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JOSIF KRICHELI傑作選(2)

 第1回WCCT(1972-75)のテーマB2は、「ラインを空ける捨駒を含む#3」というものだった。このテーマは非常な人気を博し、このWCCT以来多くのハイレベルな作品が作られてきた(テーマB1も同じく人気だったが、テーマB1というのは他でもない、かの有名なTura themeである)。このときのWCCTは創作の枠組みを拡大した、言い換えると現代プロブレムの発達において重要で積極的な役割を果たしたのだ。(2)は恐らく、その時期に作られたものである。それはハープピンの独創的な利用法によって、特徴付けられている。それに加え、この作品はロジカルな構造、即ち「正確な」テーマに関するトライを持っている。

(2) Josif Kricheli (Bulletin d’échecs Russe 1973, 3rd HM)

#3 (10+13)

 もし白Qがd5から退くと、2.Sd5#がスレットとなる。しかし例えば1.Qb5?(これは予めb列を塞いでいる)のようなやや弱い手では、1...Qxc4!とされてしまう(2.Qxc4としても2...Rb1で逃れ)。また、1.Qxe4+?も1...Bxe4でダメ。
 1.Qxd4!?はどうだろうか。これは2.Sd5#に加えて2.Bg3#もスレットに持つが、このことはこの推論が作者の意図した方向に進んでいることを示唆している。しかしこれも、1...Qxd4!で詰まない。また1.Qxf7+!? は1...Bxf7! で、1.Qxe5!? は1...Bxe5+!で、それぞれ逃れ。この最後の紛れ筋が、キーを導いてくれる。
 正しい初手は1.Ka8!だ。スレットは2.Qxe5+であり、2...Bxe5 3.Sd5#が狙い筋である。メインラインの受けはどれも、黒のラインピースの利きをe5に届かせるという同質の狙いを持っている。
1...d3 2.Qxe4+! Bxe4+ 3.Sd5# (2.Qxe5? Qxe5!)
1...exf3 2.Qxd4+! Qxd4 3.Sd5# (2.Qxe5+? Rxe5!)

この受けが縦と斜めのエコーになっていること、そしてキーが確かに限定されていることを確認しておこう(1.Ka7?では、1...exf3 2.Qxd4 Qxd4と進んでSb6がピンされてしまう)。
 珍しいハーフピンの扱い方(詰め上がりでピンされている黒駒は、いずれも初形では白Rと黒Kを結ぶライン上になかった駒だ)を高く評価したい。最後に、変化順をもう一つ書いておくことにする。
1...Bf5 2.Qxf7 Bf6 3.Sd5#

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