第7回透明駒解答選手権(解答・解説)前編

 今回の参加者は、全部で13名。前回の16名から更に減少してしまった。原因はいくつか考えられるが、どうも問題の難易度をこちらがきちんと把握できていなかったことが一番のようだ。正直な話、出題者側としてはこれまでで最も易しい10題を選んだ心算だったし、実際に茶園氏は1時間もかからず全題正解されているので、それは大きく間違ってはいなかったと思う。だが一方で、スターターからいきなり無解が続出してしまったことも事実だ。それ以外でも、作品の配列や配点などで解答者のみなさんと我々スタッフの間に感覚のズレがあったことを謙虚に受け止め、次回までにできるだけ改善していきたいと思う。
 それから、一つ変更点がある。かしこという表記は誤解を招く可能性があるという上谷氏の御指摘を受け、今まで「かしこ詰」としていたところは無表記で手数のみとした。今後もこのようにする予定なので、これから手数のみの表記を見たら「要するに、伝統詰将棋に透明駒を導入したものだな」と思って頂きたい。
では早速、解答・解説に入ることにしよう。

           1 高坂 研(7点)

3手(透明駒1+1)

42銀生、同玉、52歩生迄3手。

☆玉が透明になっているのでまずはこれを可視化したいのだが、これが結構難しい。ばか詰ではないので、玉方が抵抗してくるのだ。
☆例えば、31に相手玉がいると思って33飛成としても、同Xとされ「いや、私は34にいましたよ」と主張されてしまう。では11Xと歩を取るのはどうだろうか? これには18歩合とされて19玉を証明され、全く届かない。一番きわどいのが41Xだが、これも52歩合により63玉だったと言われるとやはりダメ。
☆正解は初手42銀生だ。これが王手となるのは31玉の場合しかないので玉が可視化し、これだと先程と違って玉方には抵抗の余地が殆どない。これを玉で取ると52歩生(X=64~97角)までの透かし詰で、歩で取ると11X(=飛)までの駒余り。所謂ODTの構成になっている。
☆尚、42銀成とすると44Xで逃れ。33に攻方透明駒が挟まっていて、43に玉がいたという訳だ。ここで誤解者が数名出た。
springs-2手目同歩の詰まし方が見えなくて苦労した。そのための11歩なのですね。
さつき-不成二連続の手順が面白いです。
太刀岡甫-応手によって飛と角の透かし詰が見える。
ほっと-2手目同歩のときの11Xが見えにくい。
藤原俊雅-23飛が43まで利いてるので成生非限定かと錯覚した。手筋ものの好作。

           2 馬屋原剛(8点)

5手(透明駒1+1)

21金、X、22金、X、14金迄5手。

☆こちらも玉が透明だが、今度は慌てて位置を特定しようとするとかえって失敗する例。初手11金とするとこの瞬間に13玉が出現するが(攻方の透明駒は31角)、以下23玉、34金、32玉と逃げられてしまう。
☆初手は21金が正解。これは透明角を利用した開き王手だが、玉位置が13か33か確定しないので玉は透明のまま。続いて22金とスイッチバックしても、まだ玉位置は決まらない。しかしこれで金にヒモがつき、最後は14金でようやく13に玉が姿を現す。同じようでも、最終手34金ではXとされて逃れ(43玉だったと主張される)。42・44の2枚の香の存在理由は明らかだろう。
茶園伸吾-なんとなく好き。
springs-可視化はさせずに11角or31角の情報を得て、局面は元通り。スマートな表現。
ほっと-頭4手の時点で玉位置が判明しないので結構難しい。
中村雅哉-初手は11金か31金と思い込みかなり悩んだ。
久保紀貴-一見無意味な手続き。構図がうまい。
さつき-金のスイッチバックで紐をつける感触がよかったです。
NZ-金を往復すると形が浮かび上がってくる。
金少桂-初手11金で後手玉を可視化させる紛れに苦しんだ。最後に可視化させることで逃さないのがうまい。
太刀岡甫-玉位置をある程度絞りつつ完全には絞らないというのが不思議な感じ。
藤原俊雅-新たな地点に利きを作らないようにスイッチバック!
永安克志-41から玉に逃げられないように、最後14金とするのですね。
神在月生-四筋に 逃さぬように 要注意

           3 馬屋原剛(5点)

ばか詰 3手(透明駒1+0)

23龍、11玉、X迄3手。

☆初形で22に透明駒があることは明らかで、23龍に対して11玉とすると、それが歩か香であることが判明する。従って最終手Xは21歩成か21香成のいずれかであり、これで詰。これが今回最も易しい問題だった。
藤原俊雅-解答選手権にはこういう作品が必要だと改めて感じました。
永安克志-こういう親切な問題があるのは嬉しい。
神在月生-ばか詰の 先陣飾り おいでやす。
springs-X、22合、同龍で詰みすぎると思ったら31銀成の可能性があった。
☆これが本作唯一の紛れ(流石に引っ掛かった人はいなかったが)。
ほっと-何故か初手がなかなか見えず。
久保紀貴-初形も内容もトップバッター感があるが、かしこを先に並べたということか。
☆そういうことです。
NZ-開き王手と見せかけて。
金少桂-あえて22に歩か香の弱い駒がいたことにするのが意外。
上谷直希-本作が1番易しいか。
太刀岡甫-歩か香という組み合わせは珍しそう。

           4 馬屋原剛(10点)

ばか詰 3手(透明駒1+1)

X、19X、29金迄3手。

☆2手目に19歩を取ったのは当然後手玉なので、初手は49にいた金(か小駒成駒、または馬)が39に寄る手だったことになる。しかし、このまま駒種が不明のままだと3手目の表記はXとなり、28金や38金の可能性が出てくるので詰んでいないことになる。さて、どうしたらよいのだろうか?
☆とりあえず、先手の透明駒は金だったと仮定しよう。すると、初形は以下の様な配置だったことになる。

          (透明駒を可視化した初形)

☆ここからは、簡単なレトロ解析だ。現在先手番ということは、直前に後手の着手があった筈だが、それは何だったのだろうか? すぐ分かるように、それは38玉が29に移動する手以外にない。すると、更にその1手前は49金と打つ手に決まり、同時に49にいる駒が成駒だとillegalということも判明した。これで先手の透明駒が金に確定したので、3手目は駒種を明示して29金と表記することが可能になる。
springs-レトロ解析で49金が打たれていると分かる。「X、39角、X 」が作意っぽくて泥沼に嵌った。
☆この声多数。でも38金、39角、28金では詰んでいない。
NZ-2手目19玉の時点で39金or馬だがレトロ解析で金に決定。
太刀岡甫-合駒ばかり考えていると盲点になる。
神在月生-吾が故郷 駒台に在り 止め金
さつき-レトロ解析により成駒の可能性が排除される巧妙な作品でした。
☆しかし、本作にはX、89合、89Xまでの余詰があった(指摘者はほっとさんのみ)。幸い修正は容易だったので、以下にそれを載せておこう。

           (4の修正図)

ばか詰 3手(透明駒1+1)

☆個人的には、馬屋原さんが「透明駒+レトロ」を手掛けてくれたのが嬉しかった。他のみなさんも、是非レトロを取り入れてみて欲しい。きっと創作の世界が広がりますよ。

           5 馬屋原剛(10点)

ばか詰 5手(透明駒2+2)

13香、22玉、X、11玉、21角成迄5手。

☆玉方の透明駒が2枚もあるので、頭金などでは全然詰まない。しかしこれらの正体を判明させるのは難しそうだ。となれば、詰め上げるには両王手しかない。
☆以上の思考経路から、自分が解図したときにはすんなり作意に入ってしまったので、まさかこれが余詰んでいるとは夢にも思わなかった。余詰順の一例は、13香、12歩、同X、21歩、同角成迄。
☆言われてみればごく普通の手順で、何故これが見えなかったのかと頭を抱えている。作意解はたった2名で、残りは全て余詰解。検討不足をお詫びします。
☆これも作者からの修正図が届いている。もしこの図にも余詰があるようなら、御連絡を。

           (5の修正図)

ばか詰 5手(透明駒2+2)

☆菊田氏の名言「フェアリーにおける余詰の責任は作者にはない」を思い出す。いくら解図力・検討力が低いとはいえ、この余詰は私が見つけておけなければならなかったんだよなあ…。

(明日に続く)

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