20240611
近しい人の助言を遮り、己の屈折した性格ばかりを肯定して、本当に失礼な人だと思う。反省。今よりも少なからずまともでいられた時を探ると、辿り着くのはいつだって子供時代だ。アナログとデジタルがまだ共存し、綯交ぜだった2000年代。確かに世界は今よりずっと広大で、何もかもが自分の手の中で完結してしまうような時代ではなかった。欲しいものはお店で買わなければならなかったし、友人との連絡手段は教室にしかなかった。そんな現在と過去の往来のなかで、私は数年ぶりにCDを買ったのだった。
ビリー・アイリッシュがアルバムを出すというので、先行シングルがいつ出るのかずっと気になっていたけど、結局何もないままアルバムのリリースを迎えた。Apple Musicで1曲目"SKINNY"を再生するあの瞬間は、買ってきたCDをCDプレーヤーで再生する瞬間との確かな邂逅だった。ああ、そうだった。あの頃は、CDを買って聴くまでの、平たくいうと「ワクワク」した感じが、少なからず私を彩っていたのかもしれない。どんな曲が聴けるのか、ただそれだけに胸を躍らせていた日々は、自らその機会を失くしていただけで、ずっと可能性としてあったのか。人はつくづく大事なものほど忘れてしまう。きっと私に必要なのはそういう具体的な実感なのだ。デジタルを否定するわけじゃなく、無垢でいられたころの原体験を再現することは私をその時代へ連れ戻せるからなのだ。
その出来のよさのあまり、これは手元に置いておくべき名盤だと思い、久しぶりにCDを買った。11曲分のほんの僅かな重量が、いまでもうれしい。