地域アセスメント

福祉の世界では「地域包括(ケア・支援)システム」なるものがこの7,8年コンセプトとして席巻している感があり、いろいろなところで、それに派生したものが語られることが多い。
気をつけたいのは、内容をみると実はそれはあまり目新しいことではなく、2000年の改正(介護保険施行)からはじまった大きな変革の仕組みの流れの中で、当然出てくるいろいろな課題や制度システムの成熟性を考えると目新しさがそれほどあるわけではない。

現実的に、旧然は「施設か在宅か(もしくは地域か)」という、もともと「病院で入院して治療を行い続けるのか、それとも、在宅で訪問をベースにして治療を行うのか」という二項選択/対立論が、介護(福祉)の分野で構図として取り入れられてきた流れがあり、専門的なリソースをトータルに提供しようとすれば、【多職種】支援の展開になってくる。ある種の必然性をもってきた。
病院や貧困者救済を主目的に建てられてきた老人ホームが、高齢(化)社会が進むにしたがって絶対数が足りなくなって、というのが特にこの10年顕著になり、それこそ、介護保険の大命題の一つであった「サービス」の開発が進んだ。その中で「施設か在宅か」という二択議論はずいぶんと後退した。ハーフウェイなサービスが多く登場しその議論にもあまり意味がなくなってきているエリアも増えた。

ところが背景で進んでいるのは市場化で起こる偏重であり、その偏重に基づく財源不足である。2010年代、国は繰り返し、その危機感を訴え、あらためての予防や自助、そして、彼らがインフォーマルとよぶ制度外の「チイキ」での支援や相互扶助が声高に訴えられ続けている。

そもそも家族機能や地域の共同体的な機能は前提とした時代のものではすでにない。つまり、いま、地理的な意味での「地域」ではなく、【地域】を地域包括ケアシステムなどで語れることはほぼなく、逆に、福祉などの視点で、改めて、近接した人のあつまりを集団化したり、コミュニティ化していく、つまりコミュニティ・ディフェンスしていくことを仕掛けていくというように移ってきている。
 たとえば、その後、国の資料などでも繰り返し引用されたり活用されているこの著書も顕著である。


地域福祉援助とは「個を地域でささえる援助」と「個を支える地域をつくる援助」(「地域福祉援助をつかむ」岩間伸之・原田正樹著 有斐閣 2012)

その必要性を前提にせざるを得ないとしても、私たちの暮らしには、そういう視点だけではなく、もっと多様で合理的かつ非合理的な行動も組み合わせながらおこっている事象がある。

今年度最後になる来週の「ソーシャルワークアカデミー」ではそんなことを含めてお話をしてみたい。
「本人と地域をどう結びつけるか 地域アセスメントの考え方」


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