涙オヤジふたたび --- あるいはハードボイルド的伏線の張り方
[全文無料です]
先日の「二人の涙オヤジについての文章技法的小考察」
https://note.mu/tosibuu/n/n5018012edf0d
にも書きましたが、tunoさんの小説
「リストラに向き合った薄っすら涙オヤジからの命令書」
について、tunoさん自身が解題を書いてくださった
https://note.mu/akaituno/n/n466a1dd6fe94
ので、それに対する返事として、今日はもう少しだけ書いてみます。
小説を書いてらっしゃる方には、小説作法の話として、参考になるかとも思います。
ハードボイルドと伏線の張り方、てな話です。
さて、tunoさん曰く、「人物の心情を描写すると圧倒的に文字数が足りなくなるので極力削除」したとのことですが、わざと心情描写を入れないという書き方、これが、ハードボイルドのスタイルになります。
短い簡潔な描写で雰囲気を出すことに成功していると思います。
ハードボイルドといえば、探偵物が基本ですが、心理描写をしないという手法自体は何にでも応用できますよね。
tunoさんは、企業小説に使ったわけですが、SFにもありますし、時代物にもありますかね。
ちょっとひねって、メルヘンや恋愛小説に使ってもおもしろいかもしれません。
そして次が、tunoさんの言う「前半にトラップ、あとで回収」ですが、これが「伏線を張る」というやつです。
これも大事な技ですが、「パソコンというハードウェアの時代から、ネットワークという仕組みの時代への転換」という大きな流れを表現するために、上手に使ってあります。
うまく伏線を貼った長編小説で、前半にさりげなく入れてある小さな描写が、最後の問題解決に大きな役割を果たす、といった大技が決まると、読後感が違ってきますよね。
ぼくの好きなSFでは、J. P. ホーガンの「星を継ぐもの」などは、伏線使いが見事で、大変おもしろい作品です。
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tunoさんの小説にもどりますと、以上のような手法を活かして、過去と未来を涙オヤジと若造に象徴させた上で、「過去が現在を作り、現在が未来を作る」という、大きな歴史の流れを、「薄っすら涙オヤジ」の心情に焦点を当てる形で、さらっと書いてるところが、なかなか印象的でした。
短い中に、ほんとうに上手に詰め込んであるので、これを種に長編小説が書けるくらいだなと、そんなことも思いました。
最後にひとつだけ、ぼくからの提案。
小説としては、題名がちょっと説明的にすぎると思うので、「涙オヤジの命令書」くらいではどうでしょうか。
これはもちろん、好きずきなので、あくまでぼくの感覚にすぎませんけど。
きちんと小説を書いたのは、はじめてとおっしゃるtunoさん、次の作品も楽しみです。
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