見出し画像

お金と仲良くなる

 ぼくはこれまでで、フリーランス2年と、会社を5年ほどやっています。大学時代の個人事業と、友人と始めた会社(正直ぼくは経営周りは全然やってなかったんですが…)を合わせると、計10年ほど自分(たち)で始めた活動で生きてきました。就職したことがないので、社会人経験の全てが野戦みたいな状態になってしまっています。他の人が当たり前に出来るようなことが、自分にはなぜかうまく出来なくて、生きるのが苦しくて、色々なこと(その主たる例が就職)から逃げて、逃げて、逃げまくって、そうしたら最後には自分で生きていくことしか選択肢がなかったんです。客観的に見ると、とてもかっこわるい。

 そして、この10年の野戦の中でトラウマになるような体験の近くには、いつもお金がいました。ぼくはお金に関して、ずっと昔からとてつもなくズボラで無頓着でした。母子家庭なので裕福ではなかったはずなのですが、家庭ではお金の話はタブーになっていて、ぼくが家で家計の話を耳にすることは1度もなかったような気がします。今考えてみると、お金について心配せずに生きてほしいという母親の考え方だったのだと思います。そういった家庭環境のおかげで、お金に関してとてつもなくズボラな自分がスクスクと育ちました。その分、お金で将来のことが不安になったりすることが他の人よりも少なかったりする気がします。でもそれと同じ分、お金に関して本当にたくさんの間違いをして、苦労したり、悩んだり、助けてもらったりしてきました。

 その度に毎度大反省をしながら、少しずつ、お金との付き合い方について考えて、実践するようにしてきました。お金に関連する本をたくさん読んだり、お金を管理するための自分なりの道具をせっせとこしらえてきました。10年ほど続けてみて段々と、それまでは不穏の対象でしかなかったお金と、仲良く付き合えていると感じるようになってきました。それまでは目の敵であり、いつもぼくを不安にしたり悩ませてくるあの憎きお金が、段々とぼくを助けてくれたり、自由にさせてくれる旧友のような存在になってきました。お金に関する不安が小さくなって、お金に安心する感覚が大きくなってくると、自分の本当にやりたかった大切なことに、さらに集中していくことができると感じています。お金は、自分を安心させてくれるだけでなく、時には直接つくることを助けてさえくれる存在!なんとありがたい。そんなふうにして、お金との付き合い方が変わってきました。

 先日、友人とお茶に行き、仕事の話になりました。その友人は長く自分でも制作活動をしており、その活動の幅を拡げていく機会として会社をつくるという話をしてくれました。会社をつくるにあたって、お金の話になりました。お金について、案外たくさんの人が、他の人には言いづらいような、とても個人的な出来事や、それによる不安さを抱えているんだなと思いました。ぼくもそんなことだらけだったし、今でもそういうことと向き合い続けています。

 きっとみんな、お金との付き合いは一生続くんだと思います。貨幣は形を変えながら、人間の歴史のかなり古い段階からすでに生まれ、進化してきました。歴史上「貨幣」が最初に確認されているのは、紀元前2000年頃らしいです。「貨幣」は価値の媒体になっているわけですが、価値の交換自体はもっともっと前から行われていたはずです。じゃがいもと肉を交換したり、塩と油を交換したりと、人間は生きていくために価値の交換をしてきたはずです。「貨幣」は、それを円滑にする発明だったんだと思います。そんな大昔から人間は価値を交換し、貨幣を使ってきたのであれば、人間がお金から逃れることは不可能だと思えてきます。多分、これからずっと付き合っていく必要があるんだろうなぁ、と。ぼくたちが考えられることは、お金から解放されることではなく、お金との付き合い方をよりよくし続けていくことなんじゃないか、と思います。お金は黒魔術にもなるし、白魔術にもなる。そのどちらの魔法として発動するかを決めているのは、紛れもなく人間なんだ、と思いました。

 新しく会社を始める友人とお金について話している流れで、ぼくが身につけてきたやり方を友人に教えながら、一緒に実践していく会を定期的にやることになりました。ぼくからそういう会をしようと提案してみたのでした。というのも、1年ほど前から、お金との付き合い方について考えて、実践する会をパートナーと毎月やっていたこともあり、これを他の人ともやってみたいと思っていたのでした。その時間では、ぼくがこれまで身につけてきたやり方を教えながら、毎月一度2時間くらい、お金の締め作業と、新しいことを毎月一緒に試していくという内容でした。半年ほどお金と仲良くなる会を続けていたある日、パートナーに「これ、すごく価値があるよ。お金に関する不安がどんどんとなくなって、今ではお金と向き合うのが楽しくさえなってきてる。」とぼくに言ってくれました。ぼくがこれまで考えて、やってきたことにも、もしかしたら他の人にとって価値になったりする部分があるのかもしれない、と感じた出来事でした。そこから漠然と、他の人ともお金について一緒に考えていく機会をつくってみたい、と思うようになっていたのでした。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?