むかしの詩
◇さざなみ
午後の宝石に少女はくるまれ身ごもる
ウルトラグリーンの斜面に
秋の最後の虫の声の
ささやかなひび
塔の客はまだ
来ない
◇分裂地帯
夏の夜は子どもの時間
眠りの奥の細胞分裂は
かすかにきしむ虫の声
女たちはオセロを休み
小さくあくびする
(観察は慎重に…)
現れては消え
浮かんでは沈む
みんなが何度も場所を
変えながら
短い執行猶予を
楽しんでいる
◇ノスタルジア
プールの横で小さな骨が見つかった日
(周辺はたちまち教師に封鎖される)
夕暮れの
放課後の
失恋を
円盤に
見られた
◇不眠症
僕の人魚が
記憶の骨を
探す
折りたたんだ
白に失くした
歌声
多面体の
青に隠れた
毒薬
(あ…)
彼女はいつも
つい封印に
触れたがるから
水たちは朝まで
乱反射する
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