透明駒の解き方とその手筋(4)

(4)その他の筋

 ここまで書いてきたこと以外にも、頭の片隅に置いておくと便利なことを2つ程ご紹介しましょう。

(4-1)透明バッテリー

 最近のトレンドとして「透明駒によるバッテリー」が挙げられます。早速、作例を見てみましょう。

(J) 上谷直希(詰パラ 12/2019)

協力詰 5手(透明駒3+0)

X、33金合、同X、44玉、55金迄5手。

2手目の33金合から、初手が透明角(馬)による王手だったことが分かります。しかし4手目が44玉なのですから、この金合を取ったのは透明角ではありません。ではこの金を取った駒は一体どこから来たのでしょうか?
 実は、初形で73飛-82(または91)角(馬)という透明駒のバッテリーがあるとすれば、この手順を正当化出来ます(かつ、これ以外にはありません)。つまり、3手目は73飛が33飛生と動いた手だった訳です! でも、何もない空間に透明駒のバッテリーを想像するのは、なかなか難しいですよね。
 ちなみに、同じようでもX、73金合、同Xと進めるのは、透明バッテリーが75香-85飛の可能性があるので不成立。巧く出来ていますね。

 上谷氏はこの透明バッテリーを操る名手で、次のような作品も発表されています。

(K) 上谷直希(WFP 09/2015)

協力自玉詰 4手 (透明駒3+0)

X、33飛合、X、13飛迄4手。

この場合には、どのような透明バッテリーが組まれていたことになりますか? あえて解説はしませんので、各自考えてみて下さい。

(4-2)透明駒の連続着手

 詰将棋において、透明駒の連続着手は何手迄続けることができるのでしょうか? これは興味深い命題ですが、実は既に「241手全てが透明駒の着手」という、途方もない作品が発表されています(馬屋原剛、WFP 08/2020)。こんな大作をここで扱うことはできませんが、もう少し短い手数において、透明駒の着手が連続した場合に分かることを知っておくのは、解図に役立つと思います。
 まず、透明駒は双方とも1枚ずつで、初手からX、X、Xと透明駒の手が3手連続したとします。このとき、考えられるパターンは、次の2つです。

①透明線駒(飛(龍)・角(馬)・香)で王手し、玉方は透明合をし、更に攻方透明駒がそれを取った
②玉から2間離れたところから透明龍で王手し、玉方は透明合をし、更に透明龍が斜めに動いて王手をした(例えば、15玉に対し17龍、16合、26龍のような動き)

 では、同じく透明駒は双方とも1枚ずつで、初形からX、X、X、Xと透明駒の手が4手連続した場合はどうでしょうか。上の2パターンのうち①だと、4手目に玉方はXとはできませんね。よって3手目迄は②のように進行し、4手目は玉方が合駒をした透明駒で透明龍を取ったことが証明されます。
 以上の予備知識を持っていれば、次の作もすんなり理解できる筈です。

           (L)

協力詰 5手(透明駒1+1)

X、X、X、X、18馬迄5手。

4手目を指し終えた局面では26に何か玉方の透明駒がいることになり、それは桂ではありえないので、それが何であれ5手目18馬で確かに詰んでいますね。
 個々の着手からは情報が得られないが、それが連続すると纏まった意味を持つのが面白いと思うのですが、如何でしょうか?

最後に

 タイトルは「透明駒の解き方とその手筋」としましたが、解図のノウハウというよりも、自分が透明駒の創作をするときに念頭においていることを中心に書いてみました。第5回透明駒解答選手権の解図時に、これらのアドバイスがお役に立てば嬉しいですね。
 では、11月3日にお会いしましょう!

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