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40.コンサル時代のはなし(自治体介入編)

十勝と同じく、『都市再生モデル調査』で国から委託を受け、とある旧産炭地の環境資源の掘り起こしと、新たな観光への取り組みを提案したはなしです。

国からの委託事業でしたが、そのまちの様々な施設を見学させていただく必要があり、市役所を訪ねて本事業の趣旨を説明させていただきました。
まちの各所の見学などは快く承認していただけたのですが、国に報告書を提出する前に見させていただきたいと言われました。
委託者は国であり、そのまちからはお金を全くいただいていません。
従って、報告書を事前にチェックをいただく必要はないのですが、不穏な空気を感じつつもとりあえず「わかりました」と答えました。

そして、ある程度調査を終えて中間報告に行くと、役所の関係者から様々な指示がでました。

炭鉱跡地を観光資源の一つと考え、見学できるような整備をすすめるべきという趣旨の提案をしていたのですが、役所はそれに前向きではありませんでした。
というのも、まちが衰退の一途をたどっている最大の理由は、産炭地のイメージから脱却できていないからだと考えているグループがいて、しかも上役がその筆頭でした。

プロジェクトの目玉として、長崎県の軍艦島(正式名は端島)の出身者で、『軍艦島を世界遺産にする会』(数年後、軍艦島は世界遺産登録されました)の代表であるSさんをお招きしたシンポジウムを企画していました。
シンポジウムではそのまちで炭鉱遺産の活用に積極的なIさんをパネラーとしてお願いしていたのですが、Iさんをパネラーから外すように指示されました。
Iさんをパネラーから外すと、シンポジウムの趣旨も、プロジェクトの趣旨もぼやけてしまうことから、その指示に従わない意向を伝えたところ、役所がシンポジウムの協賛から外れると言われ、告知ポスターを作り直しました。

さらに、某新聞社の地方局の記者から電話が入り、予定していた記事を掲載しない旨の連絡がありました。
どうやら上役から掲載しないよう圧力がかかったようでした。
「役所から圧力があったその事実こそ記事にすべきじゃないんですか!」
と担当者に言いましたが、それは記者個人が決めたことではなく、組織として決めたことのようで、何ともなりませんでした。

シンポジウムには、ヒアリングをさせていただいた多くのまちの方々に参加していただける予定でしたが、当日お見えになったのは数人程度でした。
どうやらこちらにも役所の圧力が働いたようでした。

役所から指示があったのは炭鉱遺産関連だけに留まりませんでした。
品質の高いワインを生産されていることで既に有名だったワイナリーを、報告書から削除するように指示がでました。
「民間企業をまちの観光資源として掲載するのはおかしい」という主張でしたが、農協を飛び出して直販されているワイナリーのオーナーを良く思っていないという本音が見え隠れしていました。

まちを形作った過去の遺産を認めず、未来をつくる新しい取組みも認めず、いったいこのまちをどう方向づけるおつもりなのかと思いました。

委託者は国であり、役所に報告書の中身に口出しする権限はないはずです。
したがって、役所からの指示の大半は無視したのですが、それによってイベントが盛り上がりに欠けるなど、残念な結果になってしまいました。

最後まで自分の考えを貫き、それを社長も支持してくださったのですが、役所の動きをどうすることもできず、無力さを感じた案件でした。


ちなみに、ワイナリーのオーナー夫妻とは今も仲良くさせていただいています。

前職を退職して間もなく、お二人にご挨拶に行った際に、良く来てくれたといろんな話を聞いてくださいました。

結婚披露宴では、オーナーが選んでくださったワイン(白ワインだけどほのかに赤い、ピノブラッシュ)を出させていただいたところ、大変好評でした。

ここ数年は毎年GWあたりに訪ね、ワインのまとめ買いをさせていただいていますが、その際には施設を特別に開放いただき、家族でピクニックをさせていただいています。

山﨑ワイナリー

山﨑ワイナリーのブドウ畑

出会いは人生の宝物です。

(つづく)


次のはなし

41.コンサル時代のはなし(転職決意編)
https://note.com/totoro0129/n/n3e8292017dc8


<0.プロローグと目次>
https://note.com/totoro0129/n/n02a6e2bda09f

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