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『私』は、ここに。

自問自答ファッションに出会ってから、硬く閉じられたときめきの部屋の扉を、小さくノックして来た。トントン(ときめきますか?)、カスカス(ときめかない…かな?)、小さなノックだけれど、この半年間、叩くことはやめなかった。まだ教室の感想noteも書けていないけれど、私が私を取り戻した記録を残して置こうと思う。


教室に行ってから、シン・コンセプトがどんどん進化して止まらなくなっていた。止まらな過ぎて、全くnoteにまとめられない。なんせ書いてる内から進化していくのだ。コンセプトは、次から次へと変わっていくが、コンセプトが私のブレイクスルーアイテムにはならなそうだった。けれど、コンセプトが進化する度に、私は私に戻っていく感覚があった。

コンセプトを考えたり、試着をする度に、硬く閉じられたときめきの部屋の扉を小さくノックして来たが、もっと決定的なノックが欲しかった。
「私に戻る」感覚が欲しい。
ブレイクスルーアイテムは、人それぞれだとあきやさんは仰っていた。靴の人、バックの人はもちろん、最終的に「私に足りないのはファッションではなく、筋肉でした!」となった方もいるらしい。私も視野を広く持っていようと意識していた。

私の場合、ブレイクスルーアイテムはメイクだった。

1月末、Twitterでシュウウエムラのリップはシグネチャーカラーの赤がとても綺麗だと見かけ、興味を引かれてタッチアップに向かった。
想像以上に真っ赤な口紅。
「リップ」というとより「口紅」と言いたくなる圧倒的な赤。子供の頃に憧れた口紅の赤って、こんなだった。そして、つけたときに元気だった頃の自分を思い出した。こんな赤いリップつけてたな。口元だけをみると、とてもロマンティックな気持ちになれる。が、ナチュラルメイクな顔全体に、どうもそぐわない。少し考えたいとお伝えし、名刺を頂いて退店した。その後は、トイレの鏡でマスクを取ってみたり、休憩に入った喫茶店で手鏡を覗いてみたり、口元が気になっていた。顔全体的とは合ってないのに、ワクワクしてる。ときめきの部屋の扉を、確かにノックされている。購入しないまま家に帰り、家の鏡でもチェックする。うん、似合ってる。口元は。

イエベなのかブルベなのか、いまいち分からないけれど、彩度が高めでクリアで、艶があるといいことは分かってる。この口紅はまさに彩度が高めでクリアで艶がある。私の「似合う」の象徴みたいだなと思った。
だが、どうにも全体が違う。口紅だけ真っ赤なナチュラルメイクだって、絶対素敵な筈なのに、私の顔だと違う。

それから、2ヶ月経ち、伊勢丹に行く予定を立て、またあの口紅をつけたいな…と思い始めた。でも、それでまた買わなかったら悪い…シューカウンセラーの予約を入れていたのに、頭の中はメイクのことでいっぱいになってしまった。

そういえば、『顔タイプ』が同じ芸能人のメイクを参考にするといいと聞く…私の顔タイプってどれなんだ?検索するもサッパリ分からない。そもそも、人の顔を覚えるのが苦手な私には向かない作業過ぎた。が、昔とある女優さんに似てる、と次々に言われたことがあったことを思い出す。ショートカットと雰囲気が似てただけな気もするが、私はその方の顔立ちがとても好みだったので、言われる度に嬉しかった。そうだ、あの方のメイクを参考にさせて貰おう!以前はナチュラルヘルシーなイメージだったが、最近は目元の強めな濃い、色っぽいメイクらしい。うんうん、とても好(hao)。いくつか保存し、これをBAさんに見せてアドバイスを貰ってみよう。

当日、まずシュウウエムラへ向かい口紅をつけて貰う。やっぱり欲しいな、と思うも完売していた。アイシャドウも見てもらいたかったが、混んでいたので口紅だけで退店。買えなかったけれど、いま、口元にあの赤があると思うと心が上向いた。

デパコス知識の皆無な私だが、それでも何となくあるブランドイメージで、ここなら求めるシャドウがあるのでは?と目星をつけたブースへ向かう。保存した画像はかなり粗く、見せながら(これ、参考になるのかな…)と不安になったが、「なるほどなるほど。赤みブラウン…だけど青も入ってるかな…そしたらコレと…全体のパールはこれで…」と、次々選んでくれる。凄い…!こんな画像からそんなに分かるのか!
タッチアップの際に、この口紅の赤とのバランスも良くして欲しいと伝えた。この時点で口紅を買うことを決めていたけど、まだ少し、自信がなかった。
メイクをして頂きながら、買っても再現出来なければどうしようもないと、頑張って手順を覚える。出来上がると濃い目元のバッチリメイクの私がいた。いつぶりだろう、こんな濃いメイク…。
求めていた方向性通りなのに、落ち着かない。

そのままをお伝えし、使用品を写真でメモらせて頂き退店した。シューコンシェルジュの予約時間がぼちぼちだったのでトイレへ向かう。

少し離れた鏡から自分を見ると、『私』がいた。

なんだか、懐かしい。
もっと良く見せて!と鏡に近づく。ついさっきまで違和感のあったメイクがしっくり来てる。これは、私だ。元気だった頃の、私の目元だ!
元気だった頃にも、こんな濃いメイクなんてしていない。要は気持ちの問題だと思う。元気なときは、気持ちも明るく体力もあったから、目元にもパワーが溢れていたのだ。

このメイクが、その当時を思い出させた。

鏡から離れるのが惜しい気持ちで、靴売り場に向かう。
試着しながら、鏡を見るのが楽しかった。チェックするのは足元なのに。

(ちなみにシューコンシェルジュの方はとても丁寧で、私の足型は大変難しいことに改めて直面した。足型にピッタリな靴は一足あったのだけれど、今ひとつ心が動かなくて、それを伝えると「急ぎでないなら、お好きなデザインと出会うまで、靴は待った方がいいです。」と言ってくれた。)

靴は見つからないまま終わり、さあ、どうしようか。
メイクのお陰で、元気な時の私を思い出せた。ちょっと自信のなかったシュウウエムラの口紅が、今は自信を持って、心から欲しい!と思えている。撮らせて貰ったメイク品を眺めながら気がつく。おや?私が持ってるアイシャドウパレットの持て余していた色、この締め色に似てるな…?ついでにハイライトに使った色も、手持ちの物の方が馴染みそうだ。そして、タッチアップされながら、私に足りないのはブラシでは?と思いが過ぎったことも思い出した。よし、今日はブラシを買おう!
ブラシだったら、何処を見ようか?アイブローブラシはアディクションを愛用しているけど…うーん。とりあえず視察だ。基本に帰って(?)資生堂から見せて貰おう。

買った✌


見比べるつもりだったのに、求めてた物が一セットになったブラシがあり、他ブランドと見比べようとしてたことも忘れてしまった。(こんな駄目な買い方の典型をするなんて、いかに浮かれていたかがよく分かる)

結果として、買って良かった。

家で手持ちのアイシャドウを使ってメイクしみたが、こんなにアイメイクが楽しいのはいつぶりだろう。綺麗に粉が乗っていき、人工毛に進化を感じた。

元気をなくして目元にパワーが宿らないのなら、メイクで補完してよかったのだ。濃いメイクをする元気もなかったけど、今はもうある。メイクぐらい、出来るようになった。


今日も濃いアイメイクをした。
近所の桜を見に行こうと、いつものユニクロのパンツに、綿麻のリラックスニット着て、MA1型の上着を持ち、数年前必要に迫られて買った300均のキャップを被る。

鏡には『私』がいた。

服に迷い、私がいないとオロオロしていたのに、いつもと変わらない服装で、『私』がいた。


教室に行く前のアンケートで、私はこう提出している。

『鏡を見る度に「"私"が居る!」と感じたいです!私自身を感じられる物を身に着けて、自分でそれらを選べたのだという自信を持ちたいです。落ち込むことがあっても鏡を見れば、その積み上げた自信がちゃんとある、大丈夫、と自分を励ませられる、自分の世界観が見える格好がしたいです。また、これは体調を崩す前の自分の姿でもあります。なので、もしかしたら過去の成功体験にすがっているのかも知れません…。』

『下半身の太さが悩みでコンプレックスなので、下半身をスッキリ見せたいです。ただ、本当のコンプレックスは「元気よく動けない身体」なので、たとえ太さが目立つ服でも、楽しく着られて元気になれるスタイルが見つかったら、それが一番理想です。』



教室から二ヶ月後の今、太ったままでも元気な気持ちになれていて、鏡を見れば、私がいる。新しい服は、買ってない。


自問自答ファッションに出会ってから、たくさん考えて、なくした私らしさを探して迷走していたが、私のブレイクスルーになったものは、目元の強さを取り戻すメイクだった。ときめきの部屋の扉が開く瞬間は、もっとドカン!とした出会いのノックで目が覚めるのかと思っていたが、実際は窓からこっそり覗いてみたら、ちょこんと座っていた…なんだ、いるじゃない。起きてるじゃないの。そんな感じだった。

入浴後、スッピンになっても、メイクが残っている気がする。クレンジングで落とせていないわけではない。他の人から見れば、昨日と同じスッピンだろう。けれど、私にはメイクの残像が残って見える。目元の強さが保たれてるのだ。私の目元は、元気だ。今ならナチュラルメイクに真っ赤な口紅を塗ったって、きっと似合うと思えるだろう。


教室でバックの話になったときに、あきやさんに言われた言葉がある。
「試着はたくさんしてください!で、たくさん試着したあとに、きっとtotonoさんはこのバックに戻ってくると思います。」
演歌は歌ってないし、言い訳魔神も出て来てない、手製の布バック。私は豆鉄砲撃たれた鳩みたいな顔をしていたと思う。

あきやさんには全部分かっていたのかも知れない。
あきやさん、私、靴もバックも服も買わずに自分を取り戻せました。



余談
このnoteを書いてから三回メイクをしたけれど、薄すぎたり、変なところが濃くなり過ぎたり、毎日安定しない。でも、その失敗を楽しめている。失敗を楽しめるって、最高にハッピーだ。

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