楽しいレトロプロブレム(22)
(21) Gianni Donati (Thema Danicum 97 01/2000)
白のなくなった駒はP1枚のみ。一方、黒が取られたのはQ1枚だけです。黒Pd6は駒取りをしていませんから、d筋の白Pは直進してからc7で黒Qを取り、c8で成ったことが分かります。黒がf6で取った白駒は何だったのでしょうか?もしc8で成った駒なら、Ceriani-Frolkinということになりますが…。
何はともあれ、序は1.d4 c6 2.d5 Qb6 3.d6 Qc7 4.dxc7 d6とするしかありませんね。
(4.0手目の局面)
この瞬間、白はPc7以外の駒を動かすことになりますから、c8で成Sを作ってb6-d5-f6と持っていくのは手数オーバー。また、c8=Qだと黒Kにチェックをかけてしまうことになり、黒はBxc8と取らざるを得ません。以上より、Ceriani-Frolkinは成立しないことが分かりました。
従ってPronkinということになりますが、c8は白桝ですから黒がf6で取った白駒はBではありません。Sではやはり手数オーバーなので、ここはQしかありません。よって5手目以降は、5.Qd4 Bh3 6.Qf6 exf6 7.c8=Q+ Ke7と進行します。先にQを捨てておけば、黒KはKe7とチェックを躱すことができます。
(7.0手目の局面)
この後はもうお分かりでしょう。8.Qg4 Ke8 9.e3 Se7 10.Qd1 Bc8となって出題図に到達します。白QのPronkinというメインテーマに対し、黒Qのtempo moveと黒BとKのswitchbackが彩を添えています。そして何より、これらが綺麗に溶け合って表現されているところが素晴らしいではありませんか!10.0手という短手数でも、これだけのことが表現できるんですね。
(22) Henry Anthony Adamson
(The Problemist Fairy Chess Supplement 1932)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?