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奄美大島 宇検村の休日

すっかり朝晩涼しくなった。
エアコンなしでぐっすり寝た翌日。
お休みだから二度寝するのは基本。

日の出が東京や大阪より遅めの奄美大島。
その中でも宇検村は西側に位置しているうえに、湯湾岳に連なる山々が朝日を隠すため、朝日の直射日光を受けるまで、かなりの時差がある。

外は明るいのだけれど、太陽の光は山にさえぎられてなかなか出てこない。
ゆえに、朝はとっても涼しい。

窓を開け放つと、波の音と鳥たちの声が聞こえ、涼しい風が吹き抜ける。
なんて優雅な休日かしらと思うまどろむベッドの上。

天井にヤモリが走り抜ける。

通常運転やな……。
そろそろ名前付けたらなあかんな。

ヤモリと共同で暮らすことにすっかり抵抗感がなくなっている人の心の声

もう少し寝ようとする想いと裏腹に、早朝六時からガンガン響く集落放送。
どうやら草抜き作業が中学校であるらしき気配。

二度寝する予定が、数々の刺激ですっかり目が覚めてしまったので、
朝の涼しいうちにお散歩をすることにした。

聞いていた通り、中学校の敷地内で草取りが行われていた。
お手伝いしていないことに若干の後ろめたさを感じながら、歩いていると、
「おはよう」「こんにちは」と、挨拶をしてくれる。

私の暮らす集落は、巨大なバス停のガジュマルで有名なところ。
観光客の方へも壁なく接してもらえるのは、他府県からの移住者が多いからかもしれない。

つまり、暮らしやすい。
ということで、絶賛物件不足中なのだ。

てくてく歩き続けると、気になって仕方ないものを発見した。
普段車で通り過ぎていたから気にならなかったのだけど。

ウェルカムってことなんだと思う

そして、さらに気になったのがこれ。

こちらのお宅の方は、瀬戸内出身なのかな?

実は、奄美大島全土で土俵を見ることができる。
殆どの集落にあると言ってもよいのではないか。
相撲が盛んなのも頷ける。

14個の集落から成り立っている宇検村。
各集落ごとに、微妙に風習が違う。

そして、今年はその14の集落で、それぞれ豊年祭(ほうねんさい)という祭りが3年ぶりに行われるという。

豊年祭とは、神様にお礼をする?為の儀式のようなものだと理解している。
(間違ってたらごめんなさい)

各集落には土俵が必ずあり、神様が暮らす場所でまず祈りを捧げ、その場所から、集落の男性がふんどし(じゃなくて、まわし?)を締め、長い列を作りながら神道(カミミチ)を下り神様をご案内する。掛け声をかけながら土俵までやって来る。
そこで神事を行い、相撲を取る。

夕方からは、集落の人たちが、唄い、チジン(太鼓)を鳴らし、踊り続けることになる。その歌も、踊りも、14集落で異なっているらしい。

相撲の土俵の中央部には、神様に捧げる捧げものが埋められているのをご存じだろうか。日本各地で行われる相撲巡業でも同じ。

相撲は神様に見ていただくためのエンターテインメント。だから天皇陛下の御席が未だにそのままあったりする。
通訳案内士の二次試験で、そんな話をして盛り上がったことを思い出す。

実は私の暮らしている場所の豊年祭は、すでに終わってしまった。
私が病に伏せっていた間に……。
祖母の故郷の集落の豊年祭も同じ日だった。

ああ……参加したかった。
ご先祖様、神様、ごめんなさい。

後悔しきりの心の声

そんな後悔の念に囚われながら、お散歩をしてたどり着いた、湯湾集落にある「がじまる茶屋」。私のお気に入りの場所である。

役場からも歩ける距離なので、ランチに来たりする。
不定休なので電話をしておくと、開けてくれたりする。
確認してから行かねばならないのが、宇検村あるある。

お墓のすぐ横にあるので、最初にここへ来た時、車で角を曲がりながら、「ほんとにここでいいの??」と焦った。

宇検村役場前の道をずっと真っ直ぐ西へ行くと、
ガソリンスタンドの前に曲がり角と小さな看板がある。
ここを曲がる。

角を曲がるとすぐ右手に見えてくる駐車場には、駐車してはいけない(個人使用)ので、ご注意を。
お店は、この個人のお宅の駐車場の向かいなのだけど。

駐車するなら、さらに奥まで進んだ共同墓地の隣の駐車場へどうぞ。
分からなければ、お店に声を掛けて、お店の素敵なお母さんへ聞いてみて。

一見して民家に見えます。
大きなシークワーサーの木のある家です。

入口に転がるパパイヤは、スライスされて漬物になるのだろう。
この島の特産品、と言えばいいのか。家庭で食べる郷土料理。
私的には、カレーの福神漬けに変わるもの。

お庭でとれたパパイヤ。そこら中に生えている。

いつもランチ時に≪豚肉酵素漬け≫定食を食べに来るやつが、休日の、しかも朝早い時間にやって来たので、ご迷惑かしらと思ったけれど、何か飲みたいのですがと言うと笑顔で迎え入れてもらえた。
(朝から酵素漬けは食べませんので!)

落ち着きます。ひとりで来るときは専らカウンター利用。

ここの酵素飲料が好きなので、リクエストしたら、完売だった。
お薦めの「マンゴー&レモンシロップ」ジュースをいただく。
甘くて美味しい。

小さいパイナップル

「食べてみる?」と小さいパイナップルが出て来た。
「持って帰る?」と、外に生えていたシークワーサーとバンシロウの実も、いただいた。

自然のままのシークワーサー

自給自足可能店舗に認定。

ここのお嬢さんが焼くパンも美味しい。見つけられたら、ラッキー。
色々頂いてばかりなので、明日の朝食にと買うことに。

無農薬にこだわって、色々育てていると聞いている。
お気に入りは、オレンジピール入りのパン。みかんの種類を確認するのを忘れてしまった。タンカンだろうか、香りがとても良い。

手前のよもぎのパンも美味しいです。

朝ごはんを終えて、店を出ようとしたら、外のタイル張りのレトロな流しにドラゴンフルーツを発見!

このまま土に埋めると育つ。そして花が咲いて、真っ赤な実が付く。
中の実の色は白よりも、皮と同じ色の深紅の方が味が濃くて美味しい。

数か月後にはドラゴンフルーツが出来ているのか?
村のいたるところで、うねうねとサボテンのような枝を伸ばして増殖している。

北部のスーパービッグツーの横の農園も、今が盛りの収穫時。

がじゅまる茶屋からお散歩すること10分で、やけうちの宿へ到着。
愛想は無いけど、愛情はあるフロントマンに挨拶をしてから、
久しぶりに向かいにある市場に立ち寄った。

市場の中も、ドラゴンフルーツだらけ。バンシロウ、ハンダマもあった。
未知の南国フルーツの姿形がわからない方は、ググってください。
写真撮り忘れました……。

かつての同僚と話し込んでいると、耳寄り情報を入手した。
彼女の集落の豊年祭は、明日の日曜日。
誰もが踊る日。相撲も観られる。

自分のいる集落の豊年祭にも、ご先祖様の集落の豊年祭にも行けなかった私。まだ新参者は参加してはならん!と言われていたのかもしれないと、心を切替え、とにかく他の集落の豊年祭を見に行こうという気持ちになる。

ふたつ向こうの集落では、今日、豊年祭が行われるらしい。

実は、宇検村では集落ごとに豊年祭の日までも違う。つまり14回チャンスはあるのだけれど、一部の集落では同じ日にやっていたりするので、同じ日にあちこちみたいと思うとかなり忙しい。

お盆あたりから始まるので8月の中旬から、9月中旬まで。
毎週末、何処かの集落で豊年祭が執り行われている。
今年は、あと、残るは、本日の9日(石良集落)、明日10日(宇検集落)、そして最後が来週の9月17日で、湯湾集落、須古集落、生勝集落、名柄集落の4つの集落で一斉に行われる。

観光で来られる方がいたら、立ち寄ってみてもいいかもしれない。
気になる方は、Youtubeなどで見ていただくと、過去の祭りの映像があるかと思う。

かなり珍しいお祭りで、一般にイメージしているような、屋台が出て、花火があがって、人混みだらけでというものとは全く違う。
神聖な、儀式のお祭り。
輪になって踊るのは、夕方以降。いわゆる盆踊りにあたるものかと思う。

宇検村の神々の、神秘のパワーを頂けるかもしれない。

とてつもない観光資源を持っている村なのだけど、誰もそれが観光に結びつくものとは考えていない。神事だからかもしれない。

ということで、明日日曜は宇検村の中にある、《宇検集落》の豊年祭へ行こうと企んでいる。
自分の集落のに参加できなかったので若干気が引けるのだが、そのあたりは新参者、よそ者特権。

宇検集落は、かつての宇検村中心部。
道路環境が十分でなかった頃、交通機関の主役は船だった。
その船で出入りするのに最適だった場所。

トンネルができ、道が通り、今では中心部は湯湾集落に移り、私がお手伝いしている役場もそこにあるのだけれど、かつての中心部からは車で30分ほど離れている。

宇検集落の方たちは、かつて中心部であったその場所をとても大切に思っているように感じる。とても明るい印象の集落。

大潮の干潮のときには「マイクロアトール」なる、神秘の物体が海から顔を出す。
そこの人たちは、普通に見ているので誰も感動しないらしいのだけれども。

波が荒く、珊瑚だらけで座礁する船も多かったのだろう。
様々な歴史を物語る遺跡が海中から出ている。

戦時中に撃沈された船から投げ出された人たちを、宇検集落に暮らす人たちが懸命に救助したことでも知られている。
乗っていたのは、ほぼ沖縄から疎開する子供達だったそうだ。

船越海岸にあるその慰霊碑は集落の西端に建てられていて、慰霊式典の時には毎年新聞社や放送局が撮影に来ていたりする。
いわば、平和祈念のための碑。

海水浴場ではないのだけれど、海に面しているため、マリンレジャーなどができたり、一棟貸しの宿泊所や、トイレ付きの釣りイカダなどがある。
水温が高すぎなければ、沢山の魚が釣れるらしい。

向かいの巨大な無人島、枝手久島には、現在環境保全のためのマングローブ林を植樹中。ハブ発祥の島とも呼ばれている。
なるほど無人島なわけだと思っていたのだけど、「無人島で暮らす」というコンセプトのテレビ番組撮影に使われたことがあるらしいから驚き。
よくぞ御無事で。

昔から、外から来る人達を温かく受け入れてきた場所が故、新参者の私にもとても優しい地域。何よりその明るい雰囲気が、とても心地よい。

ここにも木果(Mokka)というパンの美味しい可愛いカフェがあるので、またご紹介できればと思っている。

たまには、ちゃんと村のこと紹介しなきゃね。
明日が、とても楽しみです。


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