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51.思い出深いお客様①

生命保険の営業を始めてから、これまで以上に様々な方とお会いできるようになりました。
お客様一人ひとりの出会いが想い出深いものなのですが、特に印象的な方のはなしを紹介します。

平成2014年6月6日、とてもうれしい契約が無事成立しました。
いろいろあったお客様からお預かりした保障です。
クレーム、解約の危機回避、解約、再契約を経験させていただいたお客様です。
何があったのか?


そのお客様とお会いしたのは、営業を始めてから1年経った2008年。
夫婦揃ってお話を伺い、プレゼンテーションもさせていただきました。

ところが、旦那様が仕事柄緊急で呼ばれることが多く、2回、3回と商談を重ねても落ち着いてお話を聞いていただけませんでした。
僕の提案したプランに満足されていた奥様がしびれを切らし、4回目の商談で早々に旦那様のサインと捺印をいただきました。
中身はかなりの高額契約であり、会社からも通常以上の資料と説明を求められました。
その際に支社長に助言もいただき、無事成立しました。


成立して2か月後のある日の夜、旦那様から電話がかかってきます。
「やっぱり納得いかないから解約したい」
大口契約の早期解約ということでかなり慌てました。
翌朝早々に支社長に報告すると、
「ないちん、今からSさんところに行くぞ。
 先方に連絡はいらない。
 手紙と菓子折りを用意しておけ」
支社長はその日の予定をすべてキャンセルし、動揺している僕を助手席に乗せ100km先のお客様のところに同行いただきました。

案の定そのお客様は仕事で不在でしたが、従業員の方に手荷物を預けて札幌に戻ってきました。

翌日、お客様から支社に電話がありました。
明日札幌に行く用事があるから、その足で支社にお邪魔させていただくとのことでした。
そこで支社長はお客様が納得される前に契約を進めたことを詫び、再度僕に説明させていただく機会を与えてくださいました。
その場で納得いただき、解約しないとおっしゃっていただけました。


後日、一人でSさんを訪ねた時にご自宅に案内されました。
奥様もいらっしゃったので、改めて謝罪をさせていただきました。
奥様は、私の方こそすみませんでしたとおっしゃってくださいました。

帰りに手土産をいただいたのですが、その手土産の中にあったのが愛読されていた『上杉鷹山』でした。

上杉鷹山


本書で初めて知った上杉鷹山は、江戸時代屈指の名君だったのですが、Sさんがどんな想いで会社経営をされているのか、どんな想いで人づきあいをされているのかを垣間見れたような気がしました。


1年後、携帯に電話がかかってきました。
「内藤さん、大変申し訳ないが、すべて解約させてほしい
何か理由があるに違いないと伺うと、教えてくださいました。
奥様がお父様の連帯保証人になっていて、多額の借金を背負うことになったのだそうです。
その返済を第一にしたいため、すべて解約したいとのことでした。
すぐに解約手続きをさせていただきました。


解約後はお客様と担当者という間柄ではなくなりましたが、年賀状交換やカレンダーの配布、お忍びでお店にうかがい花を買わせていただいたりしておりました。

2013年8月、約4年ぶりに電話がかかってきました。
「内藤さん、まだ保険やっていますか?」
「はい、おかげ様で続けさせていただいています」
「もう一度保険をお願いしたいんですけど」
「えっ!ほんとですか!!ありがとうございます」


しかし、もともと忙しかったお客様は新たに会社を立ち上げられさらに忙しくなり、お母様がご病気でお見舞いも加わったことでなかなかお会いできませんでした。
ただ、前回のことがあったので焦ってはいけないと自分に言い聞かせ、ゆっくり話を伺える時を待ちました。


そしてついに2014年5月末にその機会を設けていただき、無事契約手続きをさせていただいていました。
その時に、なぜわざわざ僕に連絡をしてくださったのか率直に伺いました。
「クレームを言った時にすぐに支社長と飛んで来くれましたよね。
 あれ大事ですよ。
 それと、解約後も年賀状くださったりしたでしょ。
 お花を買ってくださっていたことも、知っていますよ(笑)
 だから、できるだけ早くに借金を返済して内藤さんから再度契約したいと思っていたんです

新しく会社を立ち上げた際に、保険の代理店もされている顧問税理士から契約を迫られたそうです。
それを断り、わざわざ僕に連絡をいただき契約手続きをしてくださっていました。
本当にありがたいお話でした。


Sさんとはその後も次々と新しい取り組みをされ、事業を拡大されています。
僕がお邪魔するたびにその新規事業の話をしてくださるのですが、そんな先進的な取り組みを北海道の地方の方がやられているのかといつも驚かされます。
次にお会いする時にはどんな話をお聞かせいただけるのか楽しみです。

(つづく)


次のはなし

52.思い出深いお客様②
https://note.com/totoro0129/n/n01676da48369


<0.プロローグと目次>
https://note.com/totoro0129/n/n02a6e2bda09f

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