見出し画像

さよなら、ゴンシャン 長く続けることの難しさと大切さ

西鉄柳川駅、東口から徒歩5分ほどの場所にひっそりと佇む純喫茶。その名も「ゴンシャン」は、柳川の方言で「お嬢さん」という意味があるそうだ。
1973年創業、約50年に渡って柳川の風景の、季節の、そして人の移り変わりを見守り続けてきた名店が9月30日を持って閉店されました。
柳川にきたばかりの頃、御花のスタッフさんと一緒に「柳川巡るドライブツアー」をしていた時にお勧めされたのがゴンシャン。


「昔ながらの喫茶店が好きなら行ってみたらいいよ!」
と言われて、ずっとずっと気になっていた場所でした。


何度か定休日(臨時休業?)にバッティングしてしまい、結局お店にお伺いできたのは1度だけ。それがもう、本当に本当に良い時間でした。

普段コーヒーを飲もうと思っても、選択肢にあるのはスタバが8割。PC作業も出来るし、気軽に長居できること。そして、お値段も手軽で使い勝手が良い。「純喫茶」とは、コーヒーを提供するという点では同じでも、気軽さも過ごし方も全く異なる場所のように感じます。コーヒーというより、珈琲が似合う。

重厚感のある扉、外からは中の様子がよくわからない。入口の前に立って扉を開けるかどうかちょっとドキドキする。勇気を出して中に入ると、昭和にタイムスリップしたかのようなレトロな空間。ステンドグラスから差し込む光が美しく、クラシックなスピーカーから流れてくるのは落ち着いたジャズの音楽。サイフォンで丁寧に淹れられた珈琲を、ゆっくりじっくり味わうための空間。

PCもスマホもなかった50年前。きっと近所のハイカラは若者たちが、タバコを吸いながら世間話をしたり新聞を読んだりしていたのかな?そんなことを思いながら、自分もここではPCもスマホも出さず、読書の時間を楽しみました。コーヒーの流行は入れ替わりが激しく、その中で生き残ることは簡単なことではないと思います。スタバもブルーボトルも、時代と共にあり方を少しずつ変えながら現代のニーズに合わせてきたのではないでしょうか?


そんな中で純喫茶で寡黙なマスターが丁寧に淹れる一杯の珈琲は、時が変わろうとも変化しない絶対的な本質のようなものを見せてくれているような気がしました。ずっとずっと続いてほしいというユーザーの思いも、ご本人の高齢化には抗えず。現在は後継者を募集しているそうですが、一旦閉店するということになったようです。


長く続けていくことの難しさと大切さ


それは、御花にとっても重要な課題なのではないでしょうか?初代から数えて千月香社長は18代目。400年前から代々大名家としてこの場所で続いてきた営み、そしておじいさまの代から始まった料亭旅館としての旅館業。その歴史を、100年後の未来に残すために今何をやるべきなのか。その葛藤は計り知れません。


永遠の心のよりどころ


御花が掲げるミッションです。一民間企業に留まらない、柳川という地域における御花という場所のあり方を表したとても素敵な言葉だと思います。何百年も前から、当たり前にそこにあり続けているから、普段は意識できないことかもしれません。しかし、もしなんらかの理由で御花がなくなってしまったら、柳川という街の風景はすっかり変わってしまうと思います。

続けていくことの大切さ、
という言葉の重みを街の喫茶店の閉店から改めて考えさせられました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?