「僕と野球と息子の日記」①

野球が嫌いだった。
僕達がこの家に引っ越したのは、長男が小学3年生の時だった。

幸い、以前住んでたすぐ近くだったので、子供は転校とかもなく、普通に過ごせた。

近所に、長男の同級生が何人かいて、毎日その子らと遊んでいた。

ある日の事だった。
「僕、野球に入りたい。野球がしたい。」
まるで鈍器で後ろ頭を殴られたような衝撃が走った。
何故だ…
何故、サッカーとかじゃなく、野球なんだ…

僕は野球が嫌いだった。
小学生の時、体育の授業で、野球があった。
僕はよく、ルールも知らない。
ポジションの名前もわからない。
当時、ヤンチャな子達は、だいたい野球チームに入っていた。

僕は友達すら出来ず、家でキン消しを1人戦わせる毎日だった。

僕は打席に立たされた。
ピッチャーがボールを投げる。

あの時のピッチャーの憎たらしい顔は今でもトラウマだ。

バットを振る。

ボテボテのゴロだが、走れば一塁にギリギリ間に合う感じだった。

その時、僕のその後の運命を決める一言が、先生の口から飛び出した。

「なんで走り抜けないんだ!バカか!」

僕は一塁は走り抜けていい事を知らず、止まってしまった。

アウトだった。

走り抜けてれば、おそらくはセーフだった。

だって、知らないもん。
ルール知らないもん。

みんなが知っている前提で授業は進んで行く。

僕は「バカか」の一言がショックすぎて、その後の授業は何も覚えていない。

野球が嫌いになった。

そんな僕を親にもつ、息子からの「野球がしたい」の申し出。

聞けば、友達はみんな野球に入ってしまい、遊ぶ人がいなくなったらしい。

「1週間、よく考えろ。それでもやりたかったら、また言ってこい。」

そう返すのが精一杯だった。
1週間あれば、気持ちは変わるだろう、という浅はかな親の考え…

そして1週間がたった。

続きます。

#野球
#親子の話

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