見出し画像

シリコンバレーとVC

 林会計事務所のnoteの初投稿は、会計税務とは無縁のテーマになります。
筆者である私は、監査法人で数年の監査業務を経験した後は、今に至るまでベンチャー業界で仕事をしてきたため、ベンチャーをテーマにした投稿を中心にしていきたいと思います。

 2022年2月下旬に発生したロシアのウクライナ軍事侵攻によって、ウクライナ国内の通信インフラが破壊されてしまいました。そんな状況の中で、アメリカの宇宙企業スペースX社が、ウクライナ政府の要請を受けて、同社の地球上空の衛星と交信が可能な小型端末を数千台送り、ウクライナのドローンなどを使用した軍事行動に大きな貢献をしているとのことです。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/03/post-98412.php

 スペースX社の代表は、イーロン・マスクというアメリカ西海岸の「シリコンバレー」エリアを代表する起業家で、時価総額が世界1位にもなった電気自動車メーカーのテスラ社の代表でもあります。この2社の経営に参画する前は、オンラインコンテンツ出版ソフトの会社とPayPalの前身となる会社を起業して成功させており、イーロン・マスクの持つ壮大なビジョンと今まで(そしてこれから)の実績は、100年に1人の起業家と言っても過言ではないでしょう。
 さて、スペースX社とテスラ社は、ITサービスと違い、多額の設備投資と多くのハイレベルな人材が必要で、新規参入するにはリスクの高すぎる事業ですが、アメリカの資本主義経済の際立った特徴でもある「ベンチャーキャピタル(以下、VC)」が多額の投資をすることで、資金的に事業を支えてきました。

 そもそも「VC」とはどのようなものなのか、VCとシリコンバレーの歴史をまとめてみました。


1.シリコンバレーってどこ?

 シリコンバレーは、アメリカ合衆国カリフォルニア州北部のサンフランシスコ・ベイエリアの南部に位置するサンタクララバレーおよびその周辺地域の名称で、実在する地名ではありません。
 1971年に、エレクトロニクス業界雑誌の記者が記事の中で使用したのが最初と言われており、半導体の基本材料であるシリコンに因んだ名称です。もともとアメリカ西海岸には、第二次世界大戦の前より、無線通信と真空管開発を中心とした産業があり、軍需との結びつきが強い地域でした。また、大卒の大口就職先となるような重厚長大な産業がなかったため、スタンフォード大学の教授が優秀な学生に起業を奨励して支援するなど、産業創出に積極的な気風がありました。有名な例が、1939年にスタンフォード大の学生2人が設立したヒューレット・パッカード社です。
 そのような社会的基盤をもとに、戦後の米国の産業をリードしてきた数々の新規産業・企業がシリコンバレーで誕生しており、世界を代表するようなソフトウェアやインターネット関連企業が多数生まれ、IT企業の一大拠点となっています。

2. VCとシリコンバレーの始まり-ショックレー半導体研究所の設立-

 そんなシリコンバレーの先駆けと言われているのが、ショックレー半導体研究所の設立です。ショックリー半導体研究所は戦後にトランジスタの発明でノーベル賞を受賞した3人のうちの1人であるウィリアム・ショックリーが、スタンフォード大学のターマン教授の勧めで1956年に設立した研究所です。ショックリーは人格的に問題があった方のようで、1957年には同研究所から彼に反発するような流れで8人の若手研究者がスピンオフ(分離・独立)してフェアチャイルド・セミコンダクター社が設立されました。同社は半導体の集積回路(IC)を世界で初めて量産化しました。
 「8人の反逆者」と呼ばれた同社のメンバーには、1968年にIntelを創業したロバート・ノイスゴードン・ムーアがいました。フェアチャイルド社の設立には、若き投資銀行家のアーサー・ロックが関与しており、後に彼はIntel、Appleに投資して、シリコンバレーとVCの歴史を代表するような実績を残しました。
 また、「8人の反逆者」の1人であるユージン・クライナーは、ヒューレット・パッカード社の幹部だったトム・パーキンスと共に、1972年にVCのクライナー・パーキンスを設立して、Sun Microsystems、AOL、Netscape、Amazon、Google、Facebook等の数多くの有望なベンチャーを長年にわたって発掘してきました。同年にフェアチャイルド社出身のドン・バレンタインが、VCのセコイア・キャピタルを設立、Apple、オラクル、Google、Youtube等のベンチャーを発掘しており、世界規模のベンチャー投資を行っています。

3.次回予告-ベンチャーキャピタリストの重要性-

 ここまで、シリコンバレーの誕生からVCとの繋がりまでの歴史を振り返ってみました。
 VCは、投資家から預かった資金を元手に、有望なベンチャーの株式等に投資して、事業の成長を支援し、投資先のIPO・M&Aによって株式等を売却した資金を投資家と共に分かち合うビジネスです。その一方で、ベンチャーはハイリスクハイリターンの事業にトライしているため、多くのVCの投資は失敗に終わり、VCも結果が出せないと投資家から資金を集めにくくなり、事業の継続が保証されていません。そんな厳しい世界で活動しているVCには、ベンチャーの経営陣・市場や技術のトレンド・事業の成長性に対する目利きと、事業を支援することに長けていることが求められます。そのため、トップクラスのVC関係者が発信する情報は、VC業界には関係ない人にとっても参考になることが多いです。
 そこで、次回はVCのプレイヤーであるベンチャーキャピタリストの話を交えながら、VCについてもう少し深堀りしていきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?