WEBTOON地下労働単価からの脱却
WEBTOON翻訳の相場っていくらぐらいかご存知ですか?
中国語→日本語の場合、1話あたりでの契約か字数での契約かにもよるのですが、だいたい1話あたりの中央値は4,000円前後で最低でも2,500円は下回らない感じになるのではないでしょうか。
しかしこのたびTwitterでのやり取りの中で、この相場範囲を大きく逸脱した金額を提示してくる会社の存在が明らかになりました。2022年7月時点で少なくとも2社確認できています。
ちなみにおいくらかと言いますと
1話あたり500円以下です。
……かくいう私も、一番最初に担当した案件は1話400円のWEBTOON翻訳でした。4コマ漫画の翻訳(※それでも安い)ではありませんよ。32ページ、文字数ギッチギチです。
更なる被害者を生まないために、少し踏み込んで案件発見から担当を降りるまでを振り返っていきたいと思います。
クラウドソーシングサイトで案件発見
こちらの案件ですが、1文字1円以下の案件がごろごろ転がっているクラウドソーシングサイトで発見しました。単価については明記してあったのですが、周りが低単価すぎて特に疑問にも思いませんでした。応募するとすぐにトライアルを受けることになり、提出からそう時間をおかず合格の連絡をいただきました。
そのとき、クラウドソーシングのサイトを介してではなく、直接ZOOMで面接をしたいとの打診がありました。もちろん怪しいなとは思ったのですが、実績ほしさに飛びついてしまったのです。採用されたはずですが、クラウドソーシングのサイトを通して賃金が発生したことは一度もありません。(支払いは直接銀行振込でした)
余談 中国語WEBTOON案件の探し方
クラウドソーシング系よりは翻訳者ディレクトリやIndeedなどの求人サイトからの応募や、Twitterで現役の翻訳者さんが発信している求人情報からコンタクトを取るのがオススメです。特に後者はすぐにお仕事につながる場合が多いです。
求められること
さて話を戻しましょう。
400円で求められたことは下記の通りです。
1週間に20話程度の翻訳。(8,000円)
中国語を一切省いたり漏らしたりすることなく日本語に置き換え。
量は1日に2話だと思えば普通ぐらいだと思いますが、問題は後者です。
中国語翻訳において「何から何まで省くことなく一切を日本語に置き換える」というのはあり得ないことなのですが、それを徹底的に求められていました。
後工程に提出した訳文を削ったりまとめたりする方がいらっしゃったのかも知れません。なんで分けるのかはちょっとよくわからないのですが。
変だと思ったきっかけ
1週間に20話は当時ギリギリのキャパで、他に仕事をする余裕もありませんでした。仮にもっとスピードが上がって納品料を増やしたとしても——1日5話納品でようやく2,000円、それを30日続けても60,000円にしかならないのです。
WEBTOON翻訳専業でやってる人はどうやって生活してるんだろう? とTwitterで検索をかけて出会った記事がこちらです。
言語ペアは異なりますが、相場の範疇は大きく異なることはないはずです。
ここから徹底して図書館で翻訳に関する本を読み漁り、Twitterで翻訳者の方達の生活を追うなどして業界の情報収集を行いました。
単価交渉
もしかしたら先方は相場をご存知ないだけなのではと思い、1日の作業量や相場を説明した上で、それでも破格の1話あたり2,000円を提示してみました。
それに対し、「やはり出せるのは400円ですね」という回答。
やはり翻訳(というより日本語への置き換え)に割ける金額は決まっていて、動かせないようでした。
契約終了
それから話し合いの結果、ちょうどキリの良い話数まで納品を終えていたこともあり、契約終了となりました。
そうなんです、先方もそもそも低い単価で依頼をしているのは理解していらっしゃるので、契約満了まで働けとはおっしゃらなかったです。勇気を出して、キリのいいところで下記のように交渉してみてください。
現状の単価では引き受けられないこと
相場は少なくとも2,500円以上であること
相場価格までは上げてほしいということ
ひとつのタイトルを任された以上、途中で降りるのはあまりにも責任感がないんじゃないか、業界全体から干されるんじゃないか……当時は熱が出るほど悩みました。
おそらく、これらの問いに対する答えはひとつではないと思います。自分で納得した金額なのだから、最後までやりきらなければという方も0ではないでしょう。
もちろん、生きてくことができる単価だったら、最後まで責任を持ってやり遂げていたと思います。ですがこのお仕事を引き受けたままでは生きていけそうにありませんでした。なので話し合いの結果、私は降りることにしたのです。(ちなみに、このタイミングで作業料に関しては全額お支払いいただいています)
終わりに
あれから4ヶ月が経ちましたが、業界から干されることもなく、翻訳者として生活できています。もしいま悩んでいる方がいらっしゃいましたら、少しだけ勇気を出して、まずは行動してみてください。いきなり交渉とはいかなくてもTwitterなどでつぶやいてみるのもいいですね。
一歩踏み出すことで、活路が開けると思います。
それではこの辺で。
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