見出し画像

インドは旅行じゃないよ。冒険だよ。10.インドのスーパーエリート一家とジキジキ少年

僕は、ここカジュラホーに妙に馴染んでしまった。
ドンドン気持ちが落ち着いて行くのを感じた。

6日目の夜、大学を出たばかりのホテルオーナーの息子に会った。
彼は二人兄弟で、兄や父親と同じ弁護士だという。それも国際法弁護士。
日本の法律にも通じ、もちろん日本語はベラベラ。あとは、イギリスとイタリアの法律にも詳しいとか・・・・。
さすがインド・・・奥が深い。

で、そいつに夕食に招待され、車に乗って一路、高級ホテルへ。
星空のレストラン
真っ白なテーブルクロスのかかったテーブルに、容姿端麗な若者二人が先に来て待っていた。

Guten Abend・・・Buona sera・・・Good evening・・・色んな国の言葉が飛び交い、一気に国際的な交流の場所になる。

彼は、僕を紹介するのに、「日本の友だち」と言った後に、ボーイと同じ床に寝ている変な日本人・・・と注釈をつけた・・・。

今、インドの世界が見える若者たちは、カースト制を廃止したいらしい。
そこで、床でボーイと一緒に寝る僕を同士と見なしてくれたようだ。

ただジジィどもが頑なに反対するので、なかなかその牙城を崩せないという。彼らは、それと戦っているようだ。
そんなことをしていては、インドは世界に出ることが出来ない。
だから彼らは、左手でも握手をする・・・・。

彼らは世界の大学に留学しており、先ずは、世界情勢から話題は始まった。
そして次に、彼らは、自称アーティストの僕に興味を持ったらしく、質問攻めにあった。
このテーブルでの公用語は英語で、時々判らない時は、オーナーの息子が通訳してくれた。
でもその殆どを通訳なしで通せたことに僕自身が驚いていた。
話すのは、身振り手振りだったけど。

インド人の英語は、どこか日本人の使う英語と似ていた。
片言のように聞こえるのだ。一音一音がはっきりしている。
ただし、末尾のRだけは特別だ。ランナル(ランナー)、アンサル(アンサー)、ウオタル(ウオーター)・・・これさえ気を付ければ、とても聞きやすい。

何しろ、相手に聞いてもらおうという気持ちが伝わって来る。
白人の、何だこんな英語も判らないのか、という上から目線は感じないで済む。
やっぱり、アジア人、好き。

そして料理・・・目から鱗だった。ほんとーに、美味しい!
特にあのタンドリーチキンが、忘れられないぐらい美味しかった。

宴もたけなわ、ビールと訳の分からない酒で酔いが回った若者たちは、ジョークを言い出した。それもエロジョーク。
紳士な彼らは、妻が全く英語が話せないことに気付いたからだ。
それで調子に乗って・・・。

みんな、腹を抱えて笑った。
特に、イタリアから帰って来たばかりの彼は、イタリア仕込みのエロジョークを飛ばしまくり、僕たちを苦しいほどに笑わせた。

周囲のテーブルから顰蹙(ひんしゅく)を買って追い出されそうなものだが、後で聞くと、その高級ホテルのオーナーの息子が、友達の一人だったという・・・。
スーパーエリートたちの宴に参加するという、特別な夜だった。

妻は・・・ひたすら美味しい料理を食べていた・・・・。

ぐでんぐでんの彼の運転でなんとかホテルに戻った僕は、礼を言ってドアを閉めようとした。が、なかなか閉まらない。
「Mr,Siraisi no no no」彼はドアを全力で思いっ切り閉めた。と言うより、叩きつけた。
ドガッ! 「OK」って(゚∀゚;) 

インド国産の自動車は、最初の内は滅茶苦茶硬い。だから思い切り閉めなければならないと・・・。
僕もやってみた。ほんとーに、全力の全力で閉めないと閉まらないようだ。
ドアが馴染むのに一年・・・鉄板の厚みは日本車の倍以上・・・インド自動車恐るべし。


余りの居心地の良さに、一週間も居座ってしまった。
最終日、ホテルを出ようとすると、入り口近くにあるドミトリー(集団雑魚寝部屋)から何やら怪しい声が。
ドアのない部屋を見ると、ベッドの上で、白人のカップルが朝から・・・
お前たちは犬か!? 恥を知らない白人たち。
それとも、アジア人を人とは見ていないのかも、奴隷のように・・・。

玄関までボーイたちが見送ってくれた。
昨晩、僕がプレゼントした薄い毛布を身にまとって。
涙を浮かべている・・・・。
思わず泣きそうになった。

外に出ると、昨日の彼と、その家族が待っていてくれた。
父親の弁護士オーナー、兄の弁護士、そして国際女性何とかの会長の母親。
ホテル経営は趣味の一家に見送られ、僕たちはホテルを後にした。


村を出ようとする僕たちに、如何にもな悪ガキが話しかけてきた。
いやらしい笑みを浮かべ、手にキーホルダーを持ち、「ジキジキ」って何度も言っている。インドの売春婦のことだ。

キーホルダーを手に取り、小さな穴から覗くと、中には男女の交わりの写真が・・・! 
って、今時、これで歓ぶやつの顔が見たいw

執拗に食い下がる子供。
いくらだ? 100ルピー(800円)・・・・。
インドの高給取りと言われているタクシーの運転手で月給50ルピーだ。(当時)

高いよ・・・80ルピーに負けてやるよ・・・高い・・・50ルピー・・・ケ・・・20ルピー・・・アハハ・・・10ルピー・・・ギャハハ・・・5ルピー・・・・・・もうこれ以上は負けられない、って目に涙・・・・・。

分かった、分かった、買ってやるよ・・・親元に全て盗られないように10ルピー札を二枚渡した。一枚はお前がとっとけよ・・・

ダンニャバード(ヒンズー語でありがとう)
インドで聞いた、最初で最後のありがとうだった・・・。



この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?