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余白を縫うは愛(2024/1/21)

これは育休前、育休中、育休後の2023年8月10日から2024年3月5日に僕が付けていた日記を、振り返りながら、1日分を毎日更新しているものです。(163日目)


 ジーナンの命名刺繍を縫っている。元々はコロナ禍のステイホームの時期にできる趣味をと考え、クロスステッチをはじめた。ワン氏の時は名前と桃太郎を縫ったので、ジーナンは名前と金太郎を縫っている。名前も金太郎も縫い終わり、今はまわりの余白部分を埋めている。余白部分を縫うのは、愛である。
 命名刺繍をしようと考えたきっかけは、父の死であった。父が死んでしばらく経って僕が求めたのは、父が僕の名前を呼ぶ音声や父が書いた僕の名前であった。僕に名前を付けてくれた人が、僕の存在を認めてくれている証拠が欲しかったのだと思う。死ぬと分かっていれば、会話を録音したり手紙を取っておくこともできただろうが、がん告知から1ヶ月たらずでいってしまい、僕の手元にはそういうものは何一つ残っていない。これから手に入ることも、たぶんない。
 だから僕は、今日も余白を縫うのだ。

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