大失敗も大成功も味わい尽くそう(4)
順調にご飯を炊いている間にも、あゆ先生が掲示した内容を見ながら、
子ども達は力を合わせて次々と段取りをこなしていく。
焚けたご飯を蒸らしている間に、ほうれん草のおひたしもできたようで、
一品ずつ完成するごとに、嬉しそうな歓声が上がるのが、
こちらも嬉しい気持ちにさせてくれる。
そんな段取りの中で、みそ汁作りも始まっていた。
2班の、はや君、かずくん、かいくんチームは、慎重派の二人からの質問に
かいくんもちょっと困っている様子。
「だから水はどのくらいならいいの?先生たちの分もだから6人分だから、ひとりぶんが120ccで・・・これでいい?」
「俺もいつも大体で作るから、大体でもうまくいくと思うけど。その量でいいんじゃない?」
「え、でも水だいぶ少ないよ。本当にこれでいいのか?かいくん。」
「俺も6人分では作ったことないからわからんけど大丈夫だと思う。」
と、ちょっと分量に困っていたので、寄って行ってアドバイスをした。
「調理実習だからちゃんと量らなきゃ、と思うと、つい分量に心配が行っちゃうよね。みそ汁の時はこうすればいいよ。」
そういうと僕は、準備されていたみそ汁のお椀を一つ取って、
それで6杯とあとお椀半分、鍋に水を注いだ。
「今日はみんなお替りはしないから、お椀6杯分で6人分、あと半分だけ入れたのは、お湯になっていく途中で蒸発する分を考えて、ちょっとだけ多く入れておくといいよ。」
おー、と感心した声を漏らして頷きながら、3人は安心した表情になった。
「じゃあ自分たちでもう一度量る所をやってごらん。」
そういうと、声をそろえてお椀で水を注ぎ始めた。
と、そんなアドバイスを見聞きしていたのが1班の面々、
あんちゃん、まなさん、あま君、そうくんのチームも、
プラス2人分で6人分、2班のやり取りをしっかり聞いていた様子だった。
「お豆腐切るときも、順番に包丁全員ができる様にしようね。」
「わかめを水に戻すのは、あまくんに任せた。」
「いりこのワタを取ろうとしたら粉々になったぁ。」
「そろそろ、あゆ先生から味噌もらってこよう。」
たがいに声を掛け合いながら、みそ汁も順調に仕上がっていく。
そして、どちらの班も初めての味噌漉しでしっかり味噌を溶かして、
わかめと豆腐の味噌汁も完成した。
薬味のねぎの小口切りも、上手く細かくできている。
一度の経験での吸収力が大きいなと改めて感心しながら、
ぼくは仕上げに指示をした。
「味付けの最後は、ちゃんと味見をしなさいね。自分たちで味を確認して、しっかり美味しくできていて完成だよ。」
子ども達はおたまからちょこっとみそ汁と注いで、味を確認する。
うんうんと頷く様子で納得の味になっているのが伝わって・・・ん?
1班の表情がなんだかおかしな表情だ。
「1班はどうした?なんか変な味でもした?」
「先生、僕らの味噌汁、味がしません。」
味がしない?どういう事だろう?僕も味見をさせてもらう。
たしかに、味がない。味噌はちゃんと溶かしている、みそ汁なのに。
正確には味がもう極薄なのだ。これはどういう事だろう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?