きのこワークショップの思い出 - きのこの話 #5

向精神作用のあるきのこのシリーズ第五回目です。この回も「である」調になってます。文体の不統一、ご容赦ください。

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さて、前回、きのこの作用の暗黒面について書くといったのだが、今回はまだきのこを使ったワークショップについての話なので、きのこの暗黒面にまでは話はいたらない。

漢方医の先生が主催していたそのワークショップは、ぼくなりに表現すると、心理的なもの、スピリチュアルなものに関心のある人が、自分の中に隠れたもう一人の自分と対話をするためのワークショップ、というようなものである。

ワークショップの参加者は、栽培されたシロシベ・クベンシスというきのこを乾燥重量で 2g ずつ摂取し、外からの光はおおむね遮って暗くした室内で横になって体をゆっくりと休める。落ち着いた気分でいられるよう、部屋にはゆったりとしたクラシックが流されていた。

ヘルパーとして参加した参加したぼくらは、万が一何かがあったときのために、参加者の周りで待機している。
2g というのは、いわば、ほどほどの量で、多くの人がそれなりの効き目を感じるが、人によってはあまり感じない場合もあるくらいの量である。
とはいえ、効きすぎて強い恐怖を感じる人が出ることも考えられるし、とにかくふだんとは違う意識状態になるので、外に出たい人がいる場合にはそれに付き添って外に出るなどの役割をするヘルパーを用意することによって安全を確保していた。

クベンシス 2g を取った場合、15 - 30 分で効き始め、1 時間半から 2 時間ほどで、効果が収まる。
その日のワークショップでは、特別なことは何も起こらず、2 時間ほどの静かな時間が過ぎた。

ぼくはその間、十人ほどの参加者が横になっている間をゆっくり歩いたり、立ち止まってヨガもどきの体操をしたりしていた。
終わりが近づくと、外に出たいという人がいたので、その人について部屋の外に出て、階段に一緒に腰をかけ、少し話を聞いた。
話の内容はよく憶えていないのだけれど、その人のふだん思い出さないような、遠い昔、子どものころの、小さな記憶を、淡々と、けれどその人なりの感慨を込めて語っていたように思う。

体験が終わったあとで、参加者が自由に体験を語る時間がもたれた。
一人の方が、お花畑とか、美しい草原とか、そういうきれいな景色をびゅーっと移動しながら見ていく、というような話をしていたのが印象に残っている。
それから、ぼくのヨガもどきの体操を見て、ヘルパーのはずなのに、この人もきのこをやっているんだろうかと思ったという感想もあった。

そんなような穏やかな変成意識体験を身近に見て、きのこは lsd ほどは危険ではない、という誤った先入観がぼくの中にできはじめてしまったのであった。

[つづく]

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