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体験の価値を考える

 インターネットの普及により、情報は得やすくなりました。その分、体験から得る情報の価値が見直されていもいいと思っています。
 「野鳥の鳴き声の美しさ」「自然に生息するオオサンショウウオの存在感」「口頭伝承の昔話」
 体験には価値があると思える3つについて紹介します。

■野鳥の鳴き声の美しさ。
 ”鳥の鳴き声は美しい。”
 言葉で言えばそれだけになりますが、実際聞いてみた美しさは、体感した人にしかわかりません。録音して聞けばいいとおっしゃるかもしれません。しかし、例えばボイスレコーダーで録音して、パソコンで再生していも、その美しさは十分伝わりません。鳥の鳴き声が聞こえるのは、自然の中。周囲は緑にあふれ、空が高く、静か。周りに聞こえる音も少ない、広い場所です。録音したものを聞くこととは、音の響きが違います。鳥が気持ち良さそうに鳴いているように聞こえるのも、その空間の中だからでしょう。
 ロケーションが、美しい鳴き声のBGMになっているのです。

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■オオサンショウウオの存在感
 昨年、オオサンショウオの生息状況調査に同行する機会に恵まれました。
そのときの話ですが、まずは、オオサンショウウオが存在している場所へ行くまでが容易ではありません。細い山道を車で延々と行かなければいけません。しかも、夜行性なので暗い中。現地に着くと、あまりにも暗いため、普通の懐中電灯では足下を見失いそうになります。このため、光が強い特殊な懐中電灯が必要です。川の中を歩くため、腰まである長靴も用意しなければいけません。静かで暗い夜の川で、懐中電灯の光だけを頼りに、荘厳な雰囲気すらただようなか探索することになります。
 その中で、オオサンショウウオの発見は感動もの。周囲に同化していて、気づきにくく、しかし、その存在感は圧倒的でした。こちらが気づいてもじっとしていて、悠然と構えているかのようです。

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■口頭伝承の昔話
 私のまちに口伝えで残る昔話をひとつ紹介します。

 お地蔵さんがいつの間にかいなくなって、いつの間にか元の場所に戻っているということがあった。不思議に思った村人が陰で見てみた。
お地蔵さんの近くに、「お風呂入れてもらえませんか?」と言ったらどうぞどうぞと、誰にでも入れてあげる親切な人がいた。その家にお地蔵さんが人間になって、いつも入れてもらっていた。その家は、やがてお金持ちになったという言い伝え。

 言い伝えだから、脚色された部分もあるでしょう。何が事実なのかは、問題なのではなく、人には親切にしましょうね、という伝えたかったことが言い伝えとして残っているという事実。昔は、こういった口頭で伝承される言い伝えがありました。

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■情報と想像力
 体験としての情報は、感性に響くものです。文脈に遊びがあってふくよかさがあります。それが、画面上の情報や、文字からの情報との質の違いではないでしょうか。
 花を見て美しいと思ったとき、名前はわからなくていい。美しいと感じるその感性が大事なんだと思います。
 探して見つけようという気持ち、自分自身の感じる心を大切にしていきたいです。

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