第5回透明駒解答選手権(解答・解説)後編

          6 馬屋原剛+高坂 研(13点)

協力詰 5手(透明駒2+0)

24龍、34金合、同X、44玉、54金迄5手。

☆龍のそっぽ行きに対して2手目は金中合。これを透明駒で取るのですが、その直後に44玉とできるので、取った透明駒は飛ではありません。では、金を取った駒は何なのでしょう?
☆ここで講座にあった「透明バッテリー」(4-J)が思い出せれば、もう解けたも同然。開き王手で34金を取ることができるバッテリーは①56角-57香 ②51飛-52角 ③27角-36香 の3通りありますね。そのいずれであっても、44玉に対して54金で確かに詰んでいます。でも、手掛かりが何もないところで「透明バッテリー」を想像するのはかなり難しかったようで、無解が続出。
☆では、無解者の方々の悲鳴をお聞き下さい。
小泉潔-随分考えたのですが降参です。
相藤ジャンク-攻方の透明駒を1枚は確定できても、そこから+1枚を確定できず、確定できたところで詰む形が見えず……。
さつき-二枚目の透明駒が厄介で降参です。
神在月生-線駒か 遮断駒かや 雲掴み
☆正解者はわずか2名でした。
茶園伸吾-余詰みそう。自分には無理でした。
☆茶園さんでも潰せないなら、殆どコンピュータチェックをパスしたようなものです(笑)。
☆尚、24龍、44金合、同X、43玉、33金だと、27角-36桂のバッテリーの場合に詰んでいません。又、X、52金合、同X、43玉、53金という解答もありましたが、これはもう一枚の透明駒が34桂のとき逃れ。
☆ちなみに、最初は34龍/53玉の配置だったのですが、馬屋原さんに余詰を指摘されました。透明駒の解図訓練になると思いますので、物好きな人は余詰順を探してみて下さいな。

           7 馬屋原剛(15点)

協力詰 5手(透明駒2+2)

65角、44玉、X、43玉、42桂成迄5手。

☆大きく開くこともできるところで、敢えて初手は65角。44に逃げる玉に対し3手目Xとし、玉は更に43に移動します。でも、一寸ヘンですね。初手は52飛で王手をかけていたのですから、54は空いている筈ではなかったのでしょうか?
☆4手目が合法ということは、3手目Xは54への着手だったことになりますね。でも飛は売り切れていますので、この透明駒が直接王手をかけた訳ではありません。つまり3手目は「透明バッテリー」による開き王手だったのです!
☆これに気付けば後は簡単。バッテリーは66桂-77~99角(馬)に限られますから(ここに初手限定の意味が現れている)、4手目に54桂が可視化し、華麗な両王手が決まります。
☆個々の妙手というより、この手順がセットで思い浮かばないと解けないタイプの作で、こちらも無解が続出でした。

たくぼん-最後まで残り1時間近く考えましたが筋さえ見えませんでした。
小泉潔-みただけで降参です。
相藤ジャンク-らしそうな手筋が色々と見える、というより見えてしまうために、思考が散り散りになってしまってさあ大変。
さつき-点数見て逃げましたごめんなさい。

☆講座では「困ったら両王手を狙え」と書いておいたのですが、それでもこれは見えにくいですよね。本作も正解は2名でした。

           8 高坂 研(3点+3点)

協力自玉詰 4手(透明駒0+1)b)46桂→27

a) 47金、同X、49桂、同X迄4手。
b) 69桂、同X、47金、同X迄4手。

☆打って変わって、こちらは実に易しい作。自玉詰にやや抵抗のある方も、これくらいなら取り組んで頂けるのではないでしょうか。4番と並んで、今回最も多くの正解を集めました。
☆殆どの読者にとって説明の必要はないと思いますが、念の為。a)では透明駒が47-49と動くことで飛(龍)であることが、そしてb)では69-47と動くことで透明駒が角(馬)であることが証明されます。

たくぼん-癒し系ですね。ホッとしました。
青木裕一-飛と角の標準的なツイン。
久保紀貴-綺麗な対比で文句なし。
神在月生-縦斜め 繋ぐ軌跡や 飛車と角
藤原俊雅-金の打つ場所は変えてほしかった。
☆師匠の作にこんな難癖つけてくる弟子は、破門にしようかな(笑)。

           9 馬屋原剛(10点)

協力自玉詰 4手(透明駒1+1)

23飛、同X、X、X迄4手。

☆これも客寄せの心算でしたが、半数が無解。5番~7番が解けなかったことで、作者名に恐れをなしてしまったのでしょうか?
☆まず初手に23飛と捨てて、玉方透明駒に取ってもらうのが肝心です。その後、2手目から透明駒の着手を連続することで、2手目に飛を取った玉方透明駒が4手目にも動いたことになりますね。ということは、23にいる透明駒は先手玉に王手をかけていなかったことになり、その駒種は飛か桂に絞られます。しかし桂だと3手目の王手が存在しないので(15・35から22玉へ王手をかけることは不可能)、詰め上がりで13に飛が出現します。3手目は13に透明角(金、銀)を捨てる手だった訳ですね。

相藤ジャンク-収束2手の情報量の納め方が素晴らしく、解答時間中なのに3回ほど並べ直して「スゲェ……」となっていました。
たくぼん-香は呼んで来られないので飛でした。分かりやすい作品。
久保紀貴-てっきり遠打するものかと。
NZ-攻方玉が詰む形が少なかったのでなんとか解けた。
中村雅哉-3手目Xが13に限定できるのに気付くまで時間が掛かった。

           10 高坂 研(15点)

協力自玉詰 6手(透明駒4+0)*余詰

X、28角合、X、46角成、X、24馬迄6手。

☆合駒が直後にアンピンされて移動する、所謂シフマン。通常ならX、46角合、X、24角とするところですが、6段目からだと成れません(当たり前)。そこで、まず28に角合を発生させ、それを46-24と運ぼうという構想でした。
☆つまり、初形で先手の透明駒は例えば34飛、36角、46飛+持駒香で、ここから29香、28角合、27角、46角成、24飛、同馬と進んだという訳です。
☆これも全体像が浮かばない限り解けないので難しいかと思っていたのですが、正解者は9名もいらっしゃいました。お見事です!

金少桂-見えないところでシフマンが行われている!
藤原俊雅-24に来るのは龍か馬しかない。2通りのSchiffmannを考えた。
さつき-詰め上がりでは局面が一意に定まるのが気持ちいいです。
たくぼん-36角の存在は定番の形でした。
久保紀貴-これは傑作。半信半疑半透明だった手順が、突如鮮やかな絵として浮かび上がる快感を味わえる。

☆ただ、残念ながら本作にはX、35飛合、X、56角合、X、15飛までの余詰あり(指摘者は茶園伸吾、吉岡真紀のお二人)。この場合は、先手の透明駒が例えば46香、66飛+持駒角銀で、53角、35飛合、44香、56角合、15銀、同飛と進んだことになります。
☆攻方16歩を追加することで修正したいと思います。

          (修正図)

総評など

相藤ジャンク-難易度=配点という視点で見た時に、配点がしっかり配点の役割を果たしていたと思います。(解いた順番が、結果的にほぼ配点順になった)自分は結局解けずじまいでしたが、6のような簡素形が残っているのは驚き。まだまだ隠れた簡素形はありそうですね(”透明”駒なだけに)。
☆協力系は難易度の感じ方にかなり個人差があるので、配点にも結構気を遣いました。お役に立てて良かったです。
たくぼん-久しぶりに待ち通しいイベントで楽しめました。全解出来なかったのは残念ですがこんなもんでしょう。
藤原俊雅-高坂作は大体易しかったのに対し、馬屋原作は大体難しかった。どうしてでしょうか?
☆特に意図した訳でもないのですが、今回の役割分担では自然にそうなったというだけです。次回は逆に高坂作が難解作かもしれませんよ(笑)。
NAo-考えるのが楽しくてあっという間に2時間すぎてしまいました。残りの問題はこんどゆっくり考えてみます!
金少桂-透明駒解答選手権に初挑戦。挑戦直前に解き方講座で予習した甲斐あって何問か解くことができました!
☆解図講座が役立ったようで、何よりでした。初挑戦で半分以上解けたのは立派です!
神在月生-時経ても 上達なしや めげる吾
☆老いるにつれて自ら世界を狭くしていくベテランが多い中、透明駒に挑戦し続ける氏の姿勢は素晴らしいですね。私もまたそうありたいと思っています。

解答成績発表

 ではお待ちかね、解答成績発表に参りましょう。今回の成績と順位は以下の通りです。

 御覧の通り、10題すべて正解だった茶園さんが、第1回、第3回に続き優勝されました! 「透明駒が解ける柿木将棋」の異名は伊達ではありませんね。何も賞品はありませんが、茶園さんには次回開催まで「透明駒解答王」を名乗る権利が与えられます(笑)。
 尚、吉岡氏は諸事情により解答時間をきちんと計れなかったとのことで、参考記録にして欲しいと本人から申し出がありましたので、そのようにさせて頂きました。しかし氏の答案は10番の作意と余詰を両方指摘した唯一の完全解答で、しっかり時間が確保できていればと惜しまれます。

 出題側からいうと、10題中9題が完全作ということで、第2回のリベンジが果たせてホッとしております(そのときは、余詰3題不詰1題の惨憺たる結果でした)。平均点も52点ほどで、難易度調整も旨くいったようです(出題時には、易しすぎるかと思ったのですが)。参加者数も24名とこれまでの最高を記録し、総合的な評価としても今回の解答競争は成功だったと言って良いのではないでしょうか。

 前回の結果稿で書いたとおり、元々この催しは「透明駒入門」発刊の為に行われていたのですが、今後は本家の詰将棋解答選手権と同様、透明駒という魅力的なフェアリールールの普及を目的とし、透明駒愛好家達の力試しの場としてできる限り続けていきたいと思っております。ではみなさん、第6回透明駒解答選手権でまたお会いしましょう!

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