暴力リリー

終点のバス停で降りると

青と白のしましまTシャツの少女が

大きいでしょうと

ダルマアルマジロのはく製を売りつけようとしてくる

横にいる男の子はパーカーで

弟だろうかガムをかんでいる

終点といっても掘立小屋があるだけで

ふたりのむこうに海が見える

まとまわつく女の子をほどこうとするが

なかなかすばやいししつこいしあせくさく

ザャザャギャッギョと叫びながら

Tシャツには赤いしみがあってその色はたぶん血の色で

男の子の目のまわりにはあざがある

スヌーピーの下着だからといったって

平和について語ったことなどないから

女の子のこめかみのうえ

急所のすこし下を殴ったら

弟も巻き込んで正確に二回転して倒れた

ふたりが死んでいないことを確認して

写真をとって暑中見舞いにつかうのだ

掘立小屋の裏から海辺に進んでいった

ここの砂浜には野生のオオヒメアリジゴクがいて

この種は成虫にならず幼虫のまま交尾もせず

寿命は分かっていない

それなら幼虫が成虫よね

条例

女性はオオヒメアリジゴク(以下アリジゴク)を観察する際

四つんばいになっても構わないって

(こんなこと言われなくてもそうするのがいちばん素敵)

まず真上から円をみてπって円より美しいかしら

どんどん円の中心に顔を近づけ舌をのばして

条例

観察者はアリジゴクと三センチ以上離れなければならない

私たちが受粉するかもしれないからかしら

そのほかニシキアリ以外のえさは禁じされていて

目の前の娘の太腿にスカートから歯形がちらほら見える

見えたわ

毛むくじゃらで毛が競輪のオッズ表みたいにちらちらしていた

美しくはないけど

そうね 彼は怒っていたわ 見えるのよねときどき

彼女の次にアリジゴクを見てみよう 怒るわけがない

なみうちぎわは

鳥がとじこめられたペットボトル

鳥があしらわれたうじがみさま

少年のさめ

少女のしゃち

条例

さめ、ふか、くじらのたぐいは産業廃棄物とする

怒るんだってさ

思い出し笑いをおしころして拳を繰り出すと

花になるようだ

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