新・透明駒源泉館(レトロ編 解答)

           (1)

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           ばか詰 1手(透明駒 0+1)

22龍迄1手詰。

 出題図で21に玉方透明駒がいるのは明らかだが、22龍と指した後にその透明駒で龍が取られることはないのだろうか?この問に答える為には、レトロ解析をしてみる必要がある。

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           (透明駒は21歩?)

 例えば、21の透明駒が歩だったとしてみよう。現在先手番ということは、直前に後手の着手があった筈。そしてその手は、21歩打しかない。ところがその歩打を戻すと、更にその前の合法な先手の着手がない。つまり、この局面はillegalなのだ。
 すぐに分かるように、逆算が行き詰まる原因は、直前の後手の手が21に駒を打つ手だったことだ。ということは、逆算可能になる為には、直前の後手の手は移動合でなければならない!以上より、直前の後手の手は12角→21であり(勿論21で何か先手の駒(角又は銀)を取っているのだ)、22龍で確かに詰んでいることが証明された。


           (詰め上がり)

2-1(詰め上がり)


          (2)

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           ばか詰 3手(透明駒 0+1)

22飛、13玉、24角迄3手詰。

 初手22飛が指せることから、22が空いていたこと(つまり、11馬で先手玉に王手が掛かっていたこと)と、34か35に玉方透明駒がいることが分かる。しかし、もし35に玉方の透明銀がいたとすると、最終手を取られてしまう。これは本当に詰んでいるのか?

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          (透明駒は35銀?)

 しかし、35に玉方透明銀がいることは有り得ないことが、簡単なレトロ解析で証明できる。出題図において、11馬が先手玉に王手をかけていたことを思い出そう。この王手はどのようにしてかけられたのだろうか?すぐに分かるように、このような王手をかけるには、22にいた玉方透明駒によって開き王手するしかない。すると、34又は35に玉方透明駒がいることと合わせると、出題図に至る後手の着手は22透明桂→34(ここで何か先手駒を取っている)という着手しかない!この透明桂は勿論24への利きを持たないので、確かに作意順で詰んでいることが証明できた。

           (詰め上がり)

2-2(詰め上がり)


 尚、持駒の使用順序を逆にして34角、13玉、14飛?だと、4手目同Xと22透明桂を主張されて逃れ。作意と紛れでいずれも透明駒が桂というところに、対照性と統一性を感じて欲しい。


          (3)

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           ばか詰 3手(透明駒 0+1)

88飛、97玉、87金迄3手詰。

 同様の筋なので、上の(2)が理解できればこちらもすぐに分かる筈。初手88飛は、75に玉方透明駒がいること、そして初形で99馬により先手玉に王手が掛かっていたことを主張している。75にいる玉方透明駒が桂ならば最終手は取られてしまうが、これもまたあり得ないことがレトロ解析により証明できる。

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          (透明駒は75桂?)

 初形で先手玉に王手が掛かっていた場合、99馬による王手はどのようにしてかかったのだろうか?盤面に見えている駒で開き王手は不可能だから、やはり透明駒で開き王手する他ない。つまり、後手は直前に77飛→75飛生と指したのだ!
 以上より、75の透明駒は飛であることが分かったので、作意順で確かに詰んでいることが示された。

           (詰め上がり)

2-3(詰め上がり)


          (4)

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           ばか詰 3手(透明駒 1+0)

X、17玉、27馬迄3手詰。

今度は、今までとは一寸異なったアプローチが必要になる。現在先手番ということは直前の着手は後手によるものだが、それは何だったのだろうか?
玉が動いたとすれば、1手前の玉位置は27か28ということになるが、28なら明らかにillegal(不可能両王手がかかっている)。また27なら、28に先手の透明角または透明桂がいたことになるが、いずれもXが王手にならない。従って、残る手段は28龍→19というものしかない。ところが、それだと先手玉に王手がかかってしまうではないか。
 ここまで考えてやっと、透明駒の位置に関する情報が見えてくる。即ち、この局面が合法であるためには、26か27に先手の透明駒がいなければならないのだ!この透明駒が王手をかけ、2手目に17玉と指せるということは、先手の透明駒は26馬だったということになる。そして、2手目17玉の時点で36に馬がいることが証明されるので、3手目は27馬と表記することが可能になる。

2-4(詰め上がり)

           (詰め上がり)


          (5)

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           ばか詰 3手(透明駒 0+1)

47馬、39玉、29金迄3手詰。

 これも(2),(3)と同様の筋。初手47馬とすることで28か37に玉方透明駒がいることと、初形で49龍は先手玉に王手をかけていたことが分かる。28や37の透明駒で3手目29金を取る手段はいくらでもありそうだが、実際にはそれが不可能であることをレトロ解析で証明しよう。

 もうお分かりだとは思うが、その仕掛けは49龍である。この龍で王手をかけるには透明駒による開き王手しかなく(48玉はillegal)、それは28か37へ移動する手であり、更に先手の初手47馬が合法な着手なのだから、その駒自体は開き王手後も先手玉に王手をかけていない。以上を満たす手は48銀→37銀成しかないことが、すぐに見て取れるだろう。従って、後手は29金を透明駒で取ることはできず、これで詰んでいる。

2-5(詰め上がり)

           (詰め上がり)


          (6)

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           ばか詰 3手(透明駒 0+1)

36玉、38と、X迄3手詰。

 3手目により、初手は先手玉で後手の透明駒を取る手だったことが分かる。しかし、その正体は何だったかお分かりだろうか。これを確定させないと、3手目で確かに詰んでいると宣言することはできない。
 まず、29玉に王手をかけることができたことから、歩・香・桂ではない。では、それ以外の駒で36に置いても不可能局面にならない駒種は何だろうか?順番に考えてみれば、銀・金・角及び小駒成駒だといずれも不可能両王手になることがすぐに分かるだろう。唯一合法なのは飛のみである。つまり、3手目は39飛だったのだ!飛の打ち場所は他にないので、これで確かに詰んでいることが証明された。
 作者としては、36にいた透明駒が厳密に飛であること(つまり、龍でもない)も証明出来ている点が一寸気に入っている。

           (詰め上がり)

2-6(詰め上がり)


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 以上6題、レトロを加えた透明駒入りばか詰の解後感は如何だっただろうか。読者の方々が、通常の詰将棋とは全く異なる「その局面は合法か?」「その直前の手は何だったのか?」というロジカルな局面解析、そして着手が過去の状態に影響を及ぼす奇妙な因果関係を新鮮に受け止めて頂ければ、作者としてこれに優る喜びはない。また源泉館を開催した甲斐があったというものである。
 この拙い作品群がレトロに興味を持って頂くきっかけになってくれたらと願いつつ、今回の作品展の幕引きとしたい。最後までお付き合い下さり、有難うございました!

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