マイ・フェイバリット・シングス① UMAについて

よく本がなくなります。貸したら返ってこなかったり、親に捨てられたり、とがっかりすることが大半ですが、本当に消えてしまうように見つからなくなった本も多いです。探しても見つかりません。

そんなときはこう思います。「本は共食いするのだ」。毎日新聞のコラム「余禄」に「ソックスが片方なくなるのは、共食いするからだ」という文章(の引用。たぶん…)が記憶に残っているからです。 

前置きが長くなりました。しょっちゅう本が消えてしまう自分にとって、高校生の時から持ち続け、数十年たったいまでも、むしょうに読みたくなる本があります。「幻の動物たち」(上下巻、ハヤカワ文庫)です。作者は動物学に造詣が深いフランスの文筆家、ジャン=ジャック・バルロワ。 

この本を書店で手にし、購入したときの興奮をいまでも覚えています。友達とゲームセンターに行く途中でした。友達にお金を借りて買いました。

未知動物学、つまり古今東西のUMA(未確認生物)がつぎつぎと紹介されていきます。実在するのか分からない市井の人々の談話は信ぴょう性はともかく、楽しい。 

ネッシーやモケレ・ムベムベなど湖や沼の怪物はだいたい知っていました。川口浩探検隊も大好きでしたし。ただ、オーストラリアのオオトカゲ、フロリダ沖の巨大ダコの情報はこの本で知りました。 

上巻は主に魚類、爬虫類(恐竜?)、頭足類など淡水や海に潜む“ジャイアンツ”を取り上げ、下巻は哺乳類(類人猿含む)、人里近くで観察された不思議な生物を扱っています。 

やはり、上巻が圧倒的に楽しい。UMAは怪物です。でかくて強くて人を襲わなくちゃね。だからツチノコはあまり好きじゃない。下巻もいいのですが、ヨーロッパ各地で起きた「野獣」事件の話はちょっとつらく、悲しいです。 

幻の動物も、科学の進化、情報社会の発達で、もう幻じゃなくなってきています。証言者のうそがばれた生き物もいるし。もちろん、一読したときから、うそくさいな―と思う話はありましたよ。でも、自分にとって最初に「虚実混交」の面白さを教えてくれたのはこの本です。断言できます。

そうそう新聞だって虚実混交ですよ。「フィリピンの巨大ワニを探しに、大学の探検隊が出発」「ニュージーランドで長年、食べられてきた生物が、古生代の甲殻類だった」なんて記事、読みましたよ。あれ妄想だったのかな? その後の情報はなかったからな~。 

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