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ほぼ日で#マーケティングトレース

こんにちは。ウェブデザイナー転職を目指しているとったすです。

今中小企業さんのホームページを作らせてもらっているのですが、打ち合わせを重ねていくなかで「どうすれば新しいお客さんとの接点を増やせるか?」という課題に集約されていくなと感じるようになりました。

そこで、マーケティングの勉強を始めようと思って調べていると、黒澤友貴さんの著書『マーケティング思考力トレーニング』に出会いました。

ただ本を読んでいてもアプトプットしないと身につかないだろうなと思っていた私にとってマーケティングトレースというアウトプット方法は着手しやすくて強く惹かれました。

また、初心者でもはじめやすいようにトレース用のフォーマットも用意してくれています。↓↓

早速こちらを使いマーケティングトレースをやってみました。

株式会社ほぼ日さんをマーケティングトレース

初回ということで、私の"好き"を第一に『株式会社ほぼ日』さんをマーケティングトレースしました。

株式会社ほぼ日さんはウェブコンテンツ『ほぼ日刊イトイ新聞』を制作運営されている会社で糸井重里さんが社長をつとめています。

私もかれこれ3年ほど読ませていただいているのですが、

「優秀になりたければこれをしろ」とか「アフターコロナで世界は変わる」とかそういう自己啓発よりなコンテンツや書籍が世間に溢れて食傷気味になるなかで、

ほぼ日さんは世間一般に言われているステレオタイプ的なものにたいして「ちょっと違うんじゃない?」という視点や「いろんな人と生き方があるよ」という肩の力が抜けたコンテンツを日々提供してくれているように感じています。

私自身、ほぼ日さんのコンテンツに元気付けられたり、「視野が狭くなってたな」と新たな気付きを得たり毎日楽しく読ませていただいています。

これだけ人に共感や好感を得ること自体難しいと思うのですが、ほぼ日さんは着々と売上高を伸ばし2017年に東証ジャスダックに上場しました。

ウェブコンテンツ として読み手を喜ばせつつ、商売として成長させているそのメカニズムをファンの一人として調べたい。そう思いトレースをはじめました。

株式会社ほぼ日の基本情報

ほぼ日さんの社是は「夢に手足を」です。

ただ夢を見る、語るだけでなくて、その夢に手足をつけることで実現に向けてあゆみを進めていく。また他の人と手を取り合うことができるようになる。そのような考えを持っています。

行動指針は「やさしく、つよく、おもしろく。」互いに協力しあえる優しさと、企画やアイデアを実現させられる強さ、そして人を引きつけるコンテンツを生み出せるだけのおもしろさ。この三つを行動指針とされています。

CFOの篠田さんはほぼ日を説明するときには「株式会社ほぼ日は、人々が集う『場』をつくり、『いい時間』を提供するコンテンツを企画・編集・制作・販売する会社です」。と説明されるそうで、この表現にほぼ日さんのスタンスが端的に表現されていると感じます。

①市場環境分析(PEST分析)

社会的にもインターネットの普及率が80%と高まるなかで、政府は世界最先端デジタル国家創造宣言(ホンマかいな)をして、総務省がインターネット投票に着手したりするなど、政府としても情報を総デジタルに切り替えていく動きを進めています。

やはりデジタル化の波は国家規模に波及していますね。

その一方でGAFAを筆頭とするIT最大手の資本集中に伴うイギリスのデジタル税の導入や、ネット広告の不透明な状況による開示請求など、「偏りがなく真面目なインターネット」が求められているようです。

人の面で見ていくと日本の非正規雇用者は40%にのぼり、所得の中央値も95年をピークに現在は2割以上も減少していることが分かります。

所得の減少に加え、オンラインテクノロジーの発展の影響でSNS経由で直接会ったことのない人どうしの交流が増えたり、ものを所有せずシェアするライフスタイルに変化してきました。

対面せずに信頼性を高めていくモデルが主流になるということは、信頼の根拠がテキストベースになることであり、ものを所有するより誰かと思いを分け合い、共感することに重きをおく考え方にシフトしてきたことがうかがえます。

②競合の定義(5Forces分析)

ほぼ日刊イトイ新聞はウェブメディアなので、ウェブメディアで検索をかけたのですが、

だいたい出てくるのはNewsPicsやグノシーなどのニュース系記事か、業界別のハウツーもののブログ集でその一覧に「ほぼ日」が出てこないのです。

SPEEDAの業界分析で確認すると、競合として並ぶのはコクヨや大塚商会などの文房具、オフィス関連のメーカーなのです。

確かにほぼ日さんの収益の6割はほぼ日手帳ではあるのですが、ダイレクトでバッティングはしてないなと。。

情報メディアというより大きな括りで考えれば、電子書籍や動画サイト、テレビなどのマスメディアかなと思います。

「直接バッティングする会社がいないビジネスモデル」こそほぼ日さんの強みではないでしょうか。

③ターゲティング

先に申し上げると、ほぼ日は年齢や性別などでターゲットを設定していないんです。それだと掲げている会社のあり方に反してしまうので。

今一度、CFOの篠田さんの言葉を繰り返すと

「株式会社ほぼ日は、人々が集う『場』をつくり、『いい時間』を提供するコンテンツを企画・編集・制作・販売する会社です」

なんです。

人々が集う場に、この世代のこういった性格の人だけきて欲しいでは本末転倒で、さまざまなコンテンツを生み出してストックしていくことで、多様なお客様が集まる。

銀座通りのような、老若男女様々な人がおのおの違う目的や期待を持ってその通りを行き来する。そんな場をインターネット上で構築していることがほぼ日さんの面白いところです。

さらに面白いことがあって、ほぼ日のページビューの2割から3割くらいが、一週間前より昔に更新しているコンテンツらしいのです。

SNSやブログ、ニュースサイトでもそうですが、新しいコンテンツが公開されると古いものはどんどん後ろに流されて行し、わざわざ遡って見ることってなかなかないと思います。

これは私の実体験としてなのですが、ほぼ日は対談系のコンテンツが多くて「あ、この人の話すごく魅力的だな」って思うとサイト内でその人の名前を検索するんです。

そしたらコンテンツの蓄積がものすごく厚いので、関連コンテンツがたくさん出てきて、そこからまた面白い人やネタが見つり、さらに調べるという流れを繰り返してしまいます。

これは、ほぼ日のコンテンツが生き方や考え方など普遍的なテーマを扱ってることが多いからじゃないかなと思います。その時々のニーズや話題を敏感に嗅ぎ取ってコンテンツにあげるニュースメディアと大きく違うところだと思います。

ここまでいうと「じゃあこのターゲット設定なんやねん」てなるんですが、とりあえずの仮定というか考えることは必要だよな、と思い作りました。メイン層を40〜60代にしているのは、糸井さんをコピーライターとして強く認知していて、かつインターネットも扱える世代としてほぼ日が始まった98年に20から40代くらいだった人がユーザーとしては根強いんじゃないかなと思い設定してます。

あとはコンテンツの内容が作家やスポーツ選手など幅広いので興味に偏りがなく好奇心が強いことがあるかと思います。

あとは「俺は出世してやる」とか「成功者だ」みたいなゴリゴリした人は読まないだろうな、ちょっと世俗から一歩引いた感じの人が読み手としては多い気がします。

④ほぼ日のポジションマップ

ほぼ日刊イトイ新聞のコンテンツは著名人やいろいろな職業の人の生き方や考え方など流行に左右されない普遍的な内容が多く、アートから自然、地域情報や歴史など幅広い分野のコンテンツを揃えています。そのため、過去のコンテンツを読んでも古さを感じることなく楽しむことができます。「ランダム」という過去の記事をシャッフルして読むことのできる機能もほぼ日のコンテンツならではの楽しみ方ですね。

ネットニュースや新聞、個人ブログなどは情報の鮮度が最優先事項のコンテンツで競合することはありませんし、電子書籍は専門書のようなある分野で普遍的な内容を含むコンテンツも多いですが、専門性に特化するものが多く読者層もある程度絞られてきます。

普遍性のある情報を提供しながらも、幅広いジャンルのコンテンツを揃えるほぼ日は他のデジタルメディアとは異なる特性を持っていることがわかります。

⑤マーケティングミックス(4P分析)

ほぼ日さんの売上の6割は「ほぼ日手帳」というオリジナルブランドの手帳が占めています。その価格はベーシックなセットでも3,500円します。

だいたい手帳の相場は1,000円〜1,500円くらいだと思うので、ほぼ日手帳は比較的高めの価格設定です。

それでもほぼ日手帳が人気を博している一番のカギはプロモーションにあると思います。

ほぼ日刊イトイ新聞が『いい時間』を提供するコンテンツとして共感者やファンの獲得に大きく貢献し、コンテンツを通じてユーザーの信頼を得ることにより、手帳という一見アナログな商品を高価格で買ってもらうことに成功しているのだと考えます。

また、時代のニーズに合った商品をそろえるLOFTでの店頭販売により、アンテナ感度の高い顧客への認知拡大や「生活のたのしみ展」などオフラインのイベントを通じて、ファンコミュニティの結束力を高め、リピーターの増加につなげていることなど、オンラインとオフライン両方のプロモーションが営業利益率12.5%という消費財小売業としては非常に高い利益率を実現することにつながっています。

⑥自分がその企業のCMOだったら?

ほぼ日さんの強みは普遍性が高く、中身の濃いコンテンツであり、それを実現する乗組員さん(ほぼ日さんでは社員のことを乗組員と呼びます)のインタビュー力、編集力にあると思います。

そうした強みを生かしつつ、より広いファン獲得に向けて、

『戦中、戦後を生きた人の「楽しみ」「生きがい」をインタビュー』するコンテンツ制作を行います。

戦争に関する記事は「繰り返してはいけない」という目的から不幸な面がピックアップされる記事が多いと感じます。

一方でほぼ日さんの強みは、ステレオタイプに対し「それは本当ですか?」と新たな視点を与えられる点であると思うので、当時の「楽しみ」「生きがい」に焦点を当てることで、困難な時代の希望を見出す知恵を学ぶという普遍的かつ違った切り口でコンテンツを作ります。

現状、コロナ下で希望を見失いかけている人に対し、明るい気付きを提供し、在宅で時間のできた人達から新たなファンを増やします。

⑦ほぼ日のマーケティングトレースからの学び

1.競合分析により正面から戦わないポジショニングにつく重要性

2.競合が必ずしも同じ業界にいないということ

3.ウェブコンテンツ という類似媒体でも普遍性という基本コンセプトの設定でウェブの強みである「ストック」を有効活用できるということ


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