
だが、その裏には耳に痛い情報が何倍もあったりする。
当然の如く放置すれば大問題になる。
しかし、耳に痛い情報は、改善や改革のチャンスである。
経営トップ層が自ら身を乗り出して耳に痛い情報を聴いて対策を練る必要がある。
最前列の情報を経営上層部に届けるのは、意外にも至難の業である。
私は、生データ(Raw Data)を取締役会で見て貰うことで、このような問題を解決したことがある。
某上場企業の取締役会に生データ(Raw Data)を会議開始10分前に見てもらうという新たな習慣を作った。
生データ(Raw Data)は、何でも良い。
これを仕組んで運用したのは「社長室」だったのだが、取締役会には生データ(Raw Data)を持ち込んだ部門の担当者が出席した。
何か質問があれば何でも担当者に尋ねれば良いという体制を作った。
この企業で、私が感じたことは大きく2つあった。
一つは、経営トップ(取締役会メンバー)に届けられる情報は、現場で起きたことから加工に加工を重ねて元々の姿が見えなくなるほど加工された情報だったということ。
もう一つは、取締役の殆どは、事業部門の利益代表者だったということだ。
例えばA事業部管掌取締役とB事業部管掌取締役は「自部門の利益を極大化する」ことがミッションになっていた。
そのため、お客さまの本当の声が聞こえていないように見えた。
この習慣を作ってから、この企業での意志決定は飛躍的に変化したと言う。
取締役会では、各部署からの数分程度の決裁申請に関わるプレゼンがあり、採否をして議事進行していく。
ここで「本当は何が起きているのか?」という質問が飛ぶようになった。
A事業部のことは、B事業部には関係無い、隣のことには不可侵という常識も(良い意味で)破られた。
生データ(Raw Data)は、取締役会の意志決定のレヴェルを上げたし、何よりも他の事業部やら管理部に興味を持つようになった。
会社の実態が見えてきたのだ。
サマリーされた情報で美しく説明されても実態を10分見た方が全然良い。
情報の使い方を変化させて、生データの凄味を再認識するだけ経営は一気に好転するこがあるという事例だ。
月に2回の取締役会の前10分間に生データをただ見て貰うだけ…そんな簡単なことで経営は変わるのだ。
恐らく、取締役会向けに美しく資料を仕上げる文化も変化しているに違いない。
「生」の姿、つまり現実を報告することの方が正しいという文化に変わっているはずである。
IMD国際デジタル競争力ランキング第32位のわが国では、「ビーグデータ分析・活用」の項目では世界最下位(64位)なのである。
少しでも改良したら結果は直ぐに出るのだ。
合同会社タッチコア 小西一有
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