だれかの童話
伝記を書こうとすると
思いだす風景がある
住宅地に池がある
街灯で照らされている
ゆっくり話す女は少なく
池の主はいないわよ
咲いているつつじに蜜蜂は
くるのだろうか
蜜蜂に刺された
母が育てていたばらのなか
下唇を刺して蜂は死んだから
ずっと呪文は四捨五入中である
むかし落とし穴を掘りながら思いついた
ある青年が洋館に招かれて
少年の家庭教師を頼まれる
「あなたの役目はですね」
無人駅で下りた姉と同じ
タマゴサンドイッチをかじる
少女はあくびをした
「あの子は実はキツネなのです。
そのことをね
気付かせないようにするのですよ」
メキシコで買った蝶の模型を
デッサンする
昼のように笑うのだ
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