読書の習慣
社会人になって減ったもの。
友人と遊ぶ時間、運動量、通勤にかかる時間…良くも悪くも、学生の頃とは大きく生活が変わった。
その中でも自分がずっと気にしていたものの一つが、本を読む時間の減少だ。
昔から読書は好きだった。小学生の頃には学校の読書月間で一か月に七十五冊の本を読み、校内で表彰されたこともある。中学生の頃、あまり学校に馴染めなかった時に自分を助けてくれたのも本だ。特に歴史本やファンタジー小説が好きだった。
本を読むことで、新しい世界を知ることができる。まるで自分が体験したかのような気分になれる。想像力を働かせれば、そこは無限の世界だった。
高校でも通学時間を中心に読書の習慣は続いていた。片道一時間以上電車に乗っていたので、本を読む時間はたっぷりとあった。学校の図書館も充実していたので足繁く通っていた。司書の方と親しくなり、自分がリクエストした本は必ず購入してもらえるようになったほどだ。
大学生になってからはバイトやサークルも忙しく、それまでと比べれば読書に費やす時間は減ってしまった。それでも、月に一冊以上は読んでいた。高校以上の蔵書を誇る図書館も頻繁に利用した。
しかし、最初にも述べた通り社会人になってからは読書する時間は大きく減ってしまった。最初は仕事を覚えるのに必死で、多少慣れて来た頃にはより多くの仕事を任された。忙しい日々に疲れが溜まり、安易な動画視聴に走ることが増えた。一年あたりに読んだ本の冊数は、片手で数えられる程度だろう。
本を読まなくなった弊害は随所に現れた。
知識はみるみる減り、文章力は落ちた。何より、生活の彩り、心の豊かさが失われていったように思う。やはり本は自分をまだ見ぬ世界に誘い、可能性を広げてくれるものだったのだと痛感した。それでも忙しさにかまけて本から遠ざかる日が続いていたが、新年を機に、読書の習慣を再開させようと決めた。
毎日最低三十分。スマホの通知を全て切り、本にのみ集中する。
始めてみると、これが思ってた以上に楽しかった。いや、楽しさを思い出した、というべきだろうか。読み始めてすぐに本の世界に入り込み、没頭していく。時間は瞬く間に過ぎ、三十分が経ったことを知らせるアラームの音が恨めしい。何故こんな楽しみから距離を置いてしまったのか、不思議なくらいだ。
小学生時代の七十五冊には遠く及ばないが、今年はニ週に一冊は本を読みたいと思う。