マーラーは死の恐怖に怯えながら「告別の曲」を書いたのか?《3》
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心臓疾患の告知は誤診だった? マーラーの心臓疾患については、村井翔著『マーラー』(音楽之友社)で興味深い指摘があります。アルマの回想記によれば、一九〇七年七月、医師がマーラーに告知した病名は「先天性の両側の弁膜の障害」でした。これにより、マーラーは登山や水泳などの激しい運動を禁止されます。
心臓は体中に血液を送り出すポンプの役割をする臓器で、右心房・右心室・左心房・左心室の四つの空間に分かれています。血液が逆流しないように、心室と心房の間には弁があります