不登校先生 (7)
「私が前、病んでしまった時にかかりつけになったお医者さんなら診てもらえるかもしれないよ。」
先月まで働いていた職場の学校で、仲良くしてくれた同僚からの紹介で、
その病院に電話をかけると、今までとは違う返事が返ってきた。
「初診ですね。でしたら、保険証をお持ちになってこられてください。うちは予約制ではないのですが、初診の時は医院長先生の診断になりますので、月曜から木曜日の、午前か午後に来られてください。」
診てもらえる、週明けの月曜日だけど、診てもらえる。
近づいてきているように感じていた、絶望の足音が止まった。
自分で、まずやらなくてはならない二つのことをクリアできた。
ひとまず、自分の命は守れた。
電話を切って、座り込んだまま。
どれくらい時間がたっただろう。春の夕暮れが、窓から差し込む時間まで、
全く動けずに言葉も出ずに、心の中は空っぽのままで、
でも、確かに、昨日砕け散った心のあった場所に、
気が付くとそっと小さな灯が『ぽっ』と灯されている。
「よく頑張ったね。まだ大丈夫だよ。」
そう、語り掛ける言葉が、心の中に何度も何度も、響いてくる。
「よく頑張ったね。まだ大丈夫だよ。」
真っ暗な中で絶望と恐怖に取り込まれそうになった砕けた心のその場所で、
小さな灯が灯り続けて、守ってくれるように。
「よく頑張ったね、まだ大丈夫だよ。」
灯りの下の、砕け散った無数の僕の心のかけらに、
それを静かに、冷静に見守っている、心の中の僕に、
「よく頑張ったね。まだ大丈夫だよ。」
小さいけど、確かに温かみのあるその声を何度も何度も繰り返し。
そうか・・・・・
今度は自分の力で、自分の意志で。
自分自身を守ることができたんだ。
↓次話
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