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ベンチャーデット

スタートアップ期やベンチャー企業における事業拡大で欠かせないのが資金調達です。しかし、この成長過程で起こりがちな課題の1つが、保有株式の希薄化。そうしたなかで、新たに「ベンチャーデット」という資金調達の方法が注目されています。今回の記事では、①そもそも「ベンチャーデット」とはどういった資金調達の手法なのか②ベンチャー企業におすすめの資金調達の方法をご紹介します。



①ベンチャーデットとは

「ベンチャーデット」とは「ベンチャー企業」の「デット=負債」による資金調達方法というのが広義での意味です。以下の図に、主な資金調達の方法をまとめました。
「エクイティ=株式発行」と「デット=負債」の主に2つに分けられていますが、この「デット」の中でも方法としては融資と社債発行の2つに分けられます。結論から述べると、ベンチャー企業のような実績や信用の低い企業が実行できそうな資金調達は、中小企業の育成を目的とした政策的な公的融資や、信用保証協会が保証してくれる融資(オレンジ色の箇所)になります。

そして、プロパー融資や社債発行は、企業の過去の実績や財務状況等を考慮した信用リスクをしっかり審査されるため、信用リスクが低くなりやすいベンチャーにはハードルが高いのが実情です。そこで現在注目されているのが新株予約権付融資と新株予約権社債です。簡単に言うと、融資や社債を引き受けてもらうかわりに新株予約権を発行する資金調達方法でエクイティと比較して株式の希薄化が抑えられるのが特徴です。新株予約権を発行することで融資先や社債引受者は株式の値上がり値の利益を得ることができます。その分金利が低く抑えられる場合が多いのも利点の1つです。この2つの資金調達の方法をベンチャー企業にとって有用であるとして狭義の意味で「ベンチャーデット」と呼ばれています。

② ベンチャー企業におすすめの資金調達方法2

以上がベンチャー企業の資金調達の方法の概要でしたが、実際に、どのような資金調達を選択するべきか気になりますよね。そこで、本章ではベンチャー企業におすすめの資金調達方法を2つご紹介したいと思います。

まずは、資本性ローンです。日本政策金融公庫が実施しているスタートアップ企業向けの融資です。先ほど融資は信用リスクが高くないベンチャーにとってはハードルが高いと説明しましたが、資本性ローンはスタートアップ向けの信用リスク評価が用いられている上に、金利も0.5%~と破格の低さが特徴です。
さらに、資本性ローンは名前の通り金融機関の格付けで資本とみなされます。よって企業の自己資本比率を引き上げ、他の金融機関からの資金調達を有利にさせることもできます。
この制度の簡単な利用条件としては条件は、以下のいずれかにあてはまる企業です。
①J-startupに採択されている
②一定のVCから融資を受けている
③認定支援機関から支援を受けている

次におすすめしたいのが日本政策金融公庫による新株予約権付融資です。
日本政策金融公庫に新株予約権を取得させる代わりに融資を受けるといったもので狭義の意味での「ベンチャーデット」にあたります。
大きなメリットとしては、調達先が政府系の金融機関であるため、上場後に経営者が新株予約権を買い取るという点で、株式の希薄化のおそれがないことです。行使価格は直近の新株予約権の調達価格で割合は1:1で、新株予約権は上場後2週間以内ほどで経営者が買い取る必要があります。

以上、本ブログでは、ベンチャー企業の資金調達の方法として注目されている「ベンチャーデット」の概要とおすすめの資金調達方法を紹介しました。ベンチャー企業向けということで信用リスク等が考慮されるといいつつも「デット=負債」である限り、ある程度のリスク評価が重要となります。
またそれぞれの制度ごとで返済義務や利用できる状況が異なるため、その点も注意が必要です。
ただし、近年政府では経営者の個人保証を求めないことを推し進めているため積極的に「ベンチャーデット」も資金調達の方法として視野に入れてみてはいかがでしょうか。


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