ベンチャーキャピタルのやり方
前回の投稿では、シリコンバレーの誕生からベンチャーキャピタル(VC)の繋がりまでの歴史について紹介しました。今回は、ベンチャーキャピタリストについて書こうと思ったのですが、ネタをうまくまとめられず、、、
結果を出してる有名なVCにテーマを変更します(笑)
1.ベンチャーキャピタルの運営
ベンチャーに投資をして結果を出すためには、投資家から資金を調達してファンドを組成した後に、①今後発展しそうな技術・ビジネスの分野を検討して、②様々な人的ネットワークを駆使しながら有望な投資候補先を探し、③投資候補先と投資契約の条件等を交渉して投資を実行し、④投資後の成長を支援して、⑤IPOやM&Aにより売却して投資回収をするという数年に及ぶ長期間の関与かつ専門的なノウハウが求められます。
したがって、①~⑤のプロセスをVCのメインプレイヤーとしてのベンチャーキャピタリストが全て担うこともあれば、プロセスごとに担当者を決めて分業したり、一部のプロセスを外部の専門家に依頼するなど、VCによって体制は様々です。アメリカのベンチャーキャピタリストのバックグラウンドも、起業家・コンサルティングファーム・投資銀行・GAFAM等の事業会社と多様です。(多様といっても、世界トップクラスの大学出身者が多く、エリート中のエリートだらけなので、とても少数の階層のコミュニティともいえます。)
2.少数精鋭&秘密主義のBenchmark
そんな優秀な人たちが競い合うVCの世界で、少数精鋭の体制で結果を出し続けている有名なVCが、Benchmarkです。Benchmarkは1995年の設立以来、250以上のスタートアップに投資してきました。そのヒット率は60%以上、投資先の利益は10倍以上とされ、大きな実績を残しているVCです。有名な投資先としては、Snapchat,Dropbox,Instagram,eBayなどが挙げられます。2011年には1200万ドルをUberの株11%に投資し、2019年には、その額は70億ドルに上がっています。
桁外れな成功実績を出し続けるBenchmarkの特徴は、少数精鋭主義の組織体制です。そして、情報をオープンに出さない秘密主義な印象があります。ウェブサイト(http://www.benchmark.com)には連絡先しか書いていないため正確に把握できないですが、10数名の規模で運営しているとみられ、アメリカ大手のVCで伝統あるSequoia Capitalが約130人であるのと比較すると、とても少数であることが分かります。
少数精鋭の組織体制における最大のメリットは、スピード感のある投資ができることです。実際に、Benchmarkは、他のVCが躊躇する検討に時間がかかるアーリーステージのベンチャーに投資を集中することで、大きなリターンを得てきました。アーリーステージのベンチャーほど失敗のリスクは大きくなりますが、投資の目利きができる体制だからこそ実現できるスタイルといえます。
また、少数人の組織であるからこそ、Benchmarkは「イコールパートナーシップ」と呼ばれる平等な組織体制を築いています。一般的なVCは、投資判断を行うパートナーの中でも、実績・経験によって階層化されています。そして、その報酬や意思決定権は上位層と下位層のパートナーで差があります。しかし、Benchmark Capitalでは、すべてのパートナーが平等で、意思決定権を全員が持ち、報酬も平等に分配されます。さらに、CEOといった組織トップのものも存在しません。全員がCEOともいえるこのような体制の下では、実績を残すことのできないパートナーは残ることができませんが、その一方で、投資に成功すれば1人1人のパートナーが多額の報酬を得ることができます。その魅力的な組織体制のため、BenchmarkはTwitterの取締役、 ウォール街の一流アナリストのような一流の人材をスカウトでき、優秀なパートナーによる運営の継続に成功してきました。
3.組織力&投資先支援のa16z
その一方で、少数精鋭と違って、組織力を活かした投資先の支援に注力することで、10年足らずで業界トップクラスの規模に成長したa16zのようなVCもあります。
a16zと呼ばれるアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreesen Horowitz)は、2009年にマーク・アンドリーセンとベン・ホロウィッツによって設立されました。
アンドリーセンは、ビル・ゲイツ率いるMicrosoftとインターネットブラウザで覇権を争った起業家としてとても有名です。彼はイリノイ大学でウェブブラウザを開発した後、自ら会社を設立し、今はなきNetscape Navigatorというブラウザを開発しました。1995年に会社はIPOを果たしましたが、MicrosoftのInternet Explorerの猛追によって、1998年に会社はAOLに買収されてしまいます。その後、ベン・ホロウィッツらとLoudcloud(現Opsware Inc.)を創業してHewlett-Packardに売却後、2009年にa16zを設立することになります。
そんな超一流の起業家だったアンドリーセン達が率いるa16zの基本方針は、「起業家にとって魅力的な“何か”を資本以外で用意する」ことを重視し、マーケティング、経営幹部やエンジニアの採用など、投資先が成長するために必要となる経営課題を支援する体制でした。このような点が明確な差別化となり、a16zは起業家にとって魅力的なVC となりました。
また、a16zの特徴として、機能ごとに部門を設置し、各部門によって明確な目標を管理して達成する大企業並みの管理体制を築いています。
その結果、短期間のうちに従業員が3人から180人以上に、運用資産が3億ドルから333億ドル以上へと急成長を果たし、Facebook、Slack、Airbnb、Stripe、GitHub、Coinbaseなどの数多くの有名スタートアップへの投資で大きな成功を生み出しました。
以上、Benchmark Capitalとa16zという2つの対照的かつ有名なVCを取り上げてきました。大きな結果を残す両者でも、その特徴は異なることが分かります。
ただ、継続的に結果を出して成功するVCは一握りで、多くのVCは結果が出せないと投資家から投資するための資金を調達できず解散していくため、ベンチャーと同じようにハイリスクハイリターンの厳しい世界です。彼らの経営への知見や未来に対する見通しは、事業の種類に関係なく参考になると思うので、また何かの機会に紹介したいと思います。