一穂ミチ『スモールワールズ』感想

 Amazon prime Audible で一穂ミチ『スモールワールズ』を聴いた。作品が前から気になっていたのと、短編連作なので聴きやすそうで選んだ。

https://amzn.asia/d/ceSeoga

 6作通して一番好きなのは『魔王の帰還』だ。再出発につながっている終わり方が良い。

良かったところ

 まず、文章が特徴的だと思った。日常の出来事によって動く登場人物の内面を、心の奥深く、感情の起伏の一つ一つの凹凸をなぞって詳細に描写する。私たち読者は物語が進むにつれ、登場人物に自然と寄り添っていくことになる。とても繊細だと思った。

 あと、物語が全て、一般の平凡な人たちを主人公にして、ありふれた日常の中で起きた物語を綴っている。わたしの住む町の一つ一つの家の中で、優しくて激しいドラマが起きているということを想像させる。あるいは隣人が、ドラマの主人公なのかもしれない。

苦手なところ

 6作ともに、作品の中で起きる事件が劇的すぎる点に引っかかってしまった。普通の人が親しい人の死や事故、暴力に巻き込まれすぎである。そういうものは実は私たちからすごく近いところにいて、気がついた時には渦中の人となっているということなのかもしれないが、6作通して続くと不自然に思えてしまった。

追記)
 「愛を適量」には、死や命に係わる事故は出てきませんでした。
6作ともに、の表記は勘違いでした。すみません。
 ただ、上記で書いた感覚は、自分の中では変わらないです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?