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妻と縄 103.被虐願望またはマゾヒズム

年末の慌ただしさは過ぎ、穏やかな年を迎えた。
正月の三が日は、流石に妻へのコンタクトはなかったようだ。
しかし正月明けを待っていたように、またしても男たちが妻に群がった。
いつもより激しい様な気がするのは気のせいか、そうは思っていたが、それは気のせいではなかったようだ。
妻の突き出た腹は、男たちの欲情を誘った。

妊娠7カ月目の妻の腹は、遠目から見てもそれと分かるほど突き出ていた。
勤め先のクリニックではマタニティ用の制服が用意され、妻は臨月まで勤め続けた。
それが院長の性的な欲求を満たす為であることは分かってはいた。
妻から送られてくる写真には、明らかに性交後の写真が多くなっていた。
以前なら口や手だけで果たすことも半分はあったのに。
妻から聞いた話によると、やはり身重の妻は院長の性欲を誘う起爆剤になるらしい。
時々、仕事中でも無人の倉庫やレントゲン室に呼ばれ、犯されることがあるという。
ラインの通知音が鳴るたび、私はドキドキしながらスマホを開いていた。

それだけではない。
今や町内会の集会場は会長と永田、二人と愛し合うラブホと化している。
週に一度は呼び出され、二人とそこで愛し合うというのだ。
もちろん妻はそれを嫌がるはずもない。
それを裏付けるように毎回撮られるビデオの中で、いつも妻は微笑んでいた。
この二人と酒屋の大将を含む三人は、妻にとってはもはや気の合うセックスフレンドのような存在なのだ。
それは私にとっても同じで、行為自体には嫉妬はするものの、三人に対しては敵愾心どころか共鳴することも多く、妻を愛する男の一人として仲間意識さえ芽生え始めていた。
他の男たちより安心して妻を任せられるような気がしていた。

そんなある意味穏やかとも言える私の日常は、ある日、一本の電話によってかき乱された。

縄師だった。
私は一瞬身構えた。
「アハハ・・・そんなに身構えないでくれ。今回は頼みがあって電話した」
珍しい、縄師が頼みごとなんて。
「何ですか?」
縄師はそれには答えず、言った。
「お腹の子供は順調か?」
「はい。順調です」
「大分、腹も出てきたろう?!」
「はい、もう重くって」
「そりゃあいい。また私の所で回されないか?」
「まわ・・・!?!」
私は言葉を詰まらせた。

「知らない男たちに、また回されたくないか?」
一瞬、私の脳裏に輪姦された時のことが思い出された。
「ま、待ってください。こんな身体ですよ!? 誰も相手になんか」
「それがいいっていう男が多いんだよ。妊婦と聞いて飛び付く男は意外と多いんだ」
私は言葉を失った。
妊婦が好きだなんて・・・と、私はあることに気付いた。
そう言えば、院長は元より、週一で会う大将や会長、それに永田の私を見る目が最近、変わってきたような気がする。

「ほ、本当に?!」
「ああ、確実に妊婦マニアはいるぞ。それも相当多い」
私の胸に不安が込み上げる
「心配はいらない。奴らはただ妊婦が好きというだけだ。決して乱暴に扱ったりはしない。それどころか、妊婦に対して畏敬の念を持っている者も多い。神聖視しているんだ」
「神聖視?!」
「そうだ。命の神秘に恐れおののいているんだ。だから子供の心配は一切しなくていい」
「はい・・・・」
「それに、私のモノを傷つける奴は私が許さない」
彼の中では私は既に彼のモノなのだ。それを苦痛とは思わない。
却って歓びと捉えている節が私にはある。

「しかし身重の身だ。無理にとは言わない。気が乗らないなら辞めてもいい。いい子を産んでもらうためには仕方ないからな」
いい子・・・私は彼の言葉に歓びを感じた。

私のお腹の子は6月に行ったキャンプの時に出来た子供だと思う。
その時、二日にわたって競うように犯し続けた男が5人いる。
それがこの子の父親候補なのだ。
縄師はほぼ間違いなく自分が父親と思いこんでいる。
他の男たちもそう思っている筈だ。

「奴らは人妻とやりたいだけなんだ。腹に子供までいる女を犯すことで、人妻を奪っているという実感が湧く。それこそが奴らの求めている究極の目的なのだ。特に全くの素人の妊婦とやれるなんて滅多にない。金をいくら積んででも奴らは来るぞ」
恐らく縄師は大金を得るのだろう。
私を目当てに集まる男たちも、その歪んだ征服欲を満たすために金を出すのだろう。
そして私は・・・縄師の言葉に身体の芯が熱く疼いていた。
男たちが妊娠した私に目の色を変えて押し寄せて来るシーンが浮かんだ。
「ああっ」
熱い溜息がこぼれた。
欲望に限界まで張り詰めたペニスが私を取り囲む。
そして私は彼らの欲望の赴くまま、押し付けられ咥えさせられ犯され続けるのだ。
彼らの精が尽きるまで!
精液まみれになったボロボロの私の姿が浮かんだ。
ああっ・・・妄想の中の私を、私は羨んだ。

私に、縄師の言葉を拒否することは出来ない。
彼の言葉は、いつの時も私を酔わせる。
私の頭を通り抜け、身体の芯に訴えかけるのだ。
それに抗う術を私は知らない。
私の身も心も既に彼のモノなのだ。

その日、私は独りで縄師の待つ会員制クラブ「Corde」に向かった。
相変わらずだだっ広く小さなテーブルとソファーだけが置いてある不愛想な部屋に入った。
ここが私と夫の人生を狂わせた元となった場所だ。
ここで私は生まれて初めて寝取らされたのだ。
それも老齢の腹の出た社長に犯されているところを夫に見られながら何度もイカされたのだ。
あの時の口惜しさ、恥ずかしさ、屈辱は今でも忘れない。
しかし問題は、それだけではなかった。
あの時私は、確かに感じたのだ。
夫に見られながら確かに女としての歓びを感じたのだ。
その日から、私たち夫婦の歪んだ愛が始まった。

思い出すだけで身体が熱くなる。
私は促されるまま、SMの小道具を並べてある控室に入った。

「どうだ? 体調は」
ソファーに座っていた縄師が挨拶もないまま声をかけた。
「お久し振りです。体調は悪くありません」
「そうか。じゃあ、大丈夫だな?」
「はい・・・大丈夫と思います」
私は答えながら、それがどういう意味を指しているのか考えないようにした。
「見たか? やつらを」
「い、いいえ・・・怖くて」
広い部屋を通り過ぎる途中で、男たちが固まって座っていることに気付いた。
彼らが今日のゲストであることは間違いない。
私は恐怖と羞恥にとても真正面から見ることが出来なかったのだ。

「はは・・・そうだろ。奴らは飢えているからなあ。みんな長い間、我慢して溜めて来たらしいぞ」
「え!? 溜めて?!」
「ああ、一番長いのはひと月、出してないそうだ。他の連中も2週間ほど出してないらしい。もうギンギンだろうな。今日は大量の精液を浴びることになるぞ」
そう言って縄師は笑った。
一瞬にして身体中の血が熱く煮えたぎった。
「あはは・・・何を怖がっている? 回されるのが久し振りだからか?」
「いいえ・・・その・・・知らない人たちばっかりで」
「そう言うのは慣れているだろう!? 浮浪者たちに回されたくらいだからな。お前の腹の子があの浮浪者たちの子でないことを祈るよ」
縄師は面白そうに笑った。
冗談じゃない。この子があんな浮浪者たちの子なんて・・・!?!
でも、ないことではない・・・私は青ざめた。

「そんなに心配しないくても大丈夫だろう。期間的に浮浪者を相手にした時は離れているからな。それよりも旦那には言ってきたのか?」
「いいえ、何にも」
「そうか。それでいいんだ。反対するに決まっているからな。気が咎めるなら、後でビデオを見せてやればいい。今日もいつものようにビデオを撮らせるから」

流石に夫には言えなかった。
こんな身体をして・・・、そう言われるのは目に見えていた。
夫に内緒にしてまでも見たかったのだ。
身重の私に男たちが欲望をたぎらせて襲いかかるシーンを。
それを想像するだけで私はもう・・・・。

縄師が私の目を見て促した。
全裸の私は黙ったまま頷く。
ドアが開き、上半身に赤い縄を巻いた私は静かに歩き出した。
今日は腕は固定していない。
お腹を触るだけで安心するからと、縄師が言ったのだ。

胸のドキドキが激しい。
恥ずかしくて、とても前を向いて歩けない。
男たちの熱い視線をまともに受けることが出来ない。
男たちの無言の凝視が、私の身体に纏わりつく。
「ああっ」
思わずため息をついた。
男たちがざわめく。

「お待たせしました。どうでしょう?」
「凄い」
「綺麗だ」
「おお! 素晴らしい」
男たちのざわめく声が聞こえる。
「ほら、顔を上げてこれからお前を可愛がってくれる人たちに見せるんだ」
私は目を瞑ったまま顔を上げた。
「ほら、目を開けてよく見るんだ」
そう言って縄師は私の乳首をつまんで捻り上げた。
「あっ、つっ! ああああ! ごめんなさい!ごめんなさい!」
「甘えてるんじゃないぞ。肉便器のくせに」
その言葉に私の身体は反応した。
私に拒絶する資格はないのだ。
全身から力が抜けた。

「改めて一人ずつ顔を見て挨拶するんだ」
「はい」
私は顔を上げ、左端からソファーに座る男たちを見つめた。

照れて短い髪の頭を撫で愛想笑いを浮かべている老齢の男。
髪は白く、気の弱そうな男だ。
隣は大きい身体に突き出たお腹。
七三に整えられた髪をしたスーツを着たサラリーマン風の男。
大企業の幹部職といった感じだ。

そして次は・・・!
私は驚いて声を上げそうになった。
そこにいたのは、クリニックでよく見る患者だった。
月に1~2度薬をとりに来ている。
岡本・・・なんだっけか?
歳は夫と同じ40歳ぐらいだった筈。
まさかこんな所で患者と会ってしまうなんて!
男は私と目が合った途端、驚いて目を見張った。
しかし声には出さず、ぐっとこらえてくれた。
こういう遊び場での空気と言うものを分かっているのだろう。
日常を持ち込むことの無粋さを分かっているようだ。

そのことに気が行ってしまって、後の二人のことをよく覚えていない。
ああ、またしても気まずい顔見知りがいたなんて・・・。
あんなハンサムで真面目そうな人が妊婦マニアだなんて・・・
二重三重の驚きに、私は目眩のようなショックを受けていた。






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